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4話:サウスブランチ

 街。

 サウスブランチと呼ばれるこの街では、簡単な検問があり、ひかりについて尋ねられたが、シーリーとイストの証言もあってか、あっさりと街の中に入ることができた。

 中は石造りの外壁に覆われた街並みで、れんが造りの家が立ち並び、まったくの異国の光景だった。


 シーリーとイストが、フォレストウルフの討伐依頼を達成したことで冒険者ギルドに報告に行き、それが終わってから、夕食が食べられるお店に行った。


 人の集まる飲食店で、それぞれパンとポトフを頼み、注文の品が届いてから、各自食事にありついた。


「しかしシルバー銀貨を持ってるとはなあ。テレポート事故かと思ってたけど、お金持たされてから飛ばされたんかな」


 イストがそう切り出す。

 テレポート事故によって飛ばされたにしては、やけに準備がいいということらしい。

 ひかりが持っている銀貨は、そこそこ価値のあるものだったようだ。


 パンとポトフで、3シルバー。銀貨3枚だった。

 鞄にはまだまだ銀貨が詰まっているし、当面の生活には困らなさそうだった。


「何シルバーぐらいあるの?」

「数が多くて、数え切れなくって……。数百枚はあると思うんですが」

「おおー、それなら普通の宿にも泊まれそうだね」


 シーリーがそう言った。

 一食3シルバー、宿代が一泊30シルバーらしい。

 3食と1泊で、一日約40シルバー。実際はもう少しかかるだろうと予測できる。


 鞄の中には、ざっと数百のシルバー銀貨が入っている。

 ちゃんと数えてはないが、半月ぐらいは暮らせるのではないかと思った。


「でもぶっちゃけ厳しいな。どっかで仕事見つけないと、減る一方だろう」

「それは……そうですね……」


 イストの言い分に、ひかりは小さくそう呟いた。

 半月以内に、何か仕事を見つけなければ。

 さもなくばデスゲームとか関係なく、飢え死にしてしまう。


「孤児院には入れない?」

「むりだろーな、この国の孤児院はどこもいっぱいだ。赤ん坊ならまだしも、十二歳とかじゃ受け入れてもらえんだろう」

「あの、一応、十五歳です……」

「そーなの!?」


 二人は驚いた様子だった。

 ひかりは背が低いので、見た目十二歳ぐらいに見えていたらしい。

 孤児院があるなら、もっと幼い子を優先するだろう。難しい問題だった。


「しかし十五で身寄りがないとなりゃ、早めに仕事見つけないと大変そうだな」

「なんか割りのいい仕事ないの? イスト」

「俺に聞くなや。あればとっくにやってるわ」


 軽口を叩く二人にはにかみつつ、ひかりは内心焦りを覚えていた。

 お金があるのは幸いだ。異世界の街でも暮らしていけるかもしれない。

 しかしお金が尽きたら?

 頼れる親戚も施設もない異世界で、どう生きていけばいいのか。

 ようやく、自分がまったく知らない異世界に来たのだと、実感できた。


「とりあえず明日、神殿に行こうぜ。スキルを見て貰えば、もしかしたら何かいいスキルとかギフトがあるかもしれん。50シルバーかかるけど、なんか記憶喪失の手掛かりになるかもしれんだろ」

「え、スキルが見れるんですか?」

「うん! 神殿に寄進すれば、その人のステータスとスキル一覧が見れるんだー!」


 イストとシーリーは、そう勧める。

 この世界には、スキルという数値化された技能が、ごく一般的に確認できるらしい。

 スキルがあれば、職にありつけるかもしれないと。


 しかしひかりは、全然乗り気ではない。

 スキルを見られてしまえば、当然、異様な隠密999がバレてしまう。

 焦っていると、イストはこう切り出した。


「心配せんでも、神殿で表示されたスキルやギフトは、自分自身にしか見れんからな。変なギフトとかあっても、黙ってていいぜ。もちろん教えてくれたほうが、いろいろアドバイスができると思うが」

「するよー! アドバイス!」

「そ、そうなんですね」


 ひかりはほっとした。

 隠密999は、とりあえずは見られることはないらしい。


「まあ宿屋紹介するから、とりあえず今日は休んでな。同じ宿に泊まってるから、明日1階に集合しようぜ」

「あ、ありがとうございます。何から何まで」

「いいってことよ」

「なんか困ってたら、いつでも言ってね。できる限り力になるから!」

「金のことはあんま頼りにするなよ。貧乏だからよ」


 そう言って、宿屋を紹介してもらい、ひかりは初めての異世界で、一夜を明かすのだった。

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