第39話 決戦!セントラルタワー
セントラルタワーの上空に降り立ったマリアはソフィーと分離する。3人で帝国と渡り合おうなどと相変わらずの無茶な任務だが、5人で帝国の侵略を食い止めたソフィーは慌てるような真似をせず、二人に戦いの方針を訪ねることにする。
「着いたのは良いけど、これからどうするの?」
「まずは地下のコントロールルームに向かって、セントラルタワーの全機能を止めようと思う。アーグレイのあの強さは尋常ではない。おそらく、このタワーから何らかのバックアップを受けていると考えられる」
「いやはやしっぽを巻いて逃げたのかとばかり……」
「貴様がアーグレイか」
「おやおや、貴女はあのとき助けてくれた女神様ではありませんか」
「……助けたことは後悔していない。だが、罪なき人に手を出すようなまねは許さん!」
アーグレイはマリア3人らの目を見る。決意の灯を宿したその目はアーグレイの嗜虐心を高ぶらせる。
「プロテ……」
「遅い!」
一瞬にして消えたアーグレイの攻撃を防ごうとしたソフィーだったが、ひじ打ちされて吹き飛ばされる。タワーの屋上から落ちないよう回り込んだアクセルがソフィーを受け止める。
「皇子。その首、もらいうける」
「そうはさせん」
アーグレイの手刀をマリアが剣で受け止める。このままではマズイと判断したのかすぐさま手をひっこめ、マリアから距離をとる。
「ソフィー、アクセル。お前たちは先に行け!」
「少ない戦力をさらに分散。しかも最高戦力は足止めのための捨て駒。褒められたことではありませんぞ」
「お前は何か勘違いしているな」
「ん?」
「私よりも妹のほうが強い!」
光の刃と超高速の手刀のぶつかり合いによって火花が散る。だが、アーグレイは余裕の表情を浮かべ、マリアはますます険しい表情になっていた。
マリアが激闘を繰り広げている一方で、ソフィーたちは階段を下っていた。朝早いとはいえ、職員がいるのがみえる。彼らが通りすがりのアクセルに声をかけてきたとき、それが起こった。
「殿下。ドチラニイカレマスカァァァァ!?」
彼らの皮膚が裂け、中から出てきたのは戦闘用のロボット、レジスタンスが内蔵された銃口をソフィーたちに向ける。
「なにあれ!?」
「いつの間にか職員らがレジスタンスに入れ替えられていたのか……中身は本人かもしれないが、俺はとんだフシ穴だ」
「そんなこと言っている場合じゃないよ。リフレクション!」
「ここに住んでいるのがレジスタンスなら、帝都に住んでいる人間もまさか……」
「いや、それは無いよね。合って欲しくないよ!? 喋っている間は撃たないでリフレクション!」
異変に気付いたレジスタンスらが化けの皮を剥いで、下の階層からも狙ってくる。だが、彼らの攻撃は全てリフレクションで跳ね返せるため、ソフィーにとってはかかし同然だった。
進撃の勢いは衰えず、ソフィーたちは地下のコントロールルームにたどり着く。大きな球状のマザーコンピューターと太いケーブルが無数につながっており、いかに重要な施設であるかが容易に想像できる。
アクセルがマザーコンピューターを破壊しようと銃を構えたとき、天井が崩れ落ちる。
「そうはさせん」
「……すまん」
二人の前に現れたのは手傷を負った姿で顕現ワープしたマリアと床を突き破ってきたアーグレイの姿だった。しかし、アーグレイも無傷ではいられなかったのか上半身の服が破れ、機械部品が埋め込まれている様子がうかがえる
「アーグレイ。貴様、サイボーグだったのか」
「さよう。この身体は皇帝陛下への忠義の証。皇帝陛下に謁見したくば、私を倒してからにするのだな!」
マリアが再びアーグレイに襲いかかるも、剣筋がすでに読まれており、カウンターと言わんばかりに殴りつけられ、吹き飛ばされる。すぐさま立ち上がるも、赤子の手をひねるかのごとくラッシュを受ける。
(呪文を打つ余裕すらない……だが、このままでは全員がやられる。何か策を考えないと)
「……策はあるよ。リフレクションダガー!」
ソフィーが腰につけていたダガーを投げつけ、リフレクションで縦横無尽に動かしていく。狙うはアーグレイ……
「その程度の動き、あくびをしてでもかわせますぞ」
「……だろうね。だから私は動かないものを狙った」
アーグレイはハッと気づく。かわした先にマザーコンピューターへの動力ケーブルにまっすぐダガーが向かっていることに。あわてて、アーグレイは跳躍しダガーを回収する。
「目標がどこに現れるか分かっていれば、その対象物が目で追えぬほどの速さで動いていたとしても狙い撃てる。地獄で詫びろ、アーグレイ!」
すでに銃口を向けられていたアーグレイは身動きが取れない空中に居たこともあり、回避行動をとる暇もなく頭部を撃ち抜かれて絶命した。念のため、セントラルタワーの機能を全て落とすため、マザーコンピューターにつながっているケーブルをすべて切除した。
そのことで、あたりが真っ暗になったので、ソフィーが光魔法で辺りを照らす。
「これだけの騒ぎ、父が気付かないはずがないのだが……」
「何のアクションも仕掛けてこないのは不気味だな」
「……ではリクエストに答えようとしよう」
機能を停止させたはずのモニターから、ニコラス皇帝の顔が映し出される。
「どこからか魔力波を使って、遠隔操作して起動させたか」
「私がどこにいるかが分からないとは……やはりお前は出来が悪い」
「そんな問答はどうでも良い。あんたはアーグレイのやっていたことを知っていたのか」
「当たり前だ。それらは私が全て指示したことだ。それがどうした?」
「あれだけの非道、許すわけにはいかない」
「確か、アーグレイにも同じようなことを言われて言い返せなかったと聞くが」
「そ、それは……」
「だから出来が悪いというのだ。そこのお譲ちゃんも道理的理由で私を責めるのかね」
「それもある。だが、お前たちは人を理解していない」
「ほう」
「私たちは傷ついて、倒れて、辛くても、そばに仲間がいたから何度でも立ち上がってきた」
「断ち切られたこの命、今まで出会ってきた仲間がいたからもう一度手にすることができた」
「人は仲間がいるから」
「どんなに遠くともつながっているから」
「「私たちは強くなれる。つながる心が私たちの力だ!」」
数々の死線を仲間と共に潜り抜け、戦い続けてきた二人だからこそたどり着いた答え。だからこそ、ニコラス皇帝を否定できる。
「こんな機械に任せるような貴方に」
「誰ともつながらないお前に」
「「私たちは負けない!」」
ニコラス皇帝は2人の答えに素晴らしい答えだと言って、二人に心無い拍手を送る。
「だからこそ危険だ。君たちにはここで死んでもらう。なに、つながりを大切にするなら、君たちだけを死なせはしないさ。帝都にいる人間全員なら寂しくないだろう」
「まさか貴様!? この街にいる人間ごと……」
「これは神との決別の一撃である。世界は神から人が統治する未来へと移り変わる。ギャラルホルン発射!」
「間に合え!シン・セイクリッドプロテクション!」
「私もこれ以上失わせるわけにはいかない。マルチプルプロテクション!」
その日、外に出ていた親子が居た。それは特に何の変哲もない平凡な日常だった。タワー内部で帝国の未来を左右する戦いが起こっているなど一般市民が知る由もないからだ。そんなとき、子供がなにげなく上を向くと空が光り輝いているのが見えた。
「ママ、あれなに?」
「あれ? なにかしら。あのひか――」
親子がそれ以上口を開くことはなかった。なぜなら、光に飲まれた彼女たちの身体は跡形もなく、まるでいなかったかのように消滅したからだ。
そんなことが起こっている中、姉妹が力を合わせてセントラルタワー周辺の上空にプロテクションを張る。少しでも犠牲者を減らすために。痛みすら許さない破滅の光が降り注ぐ中、彼女たちは歯を食いしばってプロテクションを張り続ける。
光が収まると、セントラルタワーとその周辺部だけを残し、光が降り注いだ場所は深い谷になっていた。目の前で起こったあまりの惨状に一般市民らは何が起こったのか分からず、唯々呆然と見つめているだけだった。
その様子を観測していたニコラスは不快そうにそれを見ていた。
「つながる心が君たちの力というなら、それを消し去るまでだ。スルト部隊、王国に降下開始!ギャラルホルンの目標を奴らのつながりの中心地レーラントに変更!」
『スルト部隊降下開始シークエンスに入ります。3……2……1……』
「ファイナルオペレーション、ラグナロク……世界は我が手の中に!」
ニコラス皇帝の号令と共に帝国の最期の命令が下されるのであった。




