16話:襲撃
「?」
宿屋の一室でくつろいでいたひかりは、何かを感じて身を起こした。
「何か嫌な感じが……」
感覚のステータスが100(+10)であるひかりは、敵の感知能力にも優れていた。
その感覚が、何か嫌なものを告げている。
「外には出ない方が良さそうかな……」
嫌な予感をどう対処したらいいのか分からず、ひかりは立ち上がって扉を見ながらそう呟いた。
その時。
ひかりの真後ろで空間が歪み、仮面を付けた男が現れた。
男は抜き身の短剣を迷いなく振り下ろし、ひかりの首に刃を突き立て……。
ガキィン!!
ようとして、白い球状の結界に阻まれた。
「ひ、わあああぁぁぁ!!!」
「チッ、プロメス信者か!」
悲鳴をあげるひかりに、男は舌打ちしてそう呟く。
【プロメスの加護】
あなたが怪我を負いそうな時、稀にそれを結界で防いでくれる。
プロメスの力により、ひかりは不意打ちを防ぐことができた。
しかし。
「けどこの加護、一度発動したら最低でも1時間は再発しねえ。詰みだな」
仮面の男はクククと笑って、短剣を構える。
ひかりは慌てて扉の方に向かう。部屋を出て、助けを求めるつもりだった。
だが、鍵を開けてドアノブを回しても、扉は開かなかった。
「え、なんで!」
「開かないだろ? 《遮断結界》で部屋自体を結界で覆ったんだよ。この結界は出入りできないし、どんだけ叫んでも人は来ねえ」
ギフト
《遮断結界》
狭い範囲の空間を遮断する結界を貼ることができる
《空間歪曲》
空間を歪めて、短距離をワープすることができる
この二つのギフトが、仮面の男のキモであった。
《遮断結界》に閉じ込めて、《空間歪曲》で自分だけ結界の中に入る。
ターゲットと1対1の状況に持ち込み、人知れず葬る。
これが、『プレイヤー』狩りのやり方の一つであった。
ひかりは慌てて隠密をオンにする。
しかし、すでに見られている相手に、隠密は通用しなかった。
「お前、隠密999らしいなぁ。バカだよなあ。こうして視界に入れちまえば、なんとでもなるのになあ」
「あ、あ……」
刃物を見せびらかすように、男はひかりにゆっくりと近づく。
ひかりは怯え切って、床にへたり込んだ。
「ツラはまあまあだなあ。でも、結界なあ、俺の魔力だと10分程度しか持たなくてなあ、ヤってる時間まではなくてなあ……」
もう短剣の間合いに入るぐらいに、近くまで寄られてしまった。
男は短く告げる。
「だから潔く死ね」
短い言葉と共に、短剣を持つ手が振り上げられる。
これで、ひかりの第二の人生は終わっ……。
ドガッ!!
「うぐぉ!!?」
らなかった。
突然、仮面の男が横に吹っ飛んだ。
見れば、骸骨の兜の男性が、いつの間にか現れて仮面の男を殴り飛ばしていたのだ。
「へ……?」
呆然とするひかり。
仮面の男も、骸骨の兜の男性も、どちらも鍵の閉まっている部屋の中に突然現れたのだ。
わけもわからず、ひかりは混乱していた。
そんなひかりに、骸骨の兜の男性が声をかける。
「外に出ていろ」
「え、あの……」
そもそも扉が開かないのだが。そう言いたかったひかりだが、男はひかりの肩に手を触れ、短く呪文を唱えた。
「《ショートテレポート》」
ブン、という音と共に、ひかりの姿が掻き消え、転送された。
《ショートテレポート》。ごく短い距離、数メートル程度をワープする、初歩的な魔術。
ひかりは結界を通り抜けて、廊下に飛ばされたのだ。
「だらあぁぁ! クソがあぁぁぁ!!」
その直後、仮面の男が怒りの声を上げて立ち上がる。
ぶん殴られて転んでいたが、すぐに立ち直った様子だった。
「てめぇ!! 獲物が逃げちまったじゃねえか!! 何もんだ!! 『プレイヤー』か!?」
「お前が“黒髪狩り”か?」
質問には答えず、骸骨の兜の男はそう聞き返した。
(いやもう、《鑑定》した方がはえぇ!)
仮面の男は、ギフトの《鑑定》を使い、相手のステータスを表示した。
ギース=ジギタリス
ステータス:
生命50
筋力101
器用55
敏捷55
体力109
感覚88
知識88
精神102(+20)
魔力98(+18)
スキル:近接戦闘111、投擲92、短剣93、剣105、槍21、斧23、盾22、隠密29、探知51、信仰157、魔力制御52、魔術52、神聖魔法79、呪術327
ギフト:なし
フィート:《不死狩り》、《アンデットスレイヤー》、《呪いの使い手》
『プレイヤー』ではありません




