自転軸
先行する艦隊に、ミーリャ艦隊が追い付くときには、竜騎士団はほとんど片付いてしまった。
この時点で、既に斜影の世界における坊の岬沖海戦とは、展開が変わり始めた。
「千里薬で、エンノシマも見える。でも、ツン・ジマレの乗るコロセアム艦隊旗艦「ニョウ・タイン・ケイン」やそれに類する艦艇がいない。」
マリが言う。
マリのF‐4は、航空母艦に降りた。その方が何かと都合がいい。
「おい!貴様何やってる!」
「話があるんだよ!」
ドカドカと、斜影が殴り込んで来る。
(来ると思ったよ。)
マリは思うが、ミーリャは冷静だった。
「ミーリャ!お前死ぬ気か!?」
「いいえ。この世界では、戦いの場では、国の最高指揮官が先頭に立つ。斜影こそ、退きなさい。ここから先は、「長門」が先頭に立つ。」
「命令違反でぶっ殺すぞ!」
89式をミーリャに突き付ける。
「撃てるなら撃ちなさい。異世界サバゲーマー。」
ミーリャもM134を構える。
斜影が発砲。
だが、反応しない89式。
通常弾頭のBB弾を詰めた多段マガジンを装填しているが、ジャミングだ。
ミーリャがM134を発砲。
斜影が吹っ飛ばされ、艦橋の壁に衝突。
「斜影。心配なら、ミーリャ様のことを最後まで守りなさい。それが、今の貴方の本来の任務。ミーリャ様を残して一人で戦争介入は、それこそ命令違反よ。」
マリがスパス12を構える。
「痛え。防護眼鏡も付けねえ相手に弾幕って、こりゃ、ミーリャに従ったほうが、俺の身のためかも。それと、こっちが本題だ。」
斜影はミーリャに、シューレのポケットから落ちた運転免許証の破片を見せる。
「これは、俺の世界における自動車の運転許可証の破片だ。」
言いながら斜影も、自分の運転免許証を見せる。
「俺と大和艦上で戦った奴等は「異世界遠征隊」とか言っていた。そして、奴等の言う異世界が、この運転許可証がある世界だとしたら―」
「斜影の世界に、コロセアムが侵攻しようとしていると?」
「ああ。以前、北方へジェーニを助けに行った時、女神のえっと―」
「フェニコス様?」
「そうだ。フェニコス様の管理するこの世とあの世の道を見たよな。空にぽっかりと空いた、穴。あそこはこの世界と、俺が元居た世界を繋ぐ道だって言っていた。仮説だが、コロセアムはそれを通過する何らかの方法を手に入れて、俺の世界へ行こうとしているんじゃないか?」
ジェーニがそれに答える。
「天上世界の利用。その最大の謎というのが、私が幽閉されていた場所にあったこの世とあの世の道。現在、この世界の科学では、私たちの住むのは地球と言う惑星であり、それは太陽を中心に公転している。そして、地球が自転している事で、太陽は東から西へ移動しているように見える。地球の自転は、この世とあの世の道を中心に24時間で一回転している。それは分かっている。ただ、この世とあの世の道は、かなり高い場所にある。」
(ブラックホールを中心に一回転。今、この場に他の惑星の自転軸に何があるかが分らないのが欠点だが、もしその自転軸となるブラックホールが、意図的に地上面に現れたら―。)
「回転軸がずれる。地球の自転軸が少しずれたら、地球の気候は目茶苦茶になる。今は月があることで、安定はしている。」
「また、マリに読まれたか。」
「仮に小規模なブラックホールが現れたとしても、地球の自転軸は崩れる。もし、斜影の世界と、この世界が繋がっているとしたら―。」
「どっちも終わる?」




