55話:ポーション屋
「ここかぁ、ポーション屋さん」
翌日。
ひかりはノースブランチの街中を散策し、ポーションなる魔法の水薬を買いにきた。
イスト曰く、ポーションは旅の必需品。数本は買っておけと言われてやってきた。
ライフポーションは傷を治す、1本50シルバー。
マナポーションはマナを回復する、1本100シルバー。
スタミナポーションは体力を回復する、1本70シルバー。
アンチドートは毒を治療する、1本50シルバー。
品質にもよるが、標準品はそのぐらいの値段らしい。
カランカランと扉のベルを鳴らして、ひかりはポーション屋に入った。
「いらっしゃいませ〜!」
女性の店員さんが、カウンターから元気よく挨拶する。
ひかりはおそるおそる店内に入った。
中には、瓶に入った色とりどりのポーションが並べられている。
目当てのライフポーションやアンチドートが、相場通りの値段で売られていた。
(ハイライフポーションなんてのもある……200シルバーかあ……)
推定、ライフポーションの上位版みたいなものも売っていた。
何を買おうか迷っていると、近くにいたお客にぶつかりそうになったので避けた。
(わ、美人さん)
「?」
すれ違ったお客は、相当な美貌を持つ若い女性だったので、ひかりは思わず見とれた。
美しいエメラルド色の短髪に、彫刻のように整った顔立ち、すらっとしたスレンダーな体つき。
比較的薄着で、革製の胸当てを付けている、推定冒険者。
そして何より特徴的なのは、耳が長く尖っている。
いわゆる、エルフと呼ばれる種族だ。
「あ」
エルフの女性は、ひかりを見てそう声を上げる。ひかりはびくっと肩を震わせた。
つい見とれてしまったので、気分を害してしまったのかと慌てた。
「あ、す、すみません、なんでもないです」
ひかりは慌ててそう言った。
が、エルフの女性は無表情のままこう答える。
「服飾店の宣伝をしていた子ですね」
「あっ……」
敬語でそう指摘された。
そちらの方向から、顔を覚えられていたらしい。ひかりは赤面した。
「イストとシーリーと、仲良いんです?」
「え、は、はい。多分、仲良くさせていただいております」
仲がいいかと言われたら、多分いい方のはず。
というより、イストとシーリーの知り合いらしい。
ひかりがまじまじとエルフの女性を見ると、胸元に冒険者タグが下がっているのが見えた。
そこに書かれていたのは、驚くべき数字だった。
(1級……!?)
首からかけられていた冒険者タグには、「1級」と書かれていた。
1級の冒険者。すなわち冒険者のトップランク。
ひかりはとんでもない人に声をかけられてしまったと身を震わせた。
「あの2人はいい子なので、よければこれからも仲良くしてあげてください。では」
「は、はい……」
そう言って、エルフの女性は店の商品を見に戻った。
ひかりはしばらくポカーンとしてから、いそいそとお店のポーションを見に戻った。
……。
……。
「おー、ポーション買えたか」
「よかったね〜!」
ノースブランチの冒険者ギルドにて。
ひかりはイストとシーリーと合流をし、ポーションを買った旨を伝えた。
ハイライフポーション1本と、その他標準品ポーションを少しずつ。出費は1000シルバーちょっとだ。
「それですごく美人なエルフの方と会ったんですけど……」
「テテさんだ!」
「この街にエルフは多分一人しかいねえ。テティスさんだろうな」
「なるほど……やっぱりお二人の知り合いだったんですね」
エルフの女性は、テティスと言う名前らしい。
二人とも知り合いだったようだ。
「テティスさんは、俺らと同じ、領主のお抱えの冒険者なんだよ。階級は1級だけどな」
「すっごく強いんだよ!」
「なるほど〜」
「領主のお抱えは4人いるんだ。俺、シーリー、プラム、それからテティスさんだな。この4人が領主から給料もらってる代わりに、街の治安維持なんかをやってるわけ」
「プラムちゃん冒険者じゃないけどね」
ということらしい。
「領主が冒険者を抱えることって、普通なんですか?」
「1級冒険者を貴族が抱え込むのは、まぁ普通なんじゃね。俺ら5級は、ローランドのやつと同じ学校のダチだったから、付き合いでやってる」
「プラムちゃんもだね〜」
「一応テティスさんもだな。あー、学校では色々あったなぁ、まさかローランドがほんとに貴族になるとは……」
何やら昔を懐かしむ様子の二人に、ひかりははにかんで見守った。




