表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/80

22話:ゴブリン狩り

「神聖魔法を授かった!?」

「ヒカリちゃんすごーい!」


 その日のうちに、ひかりは冒険者ギルドに赴き、たまたま依頼を見ていたシーリーとイストにそれを伝えた。


「神聖魔法を使えるってことは、色々とできることが増えたな。冒険者としても、かなり便利な魔法だ」

「それについてなんですが、魔法について詳しく教えてもらえませんか? わたし、そのあたりに疎くて……」

「んー、神聖魔法は、感覚派だろうからな。理論派の魔術師の俺からは、あんまりいいアドバイスはできなさそうだが」


 イストはそう言って、話を始める。


「まず、共通事項として、全ての魔法は『マナ』と呼ばれる特殊なエネルギーを消費する。『マナ』は大気中にもあるが、基本使えるのは個人の体内にある『マナ』だけだと思った方がいい」

「なるほど……?」


 魔法とマナの関係。

 いわゆるゲームで言う、MP(マジックポイント)のようなもののようだ。


「体内の『マナ』は、ステータスでいう魔力にも影響する。魔力が高いほど魔法の威力は上がるし、『マナ』の総量も上がりやすい。


 ひかりの魔力は、10(+1)だ。

 多分、高い方ではないだろう。


「魔力は、生まれつきの才能もあるが、基本的には魔法を繰り返し使っていくことで鍛えることも可能だ。これから要練習だな」

「ねえねえ、せっかく神聖魔法が使えるようになったんだから、一度パーティ組んでみない? ゴブリン討伐!」


 イストの解説に、シーリーが口を挟んだ。

 思わぬ提案に、ひかりは少し固まった。


「ええと、わたしじゃ力不足、かも……?」

「神聖魔法を使えるなら、簡単なケガを治すことも可能だ。パーティ組むなら、俺たちにもメリットがなくはない」


 イストはそう言って、しかし頭をくしゃくしゃとかいて続けた。


「ただなあ、ゴブリン討伐、面倒な割にあんま金にならんのよなぁ。10匹で100シルバーだから、報酬山分けにすると、あんまり稼げんぞ」

「いいじゃん、経験積ませたげようよ! ヒカリちゃんがよければ、だけど!」

(ど、どうしよう)


 ひかりはまだ、神聖魔法というものをよく理解していない。

 それに、ゴブリンを殺せるのか、まだよく分かっていなかった。

 しかしせっかく誘ってもらったのに、無下に断るのも考えものだ。

 7級には上がりたいし、ひかりは提案に応えることにした。


「そうですね……では厄介になります」


 ペコリと頭を下げて、ひかりはイストとシーリーと、ゴブリン退治のためにパーティを組む事となった。



……。

……。



「ゴブリンはこの領の森に巣食っている。数はまあ、1000は超えてるだろうなあ」

「千……!?」


 道すがら、ゴブリンの事についてイストから教えてもらう。


「もちろんとても倒しきれないが、なるべく数を減らしていくのが俺たちの仕事だ」

「100倒せば1000シルバーになるよ!」

「いきなり100匹も倒せるか。まずは慣らしで、キリよく三等分できるように30匹を目指すぞ」


 1000匹いる中で一日30匹を間引くとなると、相当気の遠い作業になるなとひかりは思った。

 当然、相手は生き物だ。産んで増えることもあるだろう。そう考えると、イタチごっこなのかもしれない。


「それで、わたしは何をすればいいでしょうか?」

「ヒカリは神聖魔法スキル10を持ってるから《ヒール》《キュアポイズン》《プロテクション》なんかが使えるはずだ」


 イストが指を立てながら説明する。


「《ヒール》はケガを治す魔法。《キュアポイズン》は毒を治す魔法。《プロテクション》は、簡易的な結界を張る魔法だ。どのぐらいの効果が出るかは、術者のスキルと魔力で決まる」

「基本ついてくるだけついてきてもらって、あたしらがケガしたら《ヒール》してもらうのがいいかな〜」

「そうだな、ケガや毒を受けたら、可能な限り治してくれ」

「はい!」


 役割を教わって、意気込みを示すひかり。

 ほどなくして、ゴブリンの巣食う森へと辿り着いた。


「シーリーが前衛、俺とヒカリが後衛だな。俺は魔法で援護、ヒカリはさっき言ったとおりだ」

「はい」

「今日もゴブリン狩るぞー!」


 元気のいいシーリーを先頭に、一行は森へと入って行った。


 入ってすぐ、イストが口を開く。


「あぁ、早速前方にゴブリンだ。数は3か4」

「了解!」

「え? わかるんですか?」


 森は草木に覆われ、見通しは悪い。

 しかしイストは杖を掲げて、ひかりに答えた。


「《サーチ》って魔法があるんだ。広範囲の生き物を探知できる。おおまかにだがな」

「なるほど……」


 ずんずんと進んでいくシーリーが、すぐにゴブリンと出くわした。言ったとおり、ゴブリンが4匹ほど集まっている。


「でりゃー!!」

「ギャギャ!?」


 突然の遭遇に驚いているゴブリンに対し、事前に知らされていたシーリーは有利に戦いを仕掛ける。

 ほぼ一方的な槍捌きでゴブリンを4匹仕留め、あっという間に決着がついた。


「よーし! まず4匹!」

「す、すごい……」


 ひかりは感嘆の声をあげる。

 ゴブリンの数匹ぐらいは、この二人には楽勝らしい。


「さ、じゃあ左耳を剥ぎ取るぞ」

「左耳?」

「ああ、ゴブリンは討伐したら、左耳を切り取るんだ。左耳を10個納品で100シルバーだな」


 手際よくナイフでゴブリンの左耳を切り取る二人に、ひかりは首を傾げた。


「左耳に何かあるんですか?」

「んや、価値はない。ただの討伐証明だな。ゴブリンは金になるようなモンスターじゃないんだ。だから報酬も安いわけだが」

「まあ、間引かないとねー」


 淡々と流れ作業で耳を取り、立ち上がり、森の奥を見る。


「ま、先は長い。気楽にやろうや」


 何気ないように、イストはそう言った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ