『錬金110話 勇者グラティアス視点』
ダレンムルは疑問に思うかな?
普通に思うか。
いや、このままだと、稲妻達が倒したのに、俺の成果になってしまう。
文句は言うだろう。
「ギルドマスター、ちょっと意見があります」
「なんだねダレンムル。意見とは何かな。今の折れの説明に疑問があったか?」
「はい、大ありです」
「そうか、どう考えても、またBランクのダレンムルには、今回の依頼は厳しかった。それは俺もわかっていて、それでも勇者グラティアスと一緒なら、補助的に参加できる。そしたら、稲妻にとってかけがえのない経験になると思った。良い経験になったのだ、報酬など要らない少しだけグラティアスにもらいなさい。今は経験を重要視しなさい」
タップが自分の冒険者の頃を思い出しながら、後輩のダレンムルに言っているように聞こえた。
ダレンムルはそれでも納得はしていない顔だ。
「全くの正論だと思います。勇者パーティーと一緒に参加させてもらい、とても経験できない経験をしました」
「なら、それでいいだろう」
「いいえ、経験はしました。それは納得します。けどもマスターは勘違いしてす。それも話の重要なところを」
「勘違いとは? 俺が何か勘違いするところがあったか、話せ」
おいおい、完全にヤバイ展開だよな。
ダレンムルは、倒したのに、補助的扱いされたのを話すだろう。
そうなると俺の立場は危なくなるな。
「はい、ケンタウロスの件ですが、ケンタウロスは勇者がグラティアスが前衛のメイン攻撃し、俺の稲妻や鬼龍が補助的な役割をしたとなりましたよね。それで報酬はなしで、グラティアスから少しもらいなさいと。でも実際の戦いで、ケンタウロスを斃したのは俺たち稲妻と鬼龍でした。ほとんどのダメージを与えました。戦いの際にケンタウロスの攻撃もかなり受けてしまい、その傷はフィーネルに回復してもらいながら、また攻撃したのです。何度も何度も傷を受け、回復魔法をしてもらい、やっとケンタウロスを凍結しました。よってケンタウロス戦は俺たち稲妻と鬼龍、後方支援のフィーネルの成果でした。そこの点がマスターと実際の違いです」
すべて確実にあったまま話したな。
フィーネルは大活躍して、稲妻と鬼龍も活躍し、俺の名前はなかった。
出番なしってことだ。
さすがに自分でも酷いとは思うが、事実であるから、意見はできない。
ダレンムルが真実を話し終わると、マスターのタップは、険しい顔になった。




