潜水艦
ミーリャは、斜影が婚礼を行っても良いと言い出したのに驚いた。
斜影にその理由を問いただそうとするが、逆に斜影に「国防軍指令」という立場に置いてほしいと言われる始末だった。
斜影は婚礼儀式を行う日程を、潜水艦がジパングに配備された1ヶ月後にしたいと考えていた。
乗員の練度を上げておくためである。
そして、斜影はミーリャには内密で軍の秘匿部に所属していた。
(もう、人殺しは嫌だと言っている場合ではない。ビビっていては、俺だけではなく、皆が殺される。)
と、斜影は考えていた。
この日、斜影は軍の秘匿部の会合に出向く。
ミーリャに見つからぬよう、国会議事堂を出る。今、ミーリャ達カトリーヌ邸の者は、国会議事堂内部の首相官邸に住まいを移している。それに伴い、斜影の自転車やエアガンもこちらに移してあった。
斜影は自転車にまたがり、エアガン用のリュックにスパス12を入れて会合の行われる場所に向かう。
夜遅いため、ライトを点灯させ軍事基地へ入る。
会合が行われるのは、軍港の奥まった所にある地下会議室だ。
一見するとただのプレハブ小屋のようだが、扉を開けると地下への階段があった。
斜影が会議室に踏み込むと、如何にも軍事機密の塊のような人々がいた。
その中に、ビスマルク、タンクもいた。
「こんな場所に君が介入するとは、この国も大分落ちぶれたな。」
と、ビスマルクが言った。
「ビビっていては、俺だけではなく、皆が殺される。」
斜影が言い、スマホを起動させる。
「会議前に一発、音楽でも流して景気付けと行こうか。こんな軍事機密の塊の中では、ピリピリしてロクなことにならん。」
と言いながら流すのは、「残酷な天使のテーゼ」であった。
アイリス合衆国海軍遠征艦隊司令のダグレスが会議を始めると言い、会議が始まった。
「今、アイリス合衆国海軍で建造中の新造艦の艦種は、潜水艦とする事が決まった。よって、以降は潜水艦と呼称する。そして、潜水艦の設計図はこれだ。」
ダグレスが一枚板に潜水艦の設計図を張り付ける。
(あっ。しまった。この世界の潜水艦は、海上自衛隊のそうりゅう型や米軍のオハイヨ級原潜のようなものじゃない。せいぜい、伊号潜水艦程度の物だった。)
と、斜影は思ったが案の定、一見すると旧日本海軍のイ号潜水艦のような形だった。しかし、これは伊号にしては大きい。
(伊‐400潜水艦。いきなりこんな物が―)
この潜水艦は、旧日本海軍で潜水空母とも呼ばれた大型潜水艦、伊400型に類似している。
「この潜水艦には、航空機を2機搭載。魚雷発射管は4本で魚雷の装填数は20本。」
ダグレスはこの潜水艦3隻をジパングに配備するという。
(おい。日本海軍で就役した伊400型も3隻だった。偶然の一致か?)
斜影はつい気になって、
「先の海戦で生き残ったのは何隻だ?」
と聞いた。
「先の海戦で生きて帰ってきた船は戦艦6、重巡洋艦7、軽巡洋艦2、駆逐艦25です。」
そのうち、使えるのは軽巡洋艦1と駆逐艦8であり、戦艦に至っては、ジパング帝国の「大和」しか使い物にはならないと言う。
(まさか―。)
と思い、斜影は生き残った船について詳しく調べる。
軽巡洋艦は「矢矧」に類似した物。
駆逐艦は秋月型に類似した物が2隻。
陽炎型に類似した物が3隻。
夕雲型に類似した物、初春型に類似した物、朝潮型に類似した物がそれぞれ1隻ずつ。
(これは坊の岬沖海戦に参加した日本海軍第1遊撃部隊と同じだ。これも偶然の一致と言うのか?)




