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78話:休日

 翌日は、学校がお休みの日であった。


「せっかくだから2人とも、街で遊んでなさいよ。あたしは愛しのローランと、一応依頼主に手紙と報告書書いてるから」


 プラムはそう言って、ひかりとリーゼロッテを街に送り出した。

 ひかりは適当な服がなかったので変装したままエイボン魔法学校の制服。リーゼロッテは、ちょっと豪華な刺繍の入った、ワンピース調の私服を着てきた。


「ローズマリーさん、制服? 着ていく服なかったの?」

「は、はい。本業が冒険者なので、それ系統の服しかなくって……」

「冒険者なの!? すっごーい! 後で冒険譚とか聞かせて聞かせて!」

「あはは……」


 確かに相応の冒険はしたが、聞かせられるような内容があまりない。

 ひかりは笑って誤魔化したが、リーゼロッテの感心は別のところにあった。


「でもやっぱ、制服は目立つよね。服屋に行こう! 外出用のオシャレなやつ買おうよ!」


 リーゼロッテに言われるがままに、ひかりは服屋に連れて来られてしまった。

 が、やってきたのは、本当に洒落たブティックのようなお店だった。

 ひかりが未だかつて来たことのないお店で、緊張してしまう。

 幸いお金はある。よほど高級な服を買わない限り、3万シルバーを上回る買い物はしないだろう。

 とはいえ、丸メガネの地味娘が来る場所ではなさそうで、場違い感がすごかった。


 リーゼロッテは迷わず扉を開ける。


「いらっしゃいませ〜。あらリズさん、今日はお友達と一緒?」

「そーなんです! この子に似合う服を、見繕ってあげてください!」

「あらまあ可愛らしい子ね〜」


 店員のお姉さんと明るく会話して、ひかりの方に話を振られる。

 ひかりは緊張でカチコチになっている間に、着々と話は進んでいく。


「制服からして、エイボン魔法学校の学生さんね。予算はどのぐらい希望かしら?」

「あ、勢いで連れてきちゃったから、もしかしたらお金ないかも。どうする?」

「ええと……」


 どうする? と聞かれても、適当な返答が浮かんでこないひかり。

 こちらの世界で服を買ったのは一度きり。400シルバーで、まあまあ良い冒険者用の衣服を買ったぐらい。

 こっちの界隈だといくらぐらいで予算を組んだらいいのか分からない。

 ひかりは悩んだ末に、適当な金額を述べることにした。


「せ……いや、3000シルバーぐらい、とか……?」

「3000!? 大きく出たねぇ! 予算3000かぁ、どうしよっかな……」

「あれ、ローズマリーさん大丈夫? 服に3000シルバーって結構な出費だけど」


 どうやら、予想よりも高い予算を上げてしまったらしい。

 最近は1万シルバーとか簡単に貰えるので、金銭感覚がバグってしまっていたが、3000シルバーあれば宿暮らしでも2ヶ月は暮らせるのだ。

 結構な金額を口にしてしまったが、ひかりに今更引っ込める度胸はない。


「だ、大丈夫、です。それでお願いします!」

「わ、わかりました、予算3000シルバーで、一番いい服を見繕いますね!」


 突然敬語になった店員が、張り切って衣服を探しに行き、ひかりはふぅと息をついた。

 リーゼロッテは、心配そうに声をかける。


「ほんとに大丈夫だった? 厳しければ、私が半分ぐらい出すけど」

「だ、大丈夫です。現金はありますので……!」

「はぇー……冒険者って、儲かるの?」

「た、たまたま利益のいい仕事を受けたまででして……」


 リーゼロッテとそんなやりとりをすることしばらく。

 店員がバタバタと色々な服を持ってやってきた。


「大変お待たせしました。服の丈を合わせますので、こちらにいらっしゃってください!」


 そう言われて、複数の店員に囲まれながら、ひかりは店の奥に引っ込んでいった。




……。

……。




 ややあって、完全に着替えを終えたひかりが、店の奥から姿を見せる。

 外観はあくまでローズマリーのものなので、印象は大分変わるが、真新しい服に身を包んだ姿は、かなり見違えた。


 白の少しぶかっとしたシャツに、白のショートパンツ。どちらも黒と金色の模様が入っている。

 さらにレースのついた青い外套を羽織り、頭にはつばの大きな白い帽子を被っている。

 いずれも、首都では流行りのファッションであり、オシャレさと涼しさを両立させた、高級服であった。


「締めて2800シルバーになります!」

「あ、ありがとうございました……」

「こちらこそありがとうございました!」


 代金を支払い、服を購入し終えてほっと息をつくひかり。

 しかしその姿を見てリーゼロッテは、目を輝かせて言った。


「うわーうわー! ローズマリーさんすっかりお嬢様みたい! すっごく似合ってるよ!」

「そ、そうですかね。動きやすくは、あるんですけど……」

「街で流行ってるブランドの服だよー! いいねぇ! ちゃんと着こなしてて!」


 大変興奮した様子で褒めちぎられ、ひかりとしては照れくさい。

 意図せず高価な衣服を着込んでしまって、緊張感も高まった。


「よーし、じゃあこのまま、街を遊びあるこー! 首都でも美味しいケーキのお店があるから、そっちにも行こう! いやー、ナンパとかされちゃうかなー!」


 うきうきとしたリーゼロッテに引っ張られ、ひかりは首都の街へと繰り出すのであった。


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