チケット
そのチケットを手に入れるとどんな人でも救われるらしい。
ここに来るまで、ずっとそのチケットを入手しようとはしなかった。
救いの後で絶望したりはしないだろうか。
きっと甘い罠に違いない。
そんな疑いのせいで、目の前に降ってきたチケットを拾うことさえしなかった。
考えてみれば、チケットを手に入れる機会は何度もあったのだ。
けれどわたしはそれを欲してはいなかった。
救いなどただの幻想だ。
所詮、選ばれた人間のみが救われる世界なのだから。
と、そう思っていたのだ。
しかし、今。
希望が尽きた道の上で、どこかにチケットがないかと探す自分がいる。
あれほど避けてきたものだというのに。
己の意志の弱さを嘲笑うしかない。
けれどチケットが欲しいと願った瞬間、それはフッと雲のように消え失せる。
どんなに探してもチケットはどこにも見当たらない。
やはり。と、落胆する。
最初からチケットを手に入れる権利などなかったのだ。
わたしは絶望という終わりだけが残された道の上で途方に暮れる。
行く先にはもうなにもない。
終わりという絶望だけが残された世界で、わたしはただそれに向かって歩くしかないのだ。
チケットを差し出されたら受け取っておくのが正解かも。