目
斜影による後方からの狙撃支援で、敵部隊の一部人員を捕虜として捉えた、タンク率いる憲兵隊の部隊からの報告が国会議事堂に挙がってくる。
「コロセアム人の目は黄色であるが、彼らはジパング帝国やアイリス合衆国と同じ黒い目をしていた。」
と、そこに記載されていた。
「つまり、この国の人間ってこと?」
ミーリャがタンクに聞いた。
「はい。しかし斜影が―。」
タンクが言葉に詰まる。
「斜影が指揮官の頭を撃ち抜いてしまい、指揮官が死亡。指揮系統がとうなっていたかまでは、解らないかもしれません。」
ミーリャの隣りに控えていた斜影は、狙撃した敵を思い出す。
人に命中させたのは一回だけで、その後は人ではなく車を破壊した。
しかし。
「更に悪いことに、車も壊してしまったために、どちらの装備の車両だったかの捜査に手こずっております。」
とまで言われてしまった。
(レーザーガン。やり過ぎだと言うのか―。だったら元の仕様に戻してくれよ。)
ミーリャが斜影を見つめるが、その視線がかなり痛い。
斜影はどうすることも出来ず、後退りするが、マリに止められる。
「狙うべきは、車のタイヤだった。エンジンルームや燃料タンクを撃ってしまえば、そうなるでしょうね。」
「無茶言うな。あの場でそんなタイヤだけを狙撃するなんて無理だ。あんだけ距離が離れていては、対人狙撃銃でもない限り弾が散らばる。頭を撃ち抜いたのも、単なる偶然だ。」
ミーリャの顔がこわばる。
(ヤバイ。この状況、非常にまずい。)
この世界で斜影が先陣を切って戦闘すると、何かが起こってしまう。
マリとミーリャは斜影がこの世界に来た時、カトリーヌが言っていた事を思い出した。
「私は彼がこの世界の流れを大きく変えると思う。」
それは確かにその通りで、今、この国の中心にミーリャ達が立っているのも斜影による干渉が強い。
「やってしまったことは仕方が無い。斜影には、私からきつくお仕置きをしておきます故、そちらからあまり責めないで。斜影、この閣議が終わったら、私と来て。」
ミーリャが斜影の右腕を強引に掴む。
「ミーリャ様。あまり斜影にきつくしないでください。もし私が斜影であったのなら、私は敵兵を皆殺しにしたでしょう。敵兵は指揮官以外全員を捕虜にしましたし、車の残骸からも何か分かるかもしれません。ですから、きつい処分はしないでください。」
タンクが言うのが斜影に聞こえた。
ミーリャもそれに振り返り、
「ちょっと斜影にお仕置きをするだけ。処刑や牢獄へ投獄することはしないよ。」
と答えた。
(何する気だ。)
閣議が終わると、ミーリャはマリに首輪を持ってこさせた。
「斜影。やってしまったことは仕かたがない。でもね、やり過ぎは禁物よ。よって斜影には私のペットとして今から今日の就寝まで過ごしてもらう。」
(なんという屈辱!)
拘束こそされていないが、斜影は首輪を付けられミーリャに鎖で繋がれてしまった。
「ミーリャ。もしあのとき俺が何もしなかったらどうするつもりだったんだ?」
「そうしたら、もっときつい事をした。」
後を歩くマリが、
「戦略という物を考えろ、とミーリャは言っているのです。」
と、言った。
結局、斜影の首輪はこの日の就寝時間に外された。




