表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/80

52話:新たな依頼

「マジックアイテムはこのまま5つとも持って行ってくれ。これが、僕が出せる精一杯の報酬だ」


 ひかりはそう言われて、恐る恐る受け取ろうとしたが、少し思いとどまった。


「イストさんとシーリーさんにも、マジックアイテムを渡したいんですが」

「あー、俺ら、あの転生者戦では何の役にも立たなかったからな。とても貰えねえよ」

「そんな……」


 確かに、魔術スキル800以上の相手には手も足も出なかったが、それはしょうがないことだ。誰も手は出せなかっただろう。


「あ! 報酬! 道案内で5000シルバーずつ支払う予定でしたけど、危険手当ってのがあるんですよね。手当込みで1万シルバーずつ払いますよ!」


 ひかりは思い出してそう言った。

 セキリュウソウを採取するために、イストとシーリーを、道案内役として、5000シルバーずつで雇っている。

 さらに冒険中に危険な内容があったら、危険手当として報酬を上乗せしても良いとなってる。

 だからひかりは、二人に1万シルバーずつ支払うことを提案した。

 のだが。


「あー……気持ちはありがたいんだが、貰えないんだわ。報酬」

「え?」


 ひかりは唖然とした。

 二人はしっかりと道案内をしてくれ、キャンプまで張ってくれた。

 これ以上、何を遠慮する必要があるのか。


「実はだな、今回の依頼。失敗扱いなんだわ」

「え!?」


 ひかりが思わず声を上げる。

 何が失敗だったのか、わからなかった。


「今回の俺たちの仕事は、沼までの道案内をすること。道案内ってのは、護衛も含まれてるんだよな。いくらきちんと道案内をしても、依頼人が死んだりでもしちまったら、とても依頼成功とは言えないよな?」

「それは……」


 そうかもしれない。

 確かに、護衛も、道案内の仕事だ。


「俺らは道案内はしたが、依頼主であるお前を危険に晒して、怪我させちまった。だから仕事としては、失敗になる。満額報酬はまず貰えん」

「そんな! 全然払いますよ!」


 ひかりが珍しく大きな声で、抗議した。

 しかしイストは、ため息をついて首を振る。


「俺はそれでもいいかなと思ってるんだが、シーリーのやつがなあ。絶対報酬は受け取れないって言ってて、聞かないんだわ」

「シーリーさんが?」


 ひかりは戸惑った。

 シーリーは確かに、過去にひかりの融資の話をきっぱりと断っていた。

 しかし、今回の報酬まで拒否されるとは。

 少しだけ、もやもやした。


「シーリーのやつが貰わないつもりなら、俺だけ貰うわけにはいかん。だから、依頼失敗扱いで報酬はなし、てことで……」

「そんなの納得いきません!」


 イストもシーリーも、いい人だ。

 そんな二人が正当な報酬を貰えないというのは、ひかりには我慢ならなかった。

 ただでさえ貧しい生活を送っているのだ。

 ドンと報酬を渡したかった。


「気持ちはありがたいんだがなあ……。シーリーのやつ、一度言い出したら、めちゃくちゃ頑固だから……」


 イストが唸るようにそう言った。

 確かに聞いてる話、シーリーは強い信念というか、一度決めたことを曲げないきらいがあるようだった。


「あいつなぁ。槍も鎧も壊されて、もう買い換える金もないから、色々とまずいんだけどなあ……」

「わ、わたしが説得します!」


 ひかりがいきり立ってそう言った。

 だがそこに、今まで黙っていた、領主ローランドが口を挟んだ。


「ちょっといいかな」


 彼の言葉に、ひかりは振り返り、イストは苦笑いをした。


「実はあらかじめ、イストのその話を聞いててね。なんとかできないかと思って」


 ローランドは、思わぬ話を提案した。


「なんとか全部丸く収める……かもしれない案があるんだけど、ちょっと聞いてみてくれないかな」




……。

……。




「ううぅぅぅ……」


 それから数日後。

 ひかりは、物陰で唸っていた。

 シーリーとイストも一緒だったが、シーリーもまた、もじもじと恥じらいを見せていた。


「うう、やだ、ぜったい似合ってないってぇ……」

「おい、ちゃんとした仕事だぞ。気を引き締めろ」


 イストがシーリーに発破をかける。

 シーリーは恨めしげに、イストを見た。


「確かに依頼だけどさあ……」

「いいか? これは護衛も兼ねている。こんな街中での護衛を失敗したとあれば、俺たちの信頼はガタガタだ。くれぐれも、気を引き締めてかかれよ」


 イストはぴしゃりとそう言った。

 そうは言っても、女性陣の表情はすぐれなかった。

 なぜかと言うと、それぞれが着ている衣服にあった。


 ひかりは、フリルをふんだんに使った、貴族の娘のような服。

 シーリーは、ふりふりとリボンのついた、メイド服。

 イストは、ピシっとした執事服に、伊達メガネをかけている。


 これで街中を練り歩くのだ。

 イストは良いが、女性陣二人は、死ぬほど恥ずかしい気持ちでいっぱいであった。




依頼内容:

「サクラ経営の高級服飾店『オウカ』のオープン前の宣伝(『オウカ』ブランドの衣服を着てノースブランチ街中を歩き回ること)、およびヒカリ=カゲハラの護衛


報酬:

ヒカリ:2万シルバー(領主より)

イスト:5000シルバー(ヒカリより)+5000シルバー(領主より)

シーリー:5000シルバー(ヒカリより)+5000シルバー(領主より)


備考:服はオーダーメイドなので、そのまま差し上げるものとする。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ