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第1章〜学園一の美少女転校生が、休み時間の度に非モテのオレに話しかけて来る件w〜③

(この世には、神も仏もないのか……)


 打ちひしがれる竜司に、十年来の友人は、


「どうしたの? そんな、雪中行軍中の隊長が『天は……天は我々を見放したァァァァァ』なんて、叫び出しそうな打ちひしがれた表情で……」


などと、ニヤニヤ笑いながら、絡んでくる。


「うっせ〜!! そもそも、誰のせいで、こんなことになったと思ってんだ!?」


 傍らに立つ壮馬の首根っこに腕を回し、ヘッドロックを掛けたあと、握りこぶしをマッシュヘアに押し当てようとしたところで、


「おはようございます。黄瀬クンに、黒田クン……。今年も同じクラスですね」


と、声が掛かった。

 声の主は、天竹葵(あまたけあおい)

 ロングヘアーを三ツ編みに束ね、メガネ姿が印象的な文芸部に所属する少女は、二人の昨年度までのクラスメートにして、件の紅野アザミの一番の親友だ。


「二人とも、相変わらず仲が良さそうですね」


 苦笑しつつ、問い掛ける彼女に、腕のチカラを緩めて、


「お、おう……」


と、返答しつつも、竜司はバツの悪さを感じずにはいられない。理由は、説明するまでもなく、葵のそばには、その友人のアザミがいることが多いからだ。

 そして、彼の予想に違わず、天竹葵の傍らには、紅野アザミが立っていた。

束感のあるバングに、ほんのりとレイヤーが入ったナチュラルボブのヘアスタイルで、前髪から流れるサイドバングが内巻きにカールし、小さな顔が、よりコンパクトに見える。

 心なしか、彼女も気まずそうな表情をしているように感じられるのは、気のせいだろうか?

 それでも、二週間前に竜司が自らの想いを告げた相手は、何事もなかった風を装って、


「おはよう……黒田クン、黄瀬クン! また、今年も同じクラスになったね。一年間ヨロシク」


と、微笑む。


「あぁ、おはよう!天竹、紅野……今年もヨロシクな……」


 同じクラス委員を務めたこともあって、竜司にとっては、話す頻度も、親しさも、葵よりアザミの方が上回っている。ただ、とっさのことでもあり、葵の名字を先に呼んだことに、違和感を覚えられないだろうか、と気になったが、彼の心配をよそに、二人ともそのことを気にした様子はなかった。

 一方の壮馬は、何事もなかったように、


「紅野さん、天竹さん、今年もヨロシクね!」


と、女子二名に声を掛けたあと、竜司を含めた三人に、こんな疑問をぶつけてきた。


「ところでさ……紅野さんのあとに、白草四葉(しろくさよつば)って名前があるんだけど……ウチの学年に、こんな名前の生徒っていたっけ?」


 彼の発した問いに、掲示板を確認する三人。

 紅野アザミの名前の下には、確かに


 ・白草四葉


という名が記されていた。

 その中で、真っ先に口を開いたのは、葵だった。


「ホントだ! 見慣れない名前ですね?転入生でしょうか? それに、これって……『クローバー・フィールド』のヨツバちゃんと同じ名前……!?」


「クローバーなんとか? ヨツバチャン? 有名人なのか?」


 今年も一年を同じクラスで過ごすことになる小柄な同級生の一言に、竜司が喰い付いた。


「わずか十歳にして、民放テレビ局の歌番組で話題を独占! 有名女優の娘にして、《ミンスタグラム》のフォロワー数一◯◯万人オーバーのヨツバちゃんを知らないなんて……竜司、ホントに高校生なの!?」


 冷やかし半分、呆れ返る感情が半分、といった感じで壮馬は友人の言葉に返答する。


「好きなアニメや映画が、ことごとく前世紀の作品の壮馬に言われたかね〜よ!!」


 竜司の反論を肩をすくめてスルーした壮馬は、


「う〜ん、ただ同姓同名なだけなんじゃないかな……?」


というアザミの返答には、反応して、


「紅野さんも、やっぱり、そう思う? でも、白草四葉の母親、小原真紅って、この辺りの出身だって、ウチの両親が言ってたんだよね〜。小原真紅は、ウチの親より、少し年齢が上だけど……」


と、言葉を返し、壮馬のこの発言には、


「そうですね。芸能人は、結婚するのが遅い方も多いですし……」


と、葵が世間話をするように応じる。

 そして、ここまで三人の会話の輪から弾き出されていた竜司が声をあげた。


「おい! お前ら、オレの話しは、ガン無視かよ!?」


 その歯切れ良いツッコミに、三人は、クスクスと声を忍ばせて笑い合う。

 長い付き合いでもある友人からのぞんざいな扱いには不平を述べたいところではあったが、新学期最大の懸案だった紅野アザミの態度がよそよそしくなかったことに安堵を覚えつつ、竜司は、新たなクラスメート達とともに、新学年の教室にむかうことにした。

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