表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/80

23話:ロード

「8匹目!」

「ギャギャーッ!!」


 さらにゴブリンを4匹倒して、一行は森を進む。

 その中で、イストが舌打ちをした。


「チッ、悪知恵つけやがって……」


 次に遭遇したゴブリンは6匹だったが、2匹逃げてしまった。

 追いかける一行だったが、その2匹は、狭い横穴に逃げ込んでしまう。

 横穴は、ひかりぐらいならなんとか通れそうな大きさだったが、鎧を着たシーリーが槍を振るうには狭すぎる。

 つまり、実質追う事ができなくなった。


「最近多いよね〜。逃げ込むやつ」

「そういう場合は、こうだな」


 イストが何やら唱えると、横穴の上側がガラガラと崩れ始めた。

 みるみるうちに穴は塞がり、埋め立てられる。


「これでこいつらは、そのうち餓死する。さ、次に行くか」

「は、はい」


 森は入り組んでいるだけでなく、山岳とかかって起伏に富んでおり、ひかりはついていくだけで精一杯だった。

 討伐したゴブリンの左耳の数が10を超えたが、まだひかりの出番はなかった。


 たびたび横穴を見つけては、イストが魔法を使って塞いでいく。ゴブリンの巣もあったが、構わず埋めて行った。

 その様子を見て、ひかりは疑問を挟んだ。


「横穴は、埋める決まりがあるんですか?」

「いや、ゴブリンの逃げ道を塞ぎたいだけ……あ、右前方、ゴブリン、数は3」

「はいよっ!」


 話しながら、流れ作業でゴブリンを仕留めていく二人。

 その手際の良さに、ひかりはより疑念を深める。


(……この二人、なんでゴブリン狩りしてるんだろ)


 ゴブリン10匹で、100シルバー。それはいい。ゴブリンは強くはないし、その分報酬も安い。

 しかしこの二人の強さなら、もっと他にいい依頼がある気がした。

 なにせ、まだ8級であるひかりの薬草採取の一日の稼ぎが、200から400シルバーなのだ。

 このペースでゴブリン狩りを続けて、かつ報酬を山分けするなら、ひかりよりも稼ぎが悪いということになってしまう。

 5級冒険者でそれというのは、かなり違和感があった。


「二人は、どうしてゴブリン狩りを……?」

「お、それ聞く? まぁ、おかしく思われてもしょうがないわな」


 ひかりの質問に、イストは苦笑いをしながらそう言った。

 やはり何か理由があるらしい。


「そうだな……わざわざ金にもならんゴブリンを狩ってるのはー……」

「ねーイストー」

「なんだよ」

「槍壊れそう」


 話に割って入って、シーリーがそう言った。

 見れば、槍の穂先がグラグラしているらしい。シーリーが手でわざわざ槍のぐらつきをアピールしていた。


「あちゃー、もうか」

「騙し騙し使ってたけど、そろそろ買い替えなきゃ。んで、新しい槍買ったら、あたし素寒貧になるわ」

「そろそろゴブリン狩りもきついな」

「だいぶ前からきついよ〜! だいたい飽きるし!」


 すっかり二人で話し込んでいて、ひかりはポツンと話に取り残される。

 そんなひかりに、シーリーが申し訳なさそうに話しかけた。


「ヒカリちゃん、ほんとごめん。この前上げた短剣、ちょっとだけ借りていいかな。槍が壊れたらあたし、役立たずだから!」

「あ、それは全然大丈夫です」


 そう言って、貰った短剣を取り出して、再びシーリーに渡すひかり。

 なんだかいたたまれなくなって、ひかりは切り出した。


「……というかわたし、お金、少しならあるので、渡しても……」

「あー! そっちはいい! あたしは後輩からの施しは受けない……!」


 現在、ひかりは400シルバーほどは持っている。

 恩人たちに素寒貧になられるぐらいなら、貸すなりなんなりしてもよかったのだが、シーリーは断固拒否した。


「何も俺らも、万年貧乏してるわけじゃないぞ。首都の方へ行けば、それなりに稼げるさ」


 イストが苦笑しながらそう答える。

 だったら尚更、なぜ金にならないゴブリン狩りをするのか。

 それを聞こうとして、ひかりは突如悪寒が走った。


「っ! あのっ、なにか、急に嫌な感覚が……!」

「?」


 なんとも言えない、嫌な予感。

 それはあの時、“黒髪狩り”に襲われる直前の、あの感覚。


 ひかりがそう言うと、シーリーとイストが同時に反応した。


「ほんとだ……何かデカイやつの音がする」

「《サーチ》に反応あり、これゴブリンか? 何か近づいてくる」


 油断せず、三人は身構える。

 しかし、その予感は、予想以上に悪い方向に当たっていた。


 森の向こうから、巨大な影が迫っていた。

 見た目は、ゴブリンそのもの。

 しかし、大きさが桁違い。

 木々をかき分けるように、2メートル近い巨体が迫ってくる。

 小型のゴブリンと違い、剣と鎧で武装し、兜までつけている、ゴブリンの偉丈夫。

 それは、ゴブリンとは比べ物にならないほどの、プレッシャーを放っていた。


「まっずい!」

「ゴブリンロードじゃねぇか! ずらかるぞ! 逃げろ!」


 森の奥。ゴブリンたちの王と遭遇し。

 一行は背を向けて、全力で逃げに走った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ