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婚約解消のあとで

 私たちは結局は同居しているままだ。私が骨折していたこともあり、両親も共働きで忙しく、人手が欲しかったのか、担任だからなのか、婚約解消後も同居という形をとっていた。姉は、そのあと新しい彼氏と同居を開始したらしい。


 私にとっては、新鮮でドキドキの毎日であり、今は一緒に居られることのほうが楽しい気持ちになっていた。


 特に、私と先生の進展はない。

 教師と生徒という関係は3月で終わる。

 同居もなくなり、義兄ではないとなれば全くの赤の他人。

 4月のころの私ならば、喜ぶのは必至だっただろう。

 しかしながら、今の私は、先生が引っ越すということが悲しい事実となっていた。


 ある日の夕食の時、それは突然やってきた。

「実は、この近くにいい賃貸マンションを見つけたからそこに引っ越そうかと思っています」


 突然の提案に私たち家族は固まった。両親も息子がいないので、実の息子のようにかわいがっていたし、あいつはこの家に馴染んでいた。


「気を遣わなくても、ここにいてもいいのよ」

 母が言った。


「でも、婚約も解消したことだし……申し訳なくて」


「お母さん、息子が欲しかったのよ。いっそ、あかりと婚約しない?」


 私はそれを聞いて、飲んでいたお茶を吹き出した。

 あまりにも気楽な考えの母の提案に、娘の私がびっくりした。


「卒業してから結婚する、教師と生徒ってよくいるみたいだぞ」


 お父さんまで、そんなことを言って……。

 うちの両親共々息子が欲しかったっていう話は、本当だったようだ。


「このうちは居心地悪い? もし気を遣って言っているなら、せめてあかりが卒業するまでこの家にいてもいいのよ」


「ありがとうございます。もう少し考えてみます」

 色黒のスポーツマンは礼儀正しい。


 この人、家族いないみたいだし。一人暮らしは寂しくなるよね。



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