生きるため
サクサクいきますよー
(一週間)
(一週間さえ過ぎれば、誰かが異変に気付いて助けに来てくれるはずだ)
ユズトは救助されることを願いつつ、その時が来るのを待った。
そして、一週間が経過し、それからまた、二日たった時、ユズトはものすごく焦りを感じていた。
(どうして誰も助けに来てくれてないんだ! 政府や警察はどうなってるんだ)
しかし、そんなことを思ったところで状況になにも変わらない。
(やっぱり、地球外までは来れないよな……)
マナマムのような巨大施設を作るような場所は地球には存在しない。
だから、スペースはとある惑星にその巨大施設を作り上げたのだ。
だから、転移以外の手段では誰も助けになんか来てくれないし、来られない。
なぜなら、その空間転移装置はスペースが保有しているからだ。
ユズトはもう一度、自分のランクを確認する。
そこには、1,000,000という数字が表示されているだけだ。
(よし!)
ユズトは何かを決心したように、机の中にあった小型ナイフを手に取り、空間転移装置の上に立つ。
ユズトは「転移。グリマー」
ユズトは先ほど地図を見たときに、一番近い平野にとりあえず行くことにした。
「目的地。グリマー。転移まで5、4、3……」
自動音声がカウントダウンを進めていく。
「2、1、転移開始」
今度は目を閉じずに、ただまっすぐだけを見ていた。
視界は一瞬で外の世界へと変わった。
それも、青々とした平野に。
そして、そこでは多くのランカー達が危険生物と戦っていた。
危険生物といっても、ここにいるのはウサギぐらいの弱々しい小さな生き物だったが。
ユズトは流石に人が多すぎると思い、人が少ないところを目指して歩き出す。
周りでは残虐な光景が繰り広げられていたのをなるべく無視するように。
歩きだしてからしばらくすると、肩を急に後ろからポンポンと叩かれた。
ユズトは後ろを振り向くと、そこには青い目をした金髪の若い男性がいた。
「vg5gt684jtm?」
英語なのだろうか?
しかし、ユズトはなにもわからずに首を傾げる。
(そういえば、自動翻訳機、家に置いてきてしまったなー)
「jgg5tj7tjsj?」
その外国人はまだ何か言っているようだったが、やはりユズトには伝わらない。
(多分、英語だと思うけど、英語なんて物好きだけが受ける授業だからなー。俺も受けとけば良かったかな?)
そんなどうでもいいことを思っていると、その外国人は自分がつけている自動翻訳機をユズトに渡してきた。
ユズトはそれを受け取ると、すぐに耳に装着する。
「聞こえるか?」
ユズトは二回ほど首を縦に振る。
「自動翻訳機持ってきてないのか?」
ユズトもう一度頷く。
「ホテルの部屋にあると思うから、戻ったら見てみろよ」
「で、お前、外に来るの初めてか?」
ユズトは頷く。
「なんで分かったかって? そりゃー、お前のたどたどしさを見れば一目でわかるぜ」
(別に理由なんて聞いていないんだけどな)
「お前、今、なんの武器持ってんだ?」
ユズトは腰にぶら下げている小型ナイフを見せる。
「なんだ!? まだこんなしょうもねえもの持ってんのか?」
そう言う男の腰には刃渡りがもう少し大きめのナイフをぶら下げていた。
「まあ、いい。俺がこの世界のいろはを叩き込んでやるよ」
勝手に話してきて、勝手に話が進んだが、ある意味ユズトにとっては好都合でもあった。
「ついてきな!」
その男はそう言って走りだした。
ユズトもその男を追いかけるように走り出す。
しばらく走り、あまり人がいないところで、ようやくその男は立ち止まった。
「ここら辺でいいか……」
男はそう言うと、ウサギのような生物目掛けて指を指す。
「じゃあ、あのちっこいのを殺してみろ」
これからなにをするか、ある程度覚悟していたが、いざやろうと思うとなかなか動かなかった。
なかなか動かないユズトにしびれを切らしたのか、男はユズトの前でその小さな生物にナイフを突き刺す。
その生物からはドロリと赤い血が流れ出る。
「俺らは、これからこうしていかないと生き残れねえ。勝手に話を進めた俺も悪いが、お前がここでこういうことに慣れておかねえと3年後にはあの世行きだ。俺はこんな所で死ぬわけにはいかねえ。お前はどうなんだ?」
ユズトも答えは決まっている。
「死にたくない」
「え? 今、なんて言った?」
ユズトは耳に装着している自動翻訳機を男に返して、もう一度「死にたくない」と答えた。
男はニコッと笑い、向こうにいる小さな生物に指をさし、軽く背中を叩いた。
ユズトはゆっくりとその生物に近づき、目をつぶり、持っているナイフでグサリと刺し殺した。
補足説明します。
男が話している言語は英語ですが、ユズトがお馬鹿なわけではありません。
この時代では、自動翻訳機が遅延なく使うことができるので、多くの人がこの機械を利用しています。
普及率は今でいう各家庭に冷蔵庫があるかどうかというぐらいです。
そのため、外国語の勉強する目的意識が小さくなっていることがこの背景にあります。