コロセアム戦法
斜影がそれと知らずに、ヘッドショットで先頭にいた敵の指揮官を倒した事は、決して悪い事ばかりではなかった。
実際、指揮官を先に倒したことで、敵は混乱した。そのスキをついて、車両も破壊した事で逃げる手段も無くし、あっという間に警備隊が制圧してしまった。
だが、やはり指揮官を殺した事で、敵側の狙いと指揮系統については捜査が難航し、捕虜となった敵も下っ端で指揮系統までは分らないという状態である。
斜影とミーリャのところにも、適宜、捜査状況が伝わってくるが、敵側がこちらに進撃し始めているとあれば、こちらも対処しなければならない。
「さて、この場にあるのは3つの選択肢って事か。1つは敵が進撃したらその都度、それを排除する。2つは敵に好きにさせる。」
「3つは、こちらから進撃して敵を殲滅する。でしょ、斜影。」
「ああ。」
「だけど、敵の実態も解らず進撃すれば、連合艦隊の二の舞を演じる。今、こちらにある戦力は、連合艦隊が壊滅したおかげで、乏しいのだから。」
斜影にとってはそれがネックであった。
航空機こそあるが、海洋国家のジパング帝国を守る戦力は、沿岸警備用の小型巡視船以外には、戦艦「ヤマト」と軽巡洋艦1隻、駆逐艦9隻のみ残されたジパング帝国海軍主力艦隊のみだ。
例の、魔術師ブラウ率いる反乱分子が拠点とする島を空から急襲する作戦についても、兵員の訓練に時間がかかっている。
なにしろ、航空機という概念が無かった上、島の地形から、飛行船が着陸するのは不可能。
よって、飛行船やプロペラ機からパラシュート降下して島を急襲する空挺降下が良いとされたが、空挺降下は熟練の技術が必要であり、日本の陸上自衛隊でも、空挺部隊に入れるのはほんのひと握りのエリートだけだそうだ。
また、陸上自衛隊のCH‐47のようなヘリコプターも無い上、飛行船やプロペラ機には車両を搭載できる力は無いから、空挺戦車のような物も使えない。
要するに島を攻略するための部隊は、空挺降下した兵員だけになってしまう。
そこで、現在修理中のジパング帝国海軍の戦艦による火力支援が必要になると予想されるが、島に船は近付けない。
「八方塞がりだ。」
と、斜影は頭を抱えた。
「最初に斜影が言ったF‐4による空爆はどうしたの?」
と、ミーリャが言う。
「どこに砲台があるかが解らなければ、どこ爆撃すればいいか分らないよ。」
「千里眼って言う魔法があるわ。遠くの物を見るための魔法。これは斜影でも使える。お姉様が開発したばかりの千里薬って言う薬を使う事で、一定時間の間だけね。」
「なるほど。ちなみにここから島までの距離は?」
「おおよそ200キロ。」
「飛行船で飛ぶには一日仕事だな。プロペラ機も往復するには燃料ギリギリ。ならば、ちょっとマリに頼むかな。」




