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63話:vsフレッシュゴーレム

 ひかりは、窮地に陥っていた。

 広い部屋で、フレッシュゴーレムと一対一。

 奇襲は失敗し、【アサシンダガー】による不意打ち効果ももう意味がないだろう。

 生半可な攻撃は、簡単に再生されてしまう。一撃で核を壊さなければならない。

 フレッシュゴーレムはひかり目指してゆっくりと歩いてきていた。


「な、なんとかしなきゃ……」


 ひかりは逃げ回る。

 幸いにしてフレッシュゴーレムの足は遅い。逃げるだけならなにも難しくなかった。

 だが問題は、制限時間。

 30分以内にゴーレムを倒さなければ、ひかりは窒息ガスで死ぬ。

 まだ時間はあるが、いつまでも鬼ごっこをしている暇はなかった。


(何が弱点なのかわからない、色々やってみなきゃ……)


 とりあえず思いついた手を、かたっぱしから試してみることにした。


(まずは魔法……!)


 【四大精霊の指輪】込みで、ひかりの火魔法スキルは21ある。

 まずは呪文を唱え、火の弾を造り出し、撃ってみる。


「《ファイアボルト》!」


 《ファイアボルト》は、初級の火属性攻撃魔法だ。火の弾丸を造り出し、当たった相手を燃やしてしまう。

 ひかりの放った《ファイアボルト》は、図体のでかいフレッシュゴーレムに見事に命中した。


(やった!)


 こっそり練習していた甲斐があった。

 ゴーレムはたちまち燃え上がり、炎に包まれた。

 だが。


(動きが、止まらない……!?)


 そう、ゴーレムは苦痛も感じなければ、呼吸も必要ない。

 燃えているのも構わず、ひかりに向かってズンズンと歩いてきた。


(なら……《空間歪曲》!)


 ひかりは次の思いつきを実行する。

 柱の影に向かって《空間歪曲》でワープ。これでゴーレムは一時的にひかりを見失う。それなら隠密999が再度発動できると考えた。

 空間を歪め、一瞬で柱の影に移動し、ゴーレムの視線を切る。

 死角に入った後は、そのまま隠れて隠密スキルを生かし、再び奇襲を仕掛けるつもりでいたのだが。


(え、気づかれてる……?)


 フレッシュゴーレムは燃え上がったまま、ひかりのいる場所にズンズンと歩いてくる。

 隠密スキルをオンにしっぱなしで移動してみたが、ゴーレムもひかりの移動に合わせて方向を変え、的確に追いかけてきた。


(隠密が効いてない!? 見失ってないの!?)


 明らかに視線を切っているのにも関わらず、見失わずにひかりを追ってくるゴーレム。

 隠密で隠れ直す戦法は、失敗した。


(じゃあもう後は……新しいギフトを取るぐらいしか……)


 【メイジマッシャー】や【炎熱のスティレット】で正面から切り掛かるのはあまり意味がなさそうだ。

 火で燃やしても動き続けるし、ひかりの初級魔法ではほとんど効果がないのだろう。

 ならばあとは、温存しておいたギフト1を使って、攻撃的なギフトを取るぐらいしか思いつかなかった。


(ギフト一覧、ギフト一覧……ゆっくり見てる暇がない!)


 メニュー画面から取得可能ギフトの詳しい説明が見れるのだが、今まさにフレッシュゴーレムが迫ってきている最中だ。

 ゆっくり吟味している時間はなかった。

 逃げ回りながら、ひかりはギフト一覧から良さそうなギフトを探す。

 ややあってひかりは、一つのギフトに辿り着いた。


(これなら、少し、チャンスがあるかも……!)


ギフト

《超人化》

あなたは3分間の間、超人的な身体能力を得る(再使用24時間)


 これを使って、3分以内に強引にゴーレムの核を壊す。

 ひかりに思いつけるのは、それで精一杯だった。

 早速ギフトを取る。

 《超人化》のギフトを取得して、ひかりは一息ついた。


(あとは【炎熱のスティレット】で、ひたすら核を狙う!)


 ひかりはそう決めて、ゴーレムに向き直った。

 フレッシュゴーレムについた火はまだ燃えている。もしかしたら、このまま放置していれば倒れてくれるかもしれない。

 しかし、それは希望的観測に過ぎない。

 あくまで、ゴーレムの核を壊さなくては。


 ひかりは、《超人化》を使用した。

 力が、みなぎってきた。

 周囲の光景が、急に遅く見える。

 非常にゆっくりと歩いてくるフレッシュゴーレムに、ひかりは【炎熱のスティレット】を構えた。


 走りこみ、跳ぶ。

 今度はゴーレムの胸を目掛けて、スティレットを突き刺すつもりだった。

 だが。


(跳びすぎた!?)


 思い切りジャンプしたひかりは、何とそのままゴーレムを飛び越えてしまった。

 超人的な身体能力を、まだ制御できていないのだ。

 高さの割に難なく着地はでき、フレッシュゴーレムの背後を取る。


(今度は小さく、跳ぶ!)


 先ほどの半分ほどを意識して、ひかりは背後から跳躍し、突き刺す。

 しかし今度は、ゴーレムの頭まで跳んでしまい、後頭部を突き刺してしまった。

 しかもスティレットは、頭に深々と突き刺さり、抜けないままひかりは着地した。


(ああもう!)


 【炎熱のスティレット】を手放してしまった。ゴーレムは未だ動き続ける。

 全然制御できない超人の力を、ひかりはじれったく感じた。

 強いは強いが、3分という制限時間を考えると、かなり難しい力だ。


 ひかりは今度は【メイジマッシャー】を抜き、今度こそゴーレムの胸を狙う。

 三分の一ぐらいの力を意識して、フレッシュゴーレムの胸元に、短剣を突き立てた。

 今度はうまくいき、ゴーレムの胸に短剣が深々と突き刺さった。

 だが。


(まだ動いてる!?)


 かなり深く突き刺したはずだが、どうやら核はそこではなかったらしい。

 フレッシュゴーレムは腕を振り回し、ひかりを攻撃してくる。超人化したひかりは難なくそれを避けたが、焦りは強まった。


(どうしようどうしよう! もう【アサシンダガー】と、シーリーさんの短剣しか残ってない!)


 【炎熱のスティレット】はゴーレムの頭に刺さったまま。【メイジマッシャー】もゴーレムの胸に深々と刺さっている。

 動き回るゴーレムから、簡単に抜けそうにはない。

 となると、残った2本の短剣で決着をつけねばならなかった。


(あっ、まずい……!)


 迷っているうちに、向上していたひかりの身体能力が、元に戻る。

 代わりにやってきたのは、どっと押し寄せる疲労感。

 疲れて立っているのもやっとな状態になり、ひかりは息切れし始めた。

 ひかりは《空間歪曲》で柱の影に逃げる。


 ひとまずは疲れた身体を癒すため、ひかりはスタミナポーションを取り出して、ゴーレムに近寄られる前に飲み干す。

 スタミナポーションはそれなりに疲労感を取り除いてくれた。

 しかしまだ脅威は去っていない。

 ひかりはなんとか、頭を働かせ考えようとした、のだが。


(あれ? 追ってこない?)


 ひかりは、違和感に気づいた。

 フレッシュゴーレムは、先ほどまでと変わり、ひかりを追ってこない。

 何かを探すように、身体を左右に捻っていた。


(気づかれなくなった? なんで?)


 隠密999はオンにしっぱなしだ。隠れられたのは良い。だが理由がわからなかった。


(今までは、目視圏外に隠れても、迷いなくこっちに来た。今になって、こなくなった。何が違うの……?)


 違うとしたら、《超人化》を使ったことと、【炎熱のスティレット】と【メイジマッシャー】を刺したこと。

 そこに何かある。


(もしかして……目視は関係なくて、《サーチ》とかでこっちを見つけてた……? 【メイジマッシャー】を刺したら、それができなくなった……?)



【メイジマッシャー】

この短剣で切り付けられた相手は呪われて魔力の制御が困難になる(どのぐらいの効果と持続時間になるかは魔術、呪術スキルに依存)



 【メイジマッシャー】が刺さったままなので、魔力が制御できなくなった。

 それで《サーチ》に該当する魔法が使えなくなった。

 だからひかりを見失った。


(だとしたら……)


 ひかりは隠密を維持したまま、柱の影から出る。

 フレッシュゴーレムはひかりに気づいた様子はなく、相変わらず周りを探すような仕草をしていた。


 ひかりは【アサシンダガー】を抜き、フレッシュゴーレムに近づく。

 そしてその場にとどまっているゴーレムの、両足に切り付けた。


 スパッと。


 フレッシュゴーレムの両足が、紙のように切れた。


(やっぱりだ!)


 このゴーレム、ひかりを《サーチ》でしか認識していないのだ。

 だからまだ、【アサシンダガー】を目視していない。

 つまり、【アサシンダガー】の効果が、まだ残っていた。


 後のことは、消化試合であった。


 ひかりは核が見つかるまで、フレッシュゴーレムの身体を【アサシンダガー】で切り裂き続けた。


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