夢の途中
君たちに感謝を。
もう、悔いはない。
そんなことを言ったら、きっと彼らは笑うのだろう。
これからだ、と。
不満だらけの人生が、いつからか百八十度ひっくり返った。
きっかけは、どこにあったのか。
仕事の引き継ぎで、突然わたしを訪ねてやってきた彼だったか。
それとも一作目のリリースを控えて沸き立っていた彼らを遠目に見ていたあの時だったか。
どこにあったとしても、いくつもの接点が積み重なって大きな流れになったことは間違いない。
わたしは今、無数の小さな点で構成された大きな河の中にいるのだ。
荒波に飲まれるのではなく、波にのって。
きっと誰も覚えてはいないだろうけれど、わたしは記憶の底で確かに覚えている。
君たちが何気なく放った言葉はわたしを貶めることなく肯定してくれたことを。
どれだけ嬉しかったことか。
どれだけ救われたことか。
この河がどこまで行くのかはわからない。海に出るかもしれないし、途中で渇れ果てるかもしれない。
どちらにせよ、わたしにはもう悔いはないのだ。
だから、この夢が終わってしまう前に彼らに感謝を伝えよう。
終わりのようでもあり、始まりのようでもあるこの夢の途中で。
笑われるだけかもしれないけどね。
本当に救われたと思っているよ。