36話:瀬戸さくら
「イストさん、シーリーさん!」
「お、ヒカリじゃん」
「ヒカリちゃん! 用事は済んだの?」
さくらという転生者を連れて、ひかりはイストとシーリーが護衛をしているという、サウスブランチ東の、開拓村へとやってきた。
開拓村には、一日何度かの乗り合い馬車が出ていて、そこに乗らせてもらった。
その開拓村で、早速イストとシーリーを見つけることができた。
「ん? その子は?」
「見ない顔だね〜」
二人はすぐにさくらの存在に気づく。
かつてのひかりと同じく、異世界の衣服であるセーラー服を着た、栗色の髪の少女。
ひかりは、早速彼女について相談を持ち込むことにした。
「よければ、少し時間をくださいますか? 彼女について、ご相談したいことが」
「いいよー! 今休憩中だし」
「できれば、人気のない場所で……」
「お、アレ絡みかな。まぁいいぜ、こっちの方に来な」
そう言って、村の外れの方に、一同はやってきた。さくらも一緒である。
人気のない場所にやってきてから、ひかりは二人に話を切り出した。
「詳細は言えないんですが、彼女……さくらさんが、お仕事を探しています。裁縫や料理などのスキルはとても高いですので、こちらの方で働かせていただけないでしょうか?」
「あ、瀬戸さくらといいます〜。よろしくお願いします〜」
ひかりの紹介に、頭を下げて挨拶をするさくら。
裁縫と料理が高いとなれば、労働者としては引く手あまたであろうと、ひかりは予測した。
「確かに、人手不足だから助かるな。村の方で、ちと相談してみる」
「お話はそれだけ?」
それだけの話であれば、わざわざ人気のない場所に連れてくる意味は薄いかもしれない。
ひかりは少し悩んで、さくらに問いかけた。
「さくらさん、裁縫と料理のスキルの数値について、二人に教えてしまってもいいですか? 二人には、なるべく口外しないようにお願いします」
「あー、やっぱアレ絡みね」
ひかりの物言いに、イストが察したように頷いた。
さくらは頷いて、スキルについて話してくれた。
「スキルは、裁縫442、料理236ですね〜」
「ああ〜、そういう!」
「問題があるんですか?」
さくらのスキル数値を聞いて、シーリーが納得したように声を上げた。
さくらの質問には、イストが答える。
「高すぎるんだよ。スキルは100もあれば、プロ級だ。200はまだしも、400は普通の人間ではありえねえ」
「あらら」
イストの解説に、さくらは緊張感に欠けた返事をした。
イストがさらに踏み込む。
「おそらくあんたは、伝説に聞く異世界転生者だ。それならその若さでその数値なのもしっくりくる」
「そこまで分かってしまうんですね〜」
さくらには、相変わらず緊張感がない。
イストは警告するように、話を続ける。
「この村で働くなら、スキルについては伏せておいた方がいいだろう。スキルの数値について、聞かれたら、まぁ90かそこらと答えておけ」
「はいな〜」
気の抜けそうな声で、さくらが返事をした。
イストは少し頭を抑えて、すぐに立ち直った。
「よし、村に裁縫と料理のスキル持ちがいるって、売り込んでくる。サウスブランチと違ってこの村は人手不足だし、料理スキル持ちならまず売り込めるだろ」
「美味しい料理食べたいもんね!」
「よろしくお願いします」
二人の協力を得られて、ひかりは安心した。
こうして開拓村に、一人の転生者がやってきたのだった。




