艦隊消失
アイリス合衆国で製造された潜水艦と戦闘艦は、大洋をジパング帝国に向かって航行している。
そのはずだった。
だが。
「艦隊が消息を断った。」
と、知らせが入った。
艦隊には、切り札の潜水艦も含まれている。
理由は分からない。だが、反乱分子に強大な魔術師が含まれており、この魔術師が反乱分子の中心であるらしい。
軍の秘匿部の会合は、艦隊が一撃で消失した事で大騒ぎだ。
斜影もこの場にいた。そして、ミーリャも居る。
先の戦闘でミーリャに気付かれてしまったのだ。
婚礼儀式を受け入れた理由が、潜水艦にあったことまで。
「カトリーヌ様の艦が沈んだ時と同じような状況だ。」
と、ビスマルクが言った。
消失した艦隊から唯一生き残った小型輸送船の乗組員の記憶を読み取り、それを魔法で映像化する。
大型戦艦の前から後にかけて一気に亀裂が走り、大爆発。それに巻き込まれるように艦が損傷して沈んでいく。
運悪く浮上していた潜水艦も同様だった。
「魔術師、ブラウの術です。」
「ブラウ?」
「攻撃魔法の使い手。ジパングがコロセアムの言いなりだった時、アイリス合衆国の戦艦「アリゾナ」を一撃で撃破した功績で、前カミリア総統から賞賛されました。」
斜影は記憶を辿り、
「俺がカミリアを殺した時、レイプショーに突撃して皆殺しだったはずだろ?」
と、ビスマルクに訊く。
「はい。ですが、ブラウはアイリス合衆国工作員として、海の上にいたのです。おそらく、国に戻ってきた時の有様に愕然とし、謀反を起こしたのではと。」
斜影は頭が痛くなってきた。
なんだかんだで魔法攻撃を行う魔術師と戦って勝てたが、巨大戦艦を一発で沈めるような魔術師となると話は違う。
「あんまりこんなことを言うのもアレなのですが―。」
斜影は現状を包み隠さず言った。
スパス12は複製した物を更に複製した物しかなく、ハンドガンを失って近接戦闘には不向きなアサルトライフルとショットガン、そして火力こそ桁外れだがその分機動力を奪ってしまうM134しか手元に無い上、M134を使用すると弾薬があっという間に底を突いてしまい、戦う事が出来なくなる恐れがあると。
「弾薬が無ければどんな兵器も鉄屑と同じです。」
「限られた弾薬、圧倒的魔力を持つブラウ率いる反乱分子。そして、コロセアム。状況は芳しくないことだらけだな。」
兵器開発局長のロベルトは、現有する戦力と斜影の力を鑑みて言った。
「だが、何れにせよブラウを倒さなければ、またジパング帝国はコロセアムに支配されてしまうと。」
斜影が言うと皆が肯いた。
「ブラウの魔術についてだが、水上目標に対してのみ有効と考えてよろしいでしょうか?」
「ええ。ですが、奴は今、ここにいるのだよ。」
ビスマルクがジパング帝国の地図を指す。前述の通りジパング帝国は日本と同じような島国で、小さな小島もほぼ日本と同じである。
ビスマルクが示したのは、江ノ島のような場所だった。
「海から接近すれば、魔術で船は皆殺し。かといって陸から接近すれば―。」
ビスマルクは地図をなぞる。
「この島と陸のを結ぶ橋の両端は結界で塞がれている。なので、戦車等の車で接近するのは不可能。徒歩で接近すれば結界は抜けられるが、橋の上で挟み撃ち、もしくは橋すら渡れずに橋を落とされてしまう。そうなると泳ぐしか無いが、魔術で皆殺し、或いは鮫に捕食。この島の周辺には、巨大鮫が多数生息している。」
斜影はもう一度地図を見る。
(なるほど。海もだめ陸もダメ。近くの陸からホバークラフトのような物か、小舟で上陸を試みても同じこと。八方塞がり、いや待て。)
「ブラウの魔術は空には効力を発揮できますか?」
この世界では、空から攻撃するという常識は皆無に等しい事は、ジェーニ救出作戦で知っていた。
最近になって、飛行船や航空機が開発されるようになったのだ。
「微妙だが、あまり効力を発揮できないと思われる。」
斜影はミーリャに、マリをテレパスでここに呼べと言った。
「作戦を思いついた。だが、やれるかどうかは微妙だが。」




