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黍なしファンキー桃太郎 ~鬼退治説教道中~

作者: 橋 千有

 生まれた時から普通じゃなかった。

 何せ桃から生まれたんだからな。

 桃「尻」からじゃないぜ。

「桃」からだ。


 拾った奴も悪かった。

 何せ、芝しか刈れない爺さんと、洗濯好きな婆さんときたもんだ。

 生まれたのは、成人男性?

 とんでもない!

 桃から生まれた桃太郎は赤ん坊だった!

 おいおい、婆さんの垂乳根たらちねからは、一滴だって乳は出ねえぜ?枯れっ枯れの、カピカピだ。

 しかたない、婆さん、隣の年若い母親に乳を分けてくれるように頼んださ。

 そしたら、飲む飲む、桃太郎。

 その母親は、精も根も尽き果てて、ぐったり。それでも桃太郎まだまだ足りない。

 仕方なく、婆さんそのまた隣のちょっと年増の母親に乳を分けてくれるように頼んださ。

 これまた、年増のおっぱいを吸いつくす桃太郎。

 それでもまだまだ・・・・・。

 結局、桃太郎は、村中の母親のお乳をもらって、すくすく育った。桃太郎はその村の子供たちとは、全員乳兄弟ってことになったさ。


 最高だぜ、ベイベー

 白いおちちは、ミルキー

 おかげで俺はハッピー

 やわらかおっぱいは、ファンタスティック

 俺のハートは、ズキュンバキュン

 まさに気分は、ゴー・トゥー・ヘブン

 おっと、まずいぜ、生まれたばかり。

 まだまだ、天国にゃいかないぜ


 なんて、赤ん坊が突然歌いだしたんだから、村中大騒ぎ。

 桃太郎、一気に村一番の話題の人物に成り上がったさ。


 桃太郎、もりもり、もりもり何でも食った。

 体だって、他の子より大きいし、山を駆ければ2つ山越し、川で泳げば滝だって登る。

「お前、そんなに力が余ってるなら、木切るの手伝え」

 そう言ったばっかりに、裏山は、半分禿山になっちまった。

 神社の祭りの相撲比べじゃ、子供の中には敵うものなし。

「すごいぞ、すごいぞ、桃太郎!もっと、投げろ、もっと引き倒せ!お前が勝つたび気分が若返るぞ!」

 爺様、年甲斐もなく熱くなる。まるで自分の勝利のように喜びまくり。

 それ聞いて、桃太郎さらにパワーアップ。

 大人も平気で投げ飛ばし、


 絶好調だぜ、ベイベー

 見ろよこの腕

 上腕筋だぜ、マッスル

 俺のこぶしで一撃だ

 イノシシも追い越すぜ、ワイルドスピード

 熱く燃えるぜフィーバー

 油断するなよ、ブラザー

 投げ飛ばすぜ、叩き潰すぜ、来てみろよ

 俺に勝てる奴はいないぜ、ベイベー


 おっと、この桃太郎、ちょっと天狗になってるか?

 それなら天狗太郎だって?

 語呂悪!


「桃太郎!」

 そこへ通りかかった沢庵和尚が一喝!

「桃より授かった神秘の力を、無駄に使うでない」

「禿げた和尚ごときが俺に物言いか?」

「強さをはき違えるな。それは、力や速さや熱さではない」

「じゃあ、なんだというんだ?和尚に俺が倒せるか?」

「お前ごときはこの指一本」

「なんだと、笑わせるな」

「ならば、この指一本で倒せたら、わしの言うことに従うな?」

「お前のケツだって舐めてやる」

 沢庵和尚、右手の人差し指をゆっくりと前に出す。

「ケツなど舐めてほしくはないな」

「それは俺に勝ってから言え」

「もう、お前は負けているぞ」

「何?」

「まだ気づかぬのか」

 その人差し指を、桃太郎の眉間に向かってゆっくりとゆっくりと近づける。

 桃太郎、その指をじっと見つめる。

 その指に何があるのか?

 いったい、なぜ俺が負けているのか?

 この指には、どんな力が・・・・。

 全身からどっと汗。

 今まで味わったことのない緊張感。

 見れば見るほど、その指先が何やら得体の知れぬものに見えてくる。その恐怖感。

 いつの間にやら、和尚の指先は、桃太郎の眉間の一寸先まで近づいていた。それなのに、桃太郎は動けない。まるで金縛りにあったようだ。

 次の瞬間、和尚は、その指先で桃太郎の眉間を思い切りついた。

 電撃一発100万ボルト!

 桃太郎にはそう感じた。桃太郎はその場に卒倒。生まれて初めて泡吹いた。

 和尚は言った。

「桃太郎を神社の書庫に閉じ込めよ。そこにある書物をすべてそらんずるまで出すことあたわず」


 こうして、いく年月流れ去り、桃太郎のことを皆忘れかけたころ、神社の書庫の扉が開いた。いつ扉が開くかと待ちわびていた爺さん、婆さんが駆け寄る。

「爺様、婆様、俺が負けちまったばっかりに、2人に長らくさみしい思いをさせてしまいました」

 桃太郎が言うと、そのぼうぼうに伸びた髪の毛を触り、

「和尚に負けたことなどどうでもよい。こんなに髪が伸びるまで、和尚と約束したことよくぞ実践した。困難なことを守ることこそ真の強さ。わしも婆も、お前のことを誇りに思うぞ」

 爺さんが言う。

「ようやく開いたか」

 境内の切り株に腰かけていた沢庵和尚が立ち上がる。

 爺さんと婆さんは、和尚に頭を下げた。

「お前の過ちを正すことはできたか?」

 沢庵和尚が問うと、桃太郎は言った。

「力とは静なり、速さとは念なり、熱さとは内なり、強さとは情なり」

 和尚は笑顔になった。

「いずれ、しかるべき時に実践せよ。せざるは、得ずに同じ」


 桃太郎は、落ち着きを体得した。

 子供たちと遊んでも、傷つけることをしなくなった。

 困っている人がいると進んで助けた。

 何事もやりすぎず、節度を守った。

 そんな桃太郎に、和尚の言った「しかるべき時」が訪れた。


 折しも、大嵐が何日も続き、隣村の田畑は全滅。

 年貢の取り立ても厳しく、娘を売ったその金で、他の村から米を買って納めようかというほどに深刻な状況の中、鬼ヶ島の鬼が、近隣の村村を襲い、娘たちを連れ去っていったさ。

 一方、桃太郎の村は、まるで避けるように嵐が通り過ぎ、例年同様豊年満作。

 鬼ども、桃太郎の話を聞いたのか、桃太郎の村は鬼たちに襲われなんだ。

「桃太郎の神通力が嵐を追い払い、桃太郎を恐れた鬼どもも寄せ付けなかった。よかった、よかった」

 村人喜び、庄屋様も一安心。

 だが、村の大賑わいをよそに、一人隣村の様子を見に行った桃太郎。

 姉を奪われた子供たちの泣き声、年貢も納められず娘まで奪われた親たちの絶望と悲しみ。

 隣村の嘆きを、わが村の嘆きと同様に感じ取った桃太郎。

 村に帰って、爺さんと婆さんに言ったと。

「爺様、婆様、わたしは、鬼ヶ島に鬼を退治に行きます」

「お前ひとりで行くのかい?」

「他の者たちに迷惑をかけるわけにはいきません。和尚の言った、しかるべきとはまさにこのこと。わたしは、行かなければならないのです」

「でも、わしらには、鎧も刀も何もないぞ」

「鎧も刀も所詮は形。形あるものには限界があります。それでも見栄えを思うなら、鎧の代わりに『桃』の前掛けを、刀の代わりに木の棒を腰に下げていきましょう」

「そんなもので、鬼に勝てるのか?」

「その代わり、何か餞別せんべつをください。何か腹の足しになるものを。そうだ、婆様、黍団子きびだんごをわたしに持たせてください」

「黍団子?はて、黍団子とはなんぞや?」

 婆さん、ぼけたか、呆けたか?


 分からないのか、ベイベー

 知らぬは恥なり、不甲斐ふがいなし

 それを強いるは、さらに恥なり

 ならば、出でよと打ち出の小槌こづち

 なければ、オール・ナッシング

 あるはあわひえ、黍はなし

 それならそれで、腹の足し

 食えりゃいいぜ、ハングリー

 婆様の手作り、デリシャス

 気の持ち方さ、ベスト・ユー・キャン


 てなわけで、婆さんが無い知恵絞って作り出した黍団子じゃない何かの食べ物を持って、桃太郎は旅立つこととなった。

「ほんとに、そんなものでいいのかい?」

 婆さんが、不安そうに聞く。

「婆様のありがたい気持ち。これさえあれば、千人力」

「鬼は多いぞ、大鬼はでかいぞ」

 爺さんも、心配になって言います。

「強さとは、数ではありません。力とは大きさではありません」

 そう言って、爺さんと婆さんに笑顔を残し、桃太郎は一人旅立った。


 さて、道行きながら、婆さん作った謎の食い物、頬張る頬張る。

「うむ、これは他の者には食べさせられんな」

 そう言いながらも、いやな顔ひとつしない桃太郎。

 と、そこに、一匹の大きな犬が。

 毛並みは良く、肩幅があって、いかにも頼もしい犬構え。

 ところが、その後ろから、その犬より小さな野良犬が何匹も追ってきた。大きな犬は駆けだしたが、遅い、遅い。あっという間に、野良犬たちに取り囲まれ、

「やーい、やーい、足ノロワンコ!体格だけの、ノロワンコ!」

 野良犬たちの罵詈雑言ばりぞうごんに、大きな犬は大声で吠えたてます。その声の大きいこと!

「大声で吠えたって、怖くないぞ!声だけでかい、声デカワンコ!」

 大きな犬は、それでも、吠え続けます。

「おい!同じ仲間じゃないか!そんなにいじめるのはやめろ!」

 それを見ていた桃太郎、たまらず思わず駆け寄ります。

 木刀に、赤い前掛け「桃」の文字。

 ちょっと見た目には、ぶっ飛びファッションの明らかにアブないアンちゃん。

「なんか、変なのが来たぞ!逃げろ逃げろ!」

 野良犬ども追い払えて、喜んでいいのか、それともバカにされたのか。そこには、大きな犬と桃太郎だけが残されて、

「どうして、あんな小さな犬どもに言わせっぱなしだったのか?」

 桃太郎が問うと、

「あの犬たちの言うとおり、わたしは、体格だけでノロマなのです。声は大きくても、飛び掛かる勇気がないのです」

「足が速いばかりが犬ではない。飛び掛かるばかりが犬ではない」

「わが主もそう申しておりました。弱い犬ほど逃げ足が速い。勇気のない犬ほどキャンキャン吠える。お前は、屹然としてそこに構えておればいい。吠えるときは、一声山の向こうまで響かせろと」

「理を知るよい主だな。ぜひ、お会いしたいもの」

「主は、先だって亡くなってしまったのです」

「おお、それは無念なこと」

「野良犬どもは、わたしと主が散歩しているときはいつもおとなしくしていたのです。その主を失った途端、あのように。あの犬どもは、わたしではなく、主を恐れていたのです」

「よいか、恐れで従えても、それはいずれさらに大きな恐れで抑えつける者を生み出すのみ。過ちは始めたら、どんどん大きくなるもの。勘違いするな犬よ」

 桃太郎は、犬の面構えを見た。

「立派なあごだ。そのあごなら、噛む力はあの野良犬どもの数倍、いや数十倍あるやもしれん」

「噛む力など、何の役に立ちましょう。犬は野山を駆け回ってこそ犬なのです。足ののろい犬など何の役も立ちません」

「わたしはそうは思わんぞ。犬よ。ここでこうしていても仕方がない。よし、ともに新しい主を探しに参ろうではないか」

 しばらく行くと、キャンキャン声が聞こえたと。

 見れば、さっきの野良犬の一匹が、野良犬狩りの縄にからめとられて泣いていたさ。

 周りの野良犬は、なんとか縄を噛みちぎろうとするが、縄の頑丈さに歯が立たぬ。


 きたぜ、ベイベー

 噛む力だ、バイツ

 決めろよ、お前の気持ち次第

 お前を馬鹿にした仲間たち、アス・ホール

 亡き主に誇れるか、プライド

 今を逃せばもうないぜ、チャンス

 実践できるか、ドゥ・ザ・ライト

 期待に応えろ、ルーザー

 勝ち取れるかはお前次第

 眩いばかりの、本物の価値を


 見れば、野良犬狩りの罠を見に、狩人の姿がもう見えている。今すぐやらねば、からめとられた犬は狩人の餌食。

 犬は、桃太郎を振り返った。

 うなづく桃太郎。

 犬は飛び出し、頑丈な縄にかみついた。

 首を左右に振り、引っ張り、噛みちぎる。

 強靭なあごが、みるみる絡みついた縄をほどいていく。

 キャンキャン泣いていた野良犬が、絡みついた縄から逃れ体の自由を取り戻す。

 周りの犬たちが、その犬の周りで喜び飛び跳ねる。

 野良犬たちは、一斉に大きな犬の方を見た。

 そして、無言でその場から逃げ去った。

「犬よ、あれなる狩人なら、お前の体格を見て新しい主になってくれるかもしれぬぞ」

「そういうあなた様は、これからいずこに?」

「わたしは、村を苦しめる鬼を退治に鬼ヶ島へ」

「ならばわたしをそのおともに」

「おともにと言っても、わたしに黍団子の持ち合わせはないぞ。お前に与えられるものは何もない」

 桃太郎は、婆さんの作った黍団子でない何かの入った巾着きんちゃくをちらりと見て言う。

 これを食べさせたら、卒倒してしまうぞ。

「いいえ、わたしはもうあなたから与えられました」

「何を?」

「自分の価値に対する誇りです」


 桃太郎は犬と連れ立って、鬼ヶ島を目指す。

 しばらく行くと、サルの群れがいた。

 桃太郎と犬の前を遮るサルの群れ。

「ここを通してほしくば、何かを置いていけ」

 ひときわ体の大きなサルが言う。

「何かを置いて行けと言われても、分け与えられるような物の持ち合わせはない」

 桃太郎が言うと、

「その腰の巾着袋。中に何か入っているな。それを置いていけば通してやろう」

「この巾着に入っているのは、婆様の心。わたしには大事な物でも、他のものにはとても耐えられぬものだ」

「お前にとって大事な物なら、きっと価値あるものに違いない。それでよいからよこせ」

「いやだと言ったら?」

 突然、一匹のサルが飛び掛かってきた。

 鋭い爪で、桃太郎をひっかこうとする。

 その時、犬が桃太郎の前に飛び出した。

 犬がキャンと吠えて、地面に倒れる。

 そのサルの爪は、犬の眉間を切り裂いた。

 サルが、にやりと笑う。だが、その一瞬の油断が命取り。

 犬は眉間の傷をものともせず、立ち上がるやサルの両手を抑え込み、その顎でサルの頭部に噛みつこうとした。

「待て!」

 桃太郎の言葉に、犬は噛むのをとどめた。

「放してやれ」

 犬は、その桃太郎の言葉に従い、サルを解放した。

 と、その時、もう一匹のサルが、桃太郎の背後から群れの方に駆けていく。

 そのサルは、桃太郎の巾着を持っていた。

 桃太郎が腰を見ると、ぶら下げていた巾着がない。

「盗んだな!」

 犬が、サルたちの方を見て一声吠える。

 巾着を取ったサルが、にやにや笑いながら、その中から黍団子ではない何かを取り出して、口に入れる。

 途端に、その何かを吐き出す。

「なんじゃ、こりゃ?」

「それが婆様の心だ。それで、ここを通してくれるのなら、置いていこう」

「こんなもん、いらん!」

 サルは、巾着を投げて返した。

「お前たちはこれを置いていくなら、ここを通すと約束した。その言葉通り、わたしはこれを置いていくと言った。それをお前たちが自ら放り出したのだ。ここは、通してもらう」

 桃太郎と犬は、そう言うと、サルたちの群れを割って、そこを通り抜けた。

「全くなんと欲深いサルどもでしょう」

 犬が言うと、

「欲が先に立てば、必ず痛い目に遭うもの。因果応報。あれで、サルたちが少しでも学んでもらえれば、それでよい。それより、眉間の傷は大丈夫か?」

「あれしきのひっかき傷では、わたしはびくともしません」

「何と頼もしいおともよ」

 その山で、一晩越した犬と桃太郎。

 翌日、なお山を進んでいくと、何やら先が騒がしい。

 見れば、昨日のサルが、木の穴に手を突っ込んで暴れていたさ。

 いやいや、突っ込んでるんでなく、引っこ抜こうとしてたんだ。

 周辺には、群れのサルたちが、冷めた態度でそのサル見てる。

「どうしたんだ?一体何が起こっているんだ?」

 桃太郎が、サルたちに呼びかける。

「あの木の穴に、鳥たちが木の実をため込んでいるんだ。それを知って、皆あの木に殺到。だが、あのサルが一番乗り。皆が登ろうとするのを邪魔して、木を独り占めしたんだ。それで、木の穴に手を突っ込んだら抜けなくなっちまった。ざまあみろ、だ」

 群れの一番外側にいたサルが、冷たく言い放つ。

「抜けねえよ、手が抜けねえよ!痛えよ!手が引きちぎれそうにいてえよ!誰か助けてくれよ!」

 手が抜けないサルは、痛みで顔をくしゃくしゃにしながら、子供のように泣き続けたさ。

「あんなに痛がっているじゃないか、誰も助けてやらないのか?」

 桃太郎が言うと、

「なんで、手が抜けないのか分からねえ。きっと神様のばちがあたったんだ。それを助けたりしたら、こっちまで罰のとばっちり受けちまう」

 サルが答える。

「罰が怖くて、仲間を見放すのか」

 桃太郎は、木の下に進み、泣き叫ぶサルを見上げた。


 笑っちゃうぜ、ベイベー

 欲に食われて、デザイアー

 独り占めでいい気分?

 そんな幻は、ファック・ユー

 沢山あることが幸せじゃないぜ

 分け合おうぜハッピー

 気付け、自分の容量

 簡単だぜ、ベイベー

 握った物を離すだけさ

 そのままじゃ重いだけだぜ、ヘビー

 ほら、軽くなればスマイル


 サルは、情けない顔で桃太郎を見下ろした。

「今握っている木の実は、お前の一人分だけか?」

 サルは、首を横に振る。

「木の実が欲しいのはみんな同じだ。お前が、今木の下にいるサルの一人だったらと考えろ。そうすれば、自ずとその手は抜ける」

 サルは、手で握れる限り握っていた木の実を離した。

 そして、木の下にいるみんなに等分に分けられる程度の木の実だけを手に取った。そして、恐る恐る手を引くと、するりと木の穴から手が抜けた。

 サルの泣き顔は、一気に笑顔になった。そして、木の下まで下りてくると、木の実を掴んだ手を上にあげ、

「みんな、この量だ。これなら、手が抜けなくなんてならないぞ!」

 群れのサルたちは、その量を守って、全員に木の実がいきわたった。

「サルよ、これで、お前は仲間からもう白い目で見られなくなるな。この山で、いつまでも仲間とともに幸せに暮らせるだろう」

「そういうあなた様は、これからいずこに?」

「わたしは、村を苦しめる鬼を退治に鬼ヶ島へ」

「ならばわたしをそのおともに」

「おともにと言っても、わたしに黍団子の持ち合わせはないぞ。わたしにあるのは、婆様の心。お前に与えられるものは何もない」

「いいえ、わたしはもうあなたから与えられました」

「何を?」

「自分の欲望をコントロールするための節度です」


 桃太郎は、犬、サルと連れ立って、鬼ヶ島を目指す。

 すると、開けた平原に鶴が佇んでいたさ。

 その佇まいの優美さに見とれていると、突然、草むらから何かが飛び出してきた。

 犬は吠え、サルは飛び跳ねる。

 それに驚き、鶴は飛び立つ。

 ゆったりと、優雅に大空に飛翔する。

 飛び出した何かは、地上すれすれに飛び、再び草むらに身を隠す。

 犬が草むらに飛び込み、飛び立つ何かをサルがつかむ。

 それは雉だった。

 犬が雉に噛みつこうとすると、

「待て!」

 犬は桃太郎を振り返った。

「雉よ、何ゆえ、草むらから飛び立った?潜んでおれば、気づかれぬものを」

「わたしは臆病者なのです。いつもビクビクして、何かが近づくとこらえきれずすぐ逃げ出したくなってしまうのです」

「それなら、こんな人目に付きやすい道端の草むらになぜ潜んでおった?」

「わたしは鶴を見ていたのです」

「鶴を?」

「あの立ち姿。わたしもあのように凛々しく美しくありたい。わたしのようにバタバタではなく、優美に羽を広げて大空を舞いたい。しかし、それはかなわぬこと」

「雉よ。生き物それぞれに、それなる形の理由がある。人には手がある二本足。犬は、牙だよ四本足。サルは木の上尻尾あり。鳥は飛ぶため羽がある」

「羽は大空を飛ぶためにあるのです。雉は地表すれすれを飛ぶ。しかも、そんなに長くは飛べない。このような羽に何の理由が」

「嘆くな雉よ。飛び方は個性だ。それを生かすも殺すもお前次第。臆病なのもお前の個性なら、すぐ逃げるのもお前の個性。それが役立つときは必ず来る・・・。サルよ、雉を放せ」

 サルは、掴んでいた手を放したさ。

 と、そこへ、鶴の大群が平原に舞い降りた。

「おお、この平原は鶴には楽園と見えるな」

 と、その時犬がクンクン鼻鳴らす。

「この匂いは、どこかから狐の匂いがするぞ」

「狐!狐、どこどこ?」

 狐は、雉の天敵。相手の場所も分からず飛び立てば、かえって命とり。雉はその場でバタバタ、怖くて居ても立ってもいられない。

「安心しろ、この匂いなら大方向こうに見える草むらあたり」

 鶴いる向こうの草むらまでは、遠い遠い、ほど遠い。

 それ見て、雉は一安心。

 と、草むら揺れて、何か出る。狐だ、狐だ、案の定。

 その黄色の鋭い瞳。雉など見ていない。

 狙うは、鶴のみ。飛び出す寸前。

「あれは、鶴を狙っているぞ。このままでは鶴は狐の餌食」

 桃太郎が言う。

「だが、ノロマのわたしの足では間に合わない」

 犬が申し訳なさそうに桃太郎に言う。


 今この時だぜ、ベイベー

 飛び立てよ、フライ

 鶴は優美だ、美しい

 だけど、ゆっくり弱弱しい

 雉はバタバタ、やかましい

 だけど早いぞ、突っ込むぞ

 一気に加速だ、レッドゾーン

 臆病者、チキン

 逃げ回るぜ、かく乱するぜ、チート

 個性は能力、アビリティー

 信じろ自分を、ビリーブ

 叩き壊せその壁、

 乗り越えろバッド・フィーリング


 雉は、それを聞いて草むらから飛びたった。

 雉が飛びたちゃ皆驚く。

 鶴も同じだ。

 一斉に飛び立つ鶴の群れ。

「チッ!」

 優雅な姿はゆっくりとはばたけど体はすぐ浮かぬ。

 それ見て、狐が草むら飛び出す。

 遅れた雛鶴ひなづる、必死の羽ばたき。

 絶体絶命、雛の危機。

 狐ニンマリ、飛び掛かる。

 途端に衝突、横倒し。

「なんだあ!」

 起き上がった狐の目には、飛び去る雉が。

 雛はといえば、親鶴と同じ高さまで舞い上がっていた。

 一方、雉はそこまで飛べず、長くも飛べない。

 それを知ったる狐、雉を照準に据える。

 雉は限界、飛行距離。平原の真ん中に降り立つ。

 狐、すかさず襲いかかる。

 すると、身をかがめたる雉、勢いをつけ真上に舞い上がった。飛び上がる狐、されど雉の高さに全く届かない。雉は水平には高く飛べずとも、垂直になら素早く高く飛べるのだ。

 雉は空中でターンすると、狐の追いつかぬスピードで、力強く地表すれすれを滑走した。せわしなく羽をバタつかせながら。

 狐は、2度も雉にしてやられ、怒り心頭。

 必死の思いで追いすがる。

 雉の飛び込んだ草むらに狐も飛び込む。

 途端に、狐は草むらから飛び出してきた。

 背中に乗ったサルが狐をひっかいている。

 サルが狐から飛び降りると、それに続いて犬が飛び出す。

 牙をむき出し、一声吠える。

 その吠え声のあまりの大きさに、戦意喪失。

 狐は、そそくさと平原を逃げ去った。

「見たか、雉よ。これがお前の能力だ。空高く飛べずとも、長い距離を飛べずとも、お前の憧れを見事に救って見せたではないか。臆病こそ力。怖がるから必死で逃げるのだ。恐れるから全力が出るのだ。自分を卑下する考えは、今日を限りで捨て去って、新たな気持ちで生きるがよい」

「そういうあなた様は、これからいずこに?」

「わたしは、村を苦しめる鬼を退治に鬼ヶ島へ」

「ならばわたしをそのおともに」

「おともにと言っても、わたしに黍団子の持ち合わせはないぞ。お前に与えられるものは何もない」

「いいえ、わたしはもうあなたから与えられました」

「何を?」

「どんな時でも、自分の個性を最大限に引き出せる勇気です」


 いよいよ、海を渡って鬼ヶ島。

 木刀腰に、腹に光るは「桃」の文字。

 連れは、犬、サル、雉のみ、他はなし。

 黒い岩屹立し、足場なし。

 ぐるり回れば、白浜の海岸。

 そこだけ、まるで楽園のよう。

 櫂船乗り付け、砂を踏む。

 桃太郎、砂を手に取り、指ざわり、一口舐めて、舌触り。

「よし」

 桃太郎、言うや巾着に浜砂詰める。

 三匹と一人は、鬼ヶ島の奥へと踏みはいる。

 両側に切り立つ高い崖。

 一人と三匹が横一列でようやく歩けるほどの狭い道。

 何とかそこを通り過ぎると、次には溶岩流れる赤い川。

 踏み外せば、一巻の終わり。

 そこも何とか通り過ぎる。

 すると、聞こえるどんちゃん騒ぎ。

 見れば、盆地に無数の鬼が。

 盆地の中央、燃え立つ大焚火

 赤き炎に照らされて、踊り、脅され、娘たち。

 鬼たちにこずかれながら、手踏み、足踏み、必死の舞い。

「ご主人様、いかがしますか」

 犬が尋ねる。

「まだだ。娘どもには申し訳ないが、鬼どもが酔いつぶれ、焚火の炎がついえるまで待つのだ」

 月が真上にかかるころ、鬼どもは酔いつぶれ、焚き火の薪をくべる者もいなくなった。薄暗がりの中、鬼どもは高いびき、娘たちは明日のわが身を思い、身を寄せ合ってしくしく泣く。

 すると、そこにいつの間にやら、「桃」の前掛け、木刀下げた冗談のような少年が立っていた。

「あなたは?」

「わが名は桃太郎。あなた方を救い、鬼どもを退治に参りました」

「わが父は?村の皆は?」

「ここに来たのは、わたしと、犬、サル、雉の三匹のみ」

「鬼はこれだけいるのです。それだけではとてもかないません」

「強さは数ではありません。それより、あなたたちがけがをしないよう、今のうちに盆地をそっと出るのです」

 桃太郎はそう言って、娘たちを砂浜に連れていき、岩に開いた洞穴に隠した。

「さて、これで準備はととのった。わが頼もしき、しもべたち。もはや、勝利は固まった」

 桃太郎が、宣言す。

「それは何ゆえに?」

「勝つか負けるかは、数ではない。志のあるやなしや。我らが崇高な魂には、十万、百万の鬼でも敵わぬ。よいか。盆地に降りたら、三方に散らばれ。わたしも含めて、四方から攻めるのだ。わたしが雄たけびを上げたら、それに答えよ。声続く限り吠え続けよ。腕千切れるまでひっかけ。鬼どもの間を飛びまくれ。そして突っつけ」

 一人と三匹は盆地に降り立った。

 焚火の残り火はわずか。

 暗闇にかすかな赤が残る。

 四方についた、一人と三匹。

 桃太郎がときの声を上げる。

 その声に一部の鬼が目を覚ます。

 声のした方を見ると、後ろから犬の遠吠えが。

 右からは、キーキー甲高い声、左からはケーンケーンとやかましい音。

「何だ、何だ?」

 暗闇が濃く舞い降り、ほとんど見えぬ闇の中、混乱する鬼たち。

「いて!何かが噛んだぞ!」

「ギャッ、引っかかれた!」

「うわ、何かが突っついた!」

 鬼たちは、こん棒持って応戦するも、酔っていては手元が狂い、空振り、すっぽ抜け、同士打ち。

 犬は噛み、サルは引っかき、雉は突く。

 その間も、犬、サル、雉、桃太郎の声が盆地に響き渡り、まるで、大群が一気に押し寄せてきたかのよう。

 あれだけいた鬼ども、夜明けまでには、もう動ける鬼は一匹も残っていなかったさ。

 その場にいた鬼の総大将が、朝日を浴びた敵の姿を見て、

「ほかの奴らはどこへ行った?」

 それに答える桃太郎。

「ここにいるのがすべて、他はなし」

「何だと、これだけの者共にやられたのか」

「降参すれば、命だけは助けてやる。どうだ、降参するか?」

「ばかめ。鬼ヶ島にいる鬼が俺たちだけだと思ったら大間違いだぞ」

 その時、突然地面が揺れ始めた。

 朝日を遮る巨大な影。見れば盆地の縁に、村の大ケヤキを超すかと思うほどの大きな鬼が。

 大鬼が盆地に降りてくる。大鬼が動くたびに地面が揺れる。

「犬、サル、雉よ、盆地を登れ!ここで戦うには、あの大きさでは狭すぎる!逃げ場を失うのは我々だ!決戦は、この上だ!」

 そう言うと、桃太郎が率先して盆地を上る。

 雉が一番、サルが二番、三番目が桃太郎で、最後は犬だ。

 盆地の縁から離れる一人と三匹。

 すると、巨大な手が現れ、頭が現れ、大鬼も盆地を上ってきた。

「俺たちに降参しろだと?そんな体で、大鬼に勝つつもりか?」

 大鬼が、声を発すると空気がびりびり振動する。

「我々はあれだけの数の鬼を倒したのだ。お前も観念するがいい」

 こともなさげに言う桃太郎。

「俺の体が見えないのか?俺の力にお前たちがかなうはずがないであろう」

「力は大きさではない」

「なんだと?では、どうやって俺を倒すつもりだ」

 桃太郎は、巾着袋から砂浜の砂を掴み上げ、

「これだけだ」

 次の瞬間、雉が飛び立った。

 雉は、地表すれすれを飛ぶ。

 鬼は、片足で踏みつぶそうとするが、雉はすばしこくその足の下をかいくぐり、鬼の背後に回り込む。

 鬼が振り返ると、再び、足の下に向かって飛ぶ。鬼が足を持ち上げている間に、雉は再び鬼の股下を通り過ぎる。

「ぬう、こざかしい雉め!」

 足で踏みつぶすのに業を煮やした大鬼は、上半身をかがめて素手で雉を掴みにかかる。

 臆病者のクソ力。怖いがゆえのフルパワー。

 地表すれすれ、股下を通り過ぎた雉をつかむため、上半身を下に折り曲げる大鬼。ちょうど大鬼が、股下から後ろを見るような体勢になったときだ。

 いつの間にやら、桃太郎。

 いたのは、鬼の顔の真正面。

 桃太郎、してやったりのドヤ顔だ。

 先ほどつかんだ砂浜の砂で、大鬼に目つぶしくらわした。

「うぎゃっ!」

 大鬼は、叫び声を上げて目をつぶった。

「しみる、しみる!これは一体なんだ?」

「鬼ヶ島の浜の砂はただの砂ではないぞ。その砂は、良質な塩を含んでいる。海水の満ち引きでできた天然の塩だ。塩は舌で味わうものだが、目で味わった気分はどうだ?」

「くそう!しみてしみて目が見えん!」

 目をつぶされて、痛みに大鬼がもだえる間に、サルがその手を駆け上る。

 そして、巨大な手の指先までたどり着く。

 目の痛みの次は、かゆみだ。

「痒い、痒いぞ、目が痒い」

 そう言って、目をかこうとしたした大鬼は、近づけた指先に尻尾を巻き付けぶら下がっていたサルに目をひっかかれた。

「ギャッ!痛いぞ!指先に何かいるぞ!」

 その何かを掴もうとすると、サルは、他の指に飛び移る。

 目を開けられぬ大鬼。次々別の指に飛び移るサルを掴めない。

 そうしている間に、今度は足の踵に激痛が。

 犬が、その強靭なあごで噛みついたのだ!

「痛い、痛い!足が痛い!」

 更に、山をも越える犬の吠え声が、視力を奪われ、手の自由も奪われた大鬼を恐慌に陥れる。

 方向も分からなくなった大鬼は、赤い川へと近づいていく。

 いかな巨大な鬼といえど、溶岩の川に落ちたらひとたまりもない。

 あと一歩踏み出せば、大鬼は溶岩の赤い川に転落だ。

 と、その時、

「大鬼よ!止まれ!それ以上進むな!」

 桃太郎が叫ぶ。

 犬は噛むのをやめ、サルは指から駆け下りた。

 足の痛みがなくなり、指先の何かもいなくなった大鬼は、桃太郎の言葉に従いその場に止まった。

「降参するなら、その目が開くまで、わたしがお前の目となろう」

「俺の命を取らぬのか?」

「鬼ヶ島は、人の住めぬ厳しい島だ。だが、お前たち鬼がいることで、この島は生かされているのだ。その鬼の命を奪うことは、この島の命を奪うことに同じ」

「この島の命・・・・」

「今は黒い岩だらけの島だろうが、見よ、砂浜には、塩という宝が眠っている。鬼たちが住み続ければ、いずれ岩から花が咲き、山にも緑があふれるだろう。人間に鬼を滅ぼす権利はない。同時に鬼にも我々人間を滅ぼす権限などないのだ」


 取り戻せ、ベイベー

 荒ぶる魂

 吹きあがる怒り

 行き場のない力

 どこでねじ曲がった根性

 この黒い島に閉じ込められた熱情

 忘れてないか、感謝

 思い出せ、生きている意味を

 海を渡れば、グリーン

 澄み渡る空、川青し

 力で奪えば暴力

 怨みの応酬は永遠

 途切らせろ、因縁

 必要なのは融和

 真心を贈れば感謝

 決めるのは今

 ほら、もう見えているぜ

 栄光の道筋、グローリー


「感謝なんて言葉は、数千年間聞いてないぞ」

 大鬼が言う。

「だが、お前たちは感謝の意味を知ってだろう」

「当り前だ」

「ならば、お前たちは忘れているだけだ。感謝されるためにすべきことを」

「なら、俺たちはどうすればいい?」

「鬼であることを忘れろ。そして、踏み込むんだ。栄光への扉を開け放って」


 その日、村は大騒ぎになった。

 何しろ、大鬼は一人でなかった。

 50人以上の大鬼と、1000人以上の小鬼を引き連れて、桃太郎が犬、サル、雉とともに村に帰って来たのだから。

 娘たちは、一人として欠けることなく、無事家族のもとに返された。

「鬼たちは降参し、娘たちは無事帰された。鬼を罰することは、この桃太郎が許さん。鬼を虐げる者は、この桃太郎の鉄槌を受けるものと心得よ」

「じゃあ、なんでこんなに鬼を引き連れてきたのだ」

 村人が、恨みを込めて言う。

「鬼たちは、罪滅ぼしに、大嵐で使い物にならなくなった田畑を取り戻すために来たのだ。天災による困難を共に乗り越えるために、怒りを買うことを承知の上で、はるばる海を渡ってきたのだ。人々よ、我々は試されているのだ。自らの心に問いかけよ。鬼たちの高い志にこたえられる純粋なる魂を自分自身が持っているのかどうか」

 こうして、鬼たちと人間の共同作業が始まった。

 人間だけなら、何年もかかったであろう、田畑の再生を、50人の大鬼と、1000人を超す小鬼たちの必死の作業もあり、わずか数か月で完了した。隣村の年貢は、鬼ヶ島の浜でとれた良質な塩を売った金で米を買い、無事納めることができた。

「鬼様たちがいなければ、わたしたちはどこぞに売られてしまうところでした。こうして、家族と一緒にいられるのは、鬼様たちのおかげです」

 鬼たちが鬼ヶ島に帰る日、いくつもの村が合同で、鬼たちに感謝の祭りを催した。鬼ヶ島では、脅され、無理やり踊らされていた娘たちも、今日は、感謝の気持ちで、本来の華々しく活力にあふれた踊りを精いっぱい披露した。


 見ろよ、ベイベー

 喜びだ、プレジャー

 怨みなんていらない

 怖いもの、フィアー

 嫌なもの、ヘイト

 交わらなきゃ、トゥー・バッド

 受けいれれば、ノー・プロブレム

 生まれるよ、ホープ

 眠っているぜ、トレジャー

 咲かせろよ、フラワー

 与えあう感謝

 素晴らしいこと、ワンダホー

 今こそ言おう、あなたに

 マイ・グラティトュド 永遠に


 力とは、自分が動かずとも相手を動かすこと

 速さとは、そこへ行きたいと願う気持ちの強さ

 熱さとは、外へ出すものでなく内に秘めた活力

 強さとは、どのようなものに対しても慈しみを忘れぬ心


 黍団子などいらない。

 忘れかけた誇り、

 抑えきれぬ欲望、

 怖がるばかりの弱い心、

 それを乗り越えるのはアクション。

 せざるは得ずに同じ。

 誰かが、きみの背中を押す。

 そして、きみは開けるのだ。

 重く、分厚い、栄光への扉を。


最後までお読みいただきありがとうございました。

いやー、やっちまいましたね。

ファンキーを知らぬものが、ファンキーを描くとこんな感じになっちゃいます。恐れを知らぬ不届きものとお怒りでしょうが、どうか収めていただければ。

力だ、強さだ、様々な文献、様々な人が、その何たるかを説いていると思います。納得できるのもあれば、首をかしげるものも無数にあります。この物語もその一つ。それが、糧になるかどうかは、あなた次第。この物語の端っぱでも、あなたの背中を後押しする何かがそこにあればいいな、と心から願っています。


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