表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/12

一度会っただけで同居を決めた理由

 同じ学校へ向かう。一緒に行くわけではないが、部活の朝練のために、どうしても同じ時刻に出発することになる。仕方ないのだ。私の部活の顧問が同じ家に住んでいるのだから。しかも歩きで行ける距離なので、ほどよく距離をとって歩く。


 表向き別居しているふりをしているが、校長先生には担任に決まった後に姉の婚約と同居の件を話したので、担任はこの人のままとなった。

 何も後ろめたいことはないのだが、同級生には知られたくないので黙っている。面倒くさいことは嫌いだ。


 早朝、誰もいなかったので、少し離れて歩きながら聞いてみた。

「なんで一回会っただけで婚約したの?」

 これは普通に気になる話だった。


 姉は細かなことに気を配らないので、好きになったら結婚すればいいという考えだが、結婚というものは、もっと慎重であるべきだと思う。若い私が言うのもなんだが、そんなに簡単に人生を決めていいの? 色々な思いをこの一言に託した。


「結婚しようと思って婚活していたわけだが――会ったその日にプロポーズされるとは思わなかったな」


「それはそうだね」

 同感だ。全くうちの姉は何を考えているのだろう。


「とりあえず、家族が欲しかったから、俺でいいなら結婚してほしいと思って」


 なに? とりあえず家族が欲しいから?

 安易すぎる人生の選択。この人、大丈夫だろうか?


「お姉ちゃん、全然うちにいないけど好きなの? 結婚してもあんな感じだと思うよ」


「好き……なのかな」


 何? この疑問形?

 大丈夫? うちの担任。


「だってずっと不在だよ。海外だとか演奏会ばかりで」


「結婚してもずっとそんな生活だったら……まぁ寂しいかな」

 まぁ寂しい? そんなレベルの話?


「俺、両親早く亡くしていて家族に憧れるっていうか……お母さんもお父さんもいて。もう、俺たち家族じゃないか」


 何その考え。生い立ちに同情こそするけれど、家族として私も認識されているとは。寂しがり屋か? こっちは年頃の女の子なのに、血のつながらない兄(予定)がいることが迷惑なのに。


「私は迷惑なんですけど」

 本音を言ってみた。


「そうか。ごめんな」

 先生は少し寂しそうな顔をした。罪悪感に苛まれる。

 あーだこーだ言っているうちに学校についた。

 この瞬間から同居家族から先生と生徒だ。

 私は先生の洗濯物の下着にすらドキドキしていたのに

 家族っていいよなって思われていたなんて。むかつく。


 今日は思いっきり、ボールにぶつけるぞ!!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ