婚礼の用意
斜影の知らないところで、斜影の望まぬ婚礼儀式の用意は着々と進んでいた。
町に、ミーリャの婚礼を知らせるビラが貼られはじめ、日程の調整まで始まっている。
そして、再びアイリス合衆国に赴いていたジェーニが発明した乗り物でも、デモンストレーションを兼ねて告知が行われていた。
水素ガスを詰めた飛行船。そして、プロペラ機である。
ついにこの世界にも、航空機という物が生まれたのだ。
しかし、斜影は問題の解決していない状態で婚礼を行いたくないと考えている上、他にも懸念材料があった。
飛行船の燃料である水素は、非常に燃えやすく、コロセアムの魔法攻撃の一発で爆発する恐れがあるのだ。
そして、婚礼儀式となれば必ず多くの人が詰め掛ける。民衆も閣僚も。そうなれば、コロセアムにとって、民衆や閣僚を一網打尽に出来る格好の標的になってしまうだろう。
だが、ジェーニは更にもう一つ、ある物を開発していたのだ。
そのことについて、ジェーニは斜影と二人きりで話したいと、斜影と風呂に入る。
「何のつもりだ。混浴しなければならない事か?俺は不倫するつもりも、今婚礼儀式をするつもりも無い!」
ジェーニは浴槽に潜ると、斜影の足を引っ張った。
「何をする!」
浮上したジェーニは、
「水の中から攻撃する事が出来る物を作った。」
と言った。
「まさか、人魚でも操って船を海底へ引きずり込もうとでも?」
首を横に振る。
そして、また潜ると、今度は足をくすぐってまた浮上。
「今の私、見た?」
斜影は余計に分らなくなる。
「海の中に潜れる船を作った。」
「潜水艦ってやつか?」
それが正解だったようだが、潜水艦という物が何か、ジェーニには解らなかったようだ。
だが、斜影の世界でも潜水艦は核兵器に次ぐ脅威である。
海の中に潜られてしまえば、イージス艦でも無ければ対処は難しい。
しかし、肝心の潜水艦そのものは、今、アイリス合衆国で建造中であり、ジパング帝国に配備されるのは2ヶ月後になりそうだった。
「せめて、婚礼儀式は潜水艦が来てからの方が安心できる。もし、敵国が婚礼儀式の日を狙って上陸しようとしたとき、潜水艦があれば待ち伏せて魚雷でボコボコに出来るし。」
「飛行船や飛行機から空爆もあれば返り討ちに出来ると?」
「そういうこと。潜水艦があれば、婚礼儀式を餌に出来るし。」
「婚礼儀式を餌にね。」
「恋愛と戦争においては、手段を選んでいる暇はないからね。」




