最終兵器、レーザーガン
改造を施したわけではない。
この89式5.56mm自動小銃は、アタッチメントと塗装が変わっているだけで、別に機能は変化無い。
元はグレー系の迷彩色の銃だが、これを、黒と緑を基調とした塗装にし、薄暗いフィールドで更に見つかりにくい塗装になっている。
しかし、どう考えてもレーザーガンに改造した覚えはない。
そもそも、そんな物騒な物をサバゲーで使用する機会は無いし、もし使用したらフィールドが吹っ飛ぶだろう。
そうすると考えられるのは、
「この世界に来てから変化したのだ。この銃だけが。」
と、斜影は分析する。
確かに、89式に限っては、電池の充電もせず、メンテナンスもせず、部品の劣化も無く、ここまで使用する事が出来た。
そして、デザートイーグル、スパス12を喪失したが89式だけは損傷も無く、むしろこの世界で銃剣装着等の改良が加えられた程だ。
「大切な人を守るための武器。」
と、背後から言われる。ジェーニだった。
「この世界に伝わる言い伝え。異界の人間は大切な人を守る武器を持って戦う時、武器は有らゆる状況に対して変化をし、大切な人を守るために戦う異界の人間はそれを携えて進む。」
「その言い伝えの通りだって言いたいのか?」
ジェーニは肯いた。
「大切な人を守る武器だと、自ら宣言したのでしょう?」
「そうだ。俺がこの世界に来て、ミーリャに「これは大切な人を守るための銃だ」って言った。」
「その瞬間から、もうその銃はただの銃では無くなり、魔法の力を経た武器となった。」
「俺はただ、こいつは自衛隊で使われているから、そう答えただけだってのに。」
「斜影。こうなったからには、その銃に恥じない戦いをしなさい。」
斜影は、89式を携えて物見櫓に登る。
日が落ちた町を、スコープを覗いて見る。
すると、スコープはサーモセンサーのようになり、熱源を捉えていた。
「レーザーガン。エアガンがこんなものに変化するなんて。俺があのとき、ああ言ったばっかりに。」
と、斜影は溜め息を着く。
スコープを覗いたまま。
そのスコープが、何かを捉えた。
海から上陸してくる1台の車。
道を歩く二人の女性に襲いかかろうとする車の男達。
(コロセアムの工作員だ!)
斜影は物見櫓の伝声管で、工作員らしき人員が上陸したと言う事を伝える。
「この距離。届くか―。」
車から降りたのは2人。相手は計6人で4人が車のドアを開けてニヤニヤしている。
スナイパーだった時の感覚が斜影に蘇る。
だが、サバゲーと違うのは、スコープが捉えている物が敵の命だということと、レーザーガンである事。
レーザーが出た時に装填していた、空の通常マガジンを挿入。
「これも、ミーリャを守るための行動なのか、そもそも、第三者から見た俺が守るべき、大切な人というのは誰なのだ。」
セレクターはセミオート。
息を止める。
引き金を引く。
細いレーザー光線が、夜の町に閃光を放って突き進む。
敵兵の首に命中。
頭部が吹っ飛ぶ。
次の標的。
何が起きたか解らず腰が抜けたのか、頭を抑えながらうずくまり、立ち上がれなくなっている。
良い的である。
引き金を弾く。
だが、その直前になって気が付いた。
もう一人の敵兵は、最初の敵兵を倒した弾が耳の近くを通過したために、衝撃波で顔を負傷した上、出血した血が目に入ってパニックになっているのだ。
慌てた残りの4人が車から離れる。
身方の警備隊が現場に向かっている。
(警備兵が来たら奴ら、車で逃走するだろう。この場合は捕虜を取るほうが良い。ならば―。)
セレクターをフルオートにする。
「無駄な人殺しは極力避ける。いや、避けなければならない。」
ビュンビュン!と、聞いたことのない不気味な銃声と僅かな空気を切り裂く音と共に放たれた光線が、敵の車目掛けて飛んでいく。
車に全弾命中。
車は爆発。
これで、斜影の出番は終わりだろう。
斜影はマガジンを抜いて、吐息を吐いた。




