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28話:三人の談合

「ヒカリちゃん! 身体はもう大丈夫?」

「は、はい、おかげさまで、まだちょっと筋肉痛が残ってるぐらいでして」


 部屋に入ってすぐ、シーリーがひかりに駆け寄った。

 大丈夫と言っているが、シーリーはぎゅーっとひかりを抱きしめる。


「よかったぁ……倒れたから心配したんだよ」

「それは、ポーションの反動なので……」


 ついでに頭も撫でられる。

 どうもシーリーは、ひかりをかなり年下に見ている気がした。


「改めて、世話になったな。なんも礼になるもん用意できないが……」

「いえ、二人が無事なら、何よりです」

「う゛〜〜〜! 良い子!」

「シーリー、そろそろ離れろ、話ができん」


 イストに言われて、涙ぐんでたシーリーがようやく離れてくれる。

 ちょっと苦しかったひかりは、ほっと息をついた。


「積もる話はだいたい終わってるから、わざわざ個室に呼んだ話をするぞ」


 皆が椅子に座ってから、イストがそう切り出した。


「俺たちがヒカリに助けられたのは明らかだが、流石に不可解な点がいくつかある。それを聞くだけ聞くから、答えられる範囲で答えてくれ」

「あの……」

「どうした?」

「二人には、最初から、全部を話した方がいいと思ってます。そのつもりで来ました」


 ひかりは、隠していた内容を含めた、これまでの経緯を全て話し始めた。


 別の世界から転生してきたこと。

 その際に力を授かり、隠密スキル999を手にしたこと。

 ……『プレイヤー』同士の殺し合いのルールがあること。


 包み隠さず、ひかりは自分の境遇を二人に話した。


「ってなにそのルール! 殺し合いだなんて……!」

「そのルールとやらによると、他にも転生者がいるってことか」


 二人はひかりが転生者という事に驚いたが、それ以上に、ルールの部分に関心を持った。


「よしヒカリの境遇はわかった、命助けられてるしな、俺たちも全力でサポートするぜ」

「もちろん! 全力で隠すよ!」

「ありがとうございます……!」


 隠密を90と偽っていたので内心申し訳なく思っていたが、二人とも好意的に受け取ってくれたようで、ひかりはホッとした。


「で、次というか本題だが、どうやって俺たちを助けたんだ? 隠密999だけでは説明がつかんから、気になってな」

「それはギースさん……あの骸骨の兜の人から、これを借りたからです」


 ひかりは鞄から、【アサシンダガー】を取り出した。


「マジックアイテムか?」

「相手に見られる前に切りつければ、びっくりするぐらい切れ味の上がる短剣です。これのおかげで、ゴブリンが紙のように切れました」

「ああなるほど、隠密999と相性が良すぎるな」


 そう、実際に助けたのはひかりだが、助言や道具をくれたのは、ギースである。


「あの人に、助けるための方法とか、煙玉とか、この短剣を貸してもらえたんです」


 ちなみにギースに【アサシンダガー】を返そうとしたのだが、そのまま持っておけと、半ば強引に持たされてしまった。

 同様に、煙玉やポーションの代金を払うつもりだったが、出世払いでいいと言われてしまった。

 後で代金だけでも調べておこうと思うひかりであった。


「あの骸骨の人、味方だったんだねぇ」

「憲兵からも聞いたよ、“黒髪狩り”とかいうやつから、助けてもらったんだってな」

「憲兵さんが……?」


 そんなことまで伝わっているとは、割と口の軽い世界だなあとひかりは思ったが、イストも思うことがあったのか、言葉を続ける。


「あぁ、別に憲兵も、なんでもかんでも言いふらすわけじゃないぞ。ちょっと俺たちが特殊なだけで」

「特殊?」


 ひかりが尋ねると、二人がちらっと目を合わせてから、話し始める。


「ヒカリちゃんが話してくれたら、あたしらも正直に話さないといけないよねって」

「なんでずっとゴブリン狩ってたかも、そろそろ話してもいいと思ってな」


 イストとシーリーにも、何か隠し事があったらしい。

 二人は、そのことについて話してくれた。


「俺ら、この領の領主の子飼いの冒険者なんだよ」

「そそ」

「なるほど……」

「領主に頼まれてな、領内の治安維持に協力してくれってな。だから揉め事にも、街の憲兵とも連携とって対処してるんだ」

「ゴブリン狩りも、治安維持の一環だね〜」

「見返りに衣食住を保証してもらって、少ないが給金も貰ってるんだよ」


 領主の子飼いの冒険者。

 そういうものがあるらしいと、ひかりは感心していた。


「ただなぁ、今回の件もあったし、流石に子飼いから離れて、普通の冒険者として金貯めようかなっては思ってはいる……」

「けどゴブリンもういないし、給金貰えるからこれから貯まっていかない?」

「んー、首都に拠点移した方が、効率よく稼げるけどなあ……もう少しだけ粘ってみるか……」


 何やら二人で話し込んでいるのを、ひかりはぼーっと聞いていた。

 領主の子飼いの冒険者というのも、決して楽ではないらしい。

 ひかりは何気なく聞いた。


「領主さん、良い人なんですか?」

「いい人だよー!!」


 ひかりの質問に、シーリーが迷わず答えた。

 イストが続けて補足する。


「俺とタメで、優秀かついい奴なんだがな。優秀すぎて、このゴブリンだらけの貧乏領の領主に仕立て上げられちまったんだ。んでいい奴すぎて、なんとかしようと必死になってる」

「せめてお金があればねぇ」


 思わぬ内容に、ひかりは苦笑した。とても世知辛い内容だった。


「そうそう、一応聞いておきたかったんだが、ゴブリンロードはヒカリが倒したんだよな」

「あ、はい、多分……」


 あの時、無我夢中でゴブリンを葬っていたので記憶はおぼろげだが、確かに大きなゴブリンを倒した覚えはあった。


「その功績をギルドや領主に報告すれば、報酬やら今後の便宜やら図ってもらえると思うが、どうする?」

「めっちゃ目立つよ!」

「いいいいいです! 必要ないです! 目立ちたくないので!」


 ひかりは全力で断った。

 イストは分かってたとばかりに話を続ける。


「まあそう言うと思ってな、まだどっちにも言ってねえ。ゴブリンロードは、通りすがりの謎の冒険者たちが倒した事にしておくか」

「あの冒険者たちも、転生者かな?」

「ヒカリの情報を照らし合わせると、多分そうなるな。他にゴブリンを好き好んで狩る理由が浮かばん」


 ひかりの話は、なんとか内密に済ませてもらう事になった。

 二人は改めて、ひかりの方を向く。


「今はまだ金がねえが、命助けられたんだ。後日ちゃんとしたお礼を持っていくぜ」

「ごめんねー」

「そんな! 本当に気にしないでください。もし、よければ、今後も色々教えてください!」

「もちろん!」


 三人の談合は、こうしてひっそりと終わったのだった。


ここまで読んでくださった方々、ありがとうございます。

キリがいいのでここまでを第1章として区切らせてもらいます。

第2章はすでに書き上がっているので、引き続きお付き合いくださると幸いです。

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