34話:出会い
「セキリュウソウ、2本取ってきました!」
「うむ、確かに」
後日。
ひかりは迷わずギースの個人依頼を受け、秘密裏にセキリュウソウを採取する係を引き受けた。
「ゴーレム、やっぱり居ました! 群生地らしき場所に一体」
「やはり、群生地にゴーレムを置いて、採取を妨害するつもりだな」
仮説が少し当たっていたようで、ギースは納得したように頷く。
ひかりは、ゴーレムのいる場所では採取しないように言われていた。
自爆されると群生地ごと焼き払われるし、何より危険だからだ。
「今のところ、沼地に怪しい人は見つかりませんでした」
「なるほど、わかった、帰ったら報酬を支払おう」
ギースは渡されたセキリュウソウを皮袋に入れ、マジックバッグに仕舞う。
彼のマジックバッグは、中に入れると、劣化しなくなる特別性らしい。
綺麗な状態のセキリュウソウを、痛ませずに保管できるそうだ。
「これだけでも、多くの命が救われる。とても助かっている」
「まだまだ明日も獲りますよ!」
「いや……流石に俺の懐具合が心配になってきた。一度依頼は終了しよう」
「あ、はい。でもわたしもっと安く売っても全然いいんですけど……」
1万シルバーが破格すぎるのであって、相場の5000シルバーでも全然儲かる。
ひかりとしては、恩人であるギースにならもっと安く売ってもいいぐらいだった。
「ありがたい申し出だが、まずはセキリュウソウを1本、前話した医者の転生者の元に持っていきたい。少しあの街を離れて、別の領に行ってくる」
「な、なるほど」
「金もそっちで稼いでくる。俺が戻るまで、セキリュウソウの採取はやめた方がいいだろう」
「迷うからですか?」
「いや、ゴーレムの件だ」
今回は泥まみれにならなかったので、普通に帰ることができた。
帰路に付きながら、ギースは語る。
「セキリュウソウの流通を止めている輩がいるのだ。もしセキリュウソウを市場に流す冒険者がいたら、狙われるかもしれん」
「な、なるほど……」
「だから俺が高額で買い取っておく。ひとまずは、特効薬の開発だ」
ひとまずは街に戻る二人。
冒険者ギルドにて、セキリュウソウの報酬を受け取るひかり。
きっちり2万シルバーを貰ってしまった。
「では俺はしばらく領を移動する。達者でな」
「はい、お気をつけて」
そう言って、ギースと別れるひかり。
手元には、セキリュウソウ3本分の報酬、3万と5000シルバーがある。
しばらく、というか、1年ぐらいは、遊んで暮らせそうだ。
一応命の危機はあったとはいえ、かなり楽に稼げてしまった。
なんだか、5級の二人に申し訳なさすら感じる。
(これからどうしようかなあ)
冒険者ギルドで一人になって、ひかりはそう考える。
イストとシーリーのいる開拓村を見に行ってもいいし、7級の仕事をこなしてもいい。
セキリュウソウの採取はギースには止められている……というか、そもそも5級以上の仕事なので、受けることはできなさそうだ。
(そもそもこれ以上階級を上げたら目立っちゃうかも……。お金ならいま沢山あるし……)
ゴブリンロードを倒せたのだ。隠密999と【アサシンダガー】があれば、大抵の相手は狩れるだろう。
5級冒険者になれば一人前。
だが、5級以上の冒険者は、緊急時に招集がかかることがあると、先のゴブリン騒動で分かった。
招集中に隠密999を使ったら、色々と面倒になるかもしれない。
そこまで階級を上げる必要は今はないかなと、ひかりは考える。
(気になるのはセキリュウソウの一件だけど、そっちはギースさんが対処してくれそうだし……)
どうしようか迷っているひかりに、不意に声がかかった。
「あの〜」
「!?」
話しかけられて、びくっとするひかり。
今は隠密をオフにしているが、それでも影が薄いぐらいの扱いで、知り合い以外には話しかけられたことはなかった。
相手の方も、ひかりの反応にびっくりしていた。
「び、びっくりさせてごめんなさい〜」
その相手は、女子高生だった。
いや、そうとしか言いようがない。
セーラー服を着た、多分16から18歳ぐらいの、かわいらしい少女。
髪は栗色でふわふわのウェーブのかかった髪、黒い眼、その他として、ひかりと同じサイズのマジックバッグを持っていた。
「もしかして、転生者仲間かな〜、と思って」
にこーっと笑って、その少女はそう言った。




