61話:ダンジョン攻略③
ダンジョンの道をどんどん進んでいく一行。
道中なんどかアンデッドが出たが、テティスとシーリーとひかりの前では敵ではなかった。イストは《サーチ》役なので、基本戦闘には参加していない。
テティスは、やはり素手戦闘を得意としていた。
現れたアンデッドモンスターを、拳で粉砕していく。
武器も魔法も使わずに、よくやるものだなぁとひかりは思った。
ついでに罠への反応も手慣れていた。
落とし穴などの設置型の罠は事前に察知し、魔法の罠は踏んでも効果がない。
モンスターも罠も何も脅威にならず、一同は順調に奥へ進んでいった。
「お! 《サーチ》に反応あり! 人間だ!」
「おお!」
ダンジョンのかなり奥深くまでやってきた頃、イストがそう声を上げた。
推定、生存者を見つけたらしい。
「3人いる?」
「いや、一人だけだな。はぐれたのか、もしくは悪い想像が当たってるのか……」
「とにかく、助けよう!」
「意気込みはいいんですけど、私の後ろにいてくださいね」
方角は、左手側。
そこそこの距離を、テティスを先頭に、罠に気を払いながら歩いていく。
ややあって目的の部屋へと辿り着いた、のだが。
「鉄の扉だ……」
「あと、《サーチ》に引っかかってるの、人間だけじゃないな。中に、でかいアンデッドがいるっぽい」
目的地は、鉄の扉に阻まれていた。
さらに、中には人間だけではなく、アンデッドもいるらしい。さらにでかいと。
アンデッドはともかく、鉄でできた扉は如何ともし難かった。
「ちょっと離れててください」
と思ったのだが。
テティスは三人を離れさせると、何度か深呼吸をして、集中、その後、一瞬で動いた。
「ふっ!」
ドゴオオオン!!
と、鉄の扉が吹き飛ぶ。
テティスが一瞬で扉に近寄って掌底を放ち、鉄の扉をぶち抜いたのだった。
(み、見えなかった……)
あくまで掌底を撃った後のポーズをしているのだからそう想像できるのであって、動きそのものは瞬きよりも早かった。
そして当たり前のように、鉄の扉を破った。それも素手で。
これが1級冒険者の力なのかと、ひかりは戦慄した。
「テテさん、すごーい!」
「鉄ぶち抜くってどんな力してんだ……」
「力じゃないです。気です」
シーリーとイストの話に、ふぅと息をついて答えるテティス。
改めて見ると、見た目は細い。よく見ればしなやかな筋肉があるにはあったが、それにしたって細腕だった。
「気?」
「正しくは練気と言います。特殊な呼吸法で身体能力を底上げしているのです」
ひかりの質問に、テティスはそう答えた。
彼女の使っているのは魔法ではなく、練気。話によれば、呼吸法で力を発揮するらしい。
魔法抜きでそこまでできるのは素直にすごいと思ったが、テティスは話を打ち切った。
「それより、救助とアンデッド戦です。油断せぬように」
鉄扉の向こうは、広大な部屋が広がっていた。
暗く、じめじめとした、陰鬱な部屋。
そこに、二つの影があった。
一つは、冒険者らしい服を着た、少女の姿。すっかりやつれて、目の下には隈ができ、今にも倒れてしまいそうだ。
その少女は、助けに来た一行を見て、信じられないように目を潤ませた。
そしてもう一つは、嫌でも目立っている、アンデッドモンスター。
それは人骨をいくつも繋ぎ合わせた、巨大な骸骨。
上半身は人のようだが、胴体になる背骨が長く長く、腕が6本ついている。それぞれの腕には、歪んだ剣が6本握られていた。
下半身はもはや骸骨のムカデ。背骨は長く長く、大量の脚の骨が地に立つ。
そんな見るも恐ろしいアンデッドモンスターと、少女の二人きりだったようだ。
「気をつけて! そいつ! 動くと反応します!」
少女が、枯れかけた声でそう叫んだ。
実際、座り込んでいる少女を無視して、部屋に入ろうとしたテティスにアンデッドは顔を向けた。
「動くと反応する……動かなければ反応しない……だから一人だけ、生き延びれたみたいですね」
見れば、骸骨の足元には、冒険者二人の亡骸があった。
無惨に斬り殺され、腐敗しかかっている。
生存者を含め、これで冒険者三人。
入り口のテレポート罠は、この部屋に繋がっていたと考えれば、辻褄が合った。
「助けなきゃ!」
「私がアレを相手しますので、三人はあの子を助けにいってください」
「わかった!」
開け放たれた部屋に、テティス、イスト、シーリー、最後にひかりが入る。
対骸骨戦の火蓋が、切られようとしていた。
のだが。
「え?」
「何これ!」
全員で部屋に入った途端、部屋の床が虹色に輝き始めた。
見れば、足元に部屋中を覆う魔法陣が描かれていた。
「なんだこりゃ! さっきまで何の反応も……!」
イストが言い切る前に、部屋の床の魔法陣から眩いばかりの光が溢れ出し、部屋中を虹色で埋め尽くした。
その激しい光は、すぐに収まる。
テティスはなんともなかった。
イストもなんともなかった。
シーリーもなんともなかった。
骸骨と少女も、何ごともなくそこに居た。
「あれ?」
「ヒカリは?」
ひかりだけが、忽然と部屋から姿を消していた。




