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45話:毒沼への再来訪

「はぁ、はぁ、二人とも、ついてきてくれてありがとうございます……」

「なんの! 大丈夫だよ!」

「一人で行かなかったのは正解だな。遭難してるとこだったぞ」


 開拓村に戻ってきてから丸一日休んだ後。

 ひかりは、イストとシーリーを連れて、セキリュウソウの採取にやってきていた。

 二人を連れてきた理由は、道中道に迷うのを防ぐため。

 以前はギースに連れてきてもらっていたが、今回は彼がいないため、二人に案内役を頼んだのだ。


 もちろんタダで来てもらったわけではない。

 5級冒険者である二人には、それぞれ5000シルバーの報酬をきちんと約束してある。

 冒険者ギルドの手数料込みで合計1万1000シルバーほどになったが、今のひかりなら楽に払える金額だ。


「けど付いてくるだけで5000も貰ってもいいのかなぁ。あたし的にはもっと安くても」

「っても、5級冒険者の相場ぐらいだぞ。俺ら薄給で感覚麻痺してるが」


 だいたい、5級冒険者一人を数日雇うなら、2500から5000シルバーが相場らしい。それを聞いて、ひかりは即決で5000シルバーずつ払うことに決めた。

 本当はもっと支払ってもよかったが、また二人を雇うかもしれないと考えると、1万シルバー以上は残しておきたいので、そのぐらいの金額になった。


「毒沼一人で大丈夫?」

「はい! 以前も一人で3本まで摘んできたので。隠密999と《完全免疫》があればとくに問題ないはずです」


 毒沼の毒は、ギフトで防げる。

 モンスターの群れは、スキルでやり過ごせる。


 さらにひかりは、さくらに頼んで、靴にエンチャントをお願いしていた。

 内容は、水上歩行のエンチャント付きの靴。

 これがあれば、毒沼に足を取られずに探索ができる。

 狙ったエンチャントの付与はかなり手間だったらしいが、さくらは快く引き受けてくれた。


 すでに行ったことのある場所だし、セキリュウソウも取ったことがある。

 大丈夫なはずだった。


「ただなー……ゴーレムがやっぱきな臭い」

「まだ言ってるの?」

「虫使いの説得、最初はいい案だと思ったが、良く考えてみりゃ、危ない橋を渡ってるのかもしれんと思ってな……。俺の意見を言うぞ」


 イストが改まった様子で語る。


「まず、ギースってやつの仮説、俺は当たってると思う。転生者が疫病を撒いて、ポイントを稼ごうとしてるってやつな。で、例のゴーレムを配置したやつと同一人物だと思う」

「ていうと?」

「実物は見てないが、自立行動型で戦闘もできる自爆機能持ちのゴーレムってなると、値段がバカ高くなる。ざっくりとした見積もりだが、100万シルバーは超えてると思う」

「100万!?」


 シーリーが驚きの声を上げる。ひかりも驚いた。

 100万シルバー。途方もない値段だ。

 ゴーレムとは、想像以上に金持ちの道具なのかもしれない。


「で、そんなゴーレムが最低2体、ざっと200万シルバー。んで守らせてるのがセキリュウソウの群生地、セキリュウソウって1本5000から1万シルバー。まあ独占して値上がりしたとして、10万シルバーまでなら買い手が付くかな? て感じだ」


 イストの言いたいことは、なんとなく伝わってきた。

 セキリュウソウの納品依頼は5000シルバー。あくまで納品がなので、実際はもう少し高いかもしれない。

 独占できるなら、10倍の値段でも、買い手はつくかもしれない。

 けども、それ以上の値段で売れるのかは未知数だ。他の薬があるかもしれない。

 そもそもひかりのように、ゴーレムのいない群生地を狙って取っていく者もいるだろう。


「つまり、セキリュウソウを独占している理由が金儲けなんだとしたら、ゴーレム代200万シルバーと釣り合いが取れないんだよ。間違いなく、金以外の目的でやっている」


 イストはそう断言した。

 金以外の目的。すなわち、疫病で死人を出す事によるポイント稼ぎ。

 その説がますます当たりのように思えてきた。


「何が言いたいかっていうと、疫病を撒く攻撃的な転生者を、バチバチに敵に回してるってことだ。見張りを増やすとか、セキリュウソウの数を減らすとか、何かしらの対策をされてるかもしれん」

「なるほど……」

「すっごい今更で悪いが、とにかく気を引き締めていけってことだな。虫使いたちとの約束までの期限は、あと10日あるし、最悪交渉失敗してもやりようはある。少しでも危ないと思ったら、手を出すな」

「あたしらちょっと離れた場所でテント立ててるから、数日は探せるよ〜。無理はしないでね!」


 シーリーがやたらでかい荷物を背負って笑う。

 今回、1日でセキリュウソウを見つけるのは難しいのではないかとイストの提案により、数日は滞在できるだけの準備をしていた。

 シーリーは見た目によらずかなりの力持ちで、山道でも苦もなく大荷物を運べていた。

 おかげで、数日かけてじっくりセキリュウソウを探せる体制が整っていた。


「わかりました、二人とも、よろしくお願いします」

「おうよ」

「気をつけてね!」


 気を引き締めて、ひかりはセキリュウソウの採取に向けて足を運ぶのであった。


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