戦いのプロ
「そんなのでよくプロになれますね。」
と、斜影の元居た世界でバイト初日に言われた理不尽な罵声を思い出す。
斜影がその翌日にサバゲーでまた暴走したのは言うまでもない。
(プロって何なんだ。)
斜影が歯を食い縛る。
カトリーヌをぶっ飛ばした時、斜影は、理不尽な罵声と同じ罵声をカトリーヌにぶつけた。
「斜影。斜影こそ、戦いのプロと思っているの?」
再び開始した戦闘訓練の相手になっているマリが言う。
「考えが甘い。甘すぎる。」
マリが背後に回り込んで言う。
斜影は慌てて振り返るがマリの空砲が早く、おまけに斜影はバランスを失い茂みに突っ込んだ。
「口ばかり達者なトーシロね。全くお笑いよ。ゲームと戦争は違うのよ。」
「人が死ぬか死なないかだろ?」
マリは溜め息をついた。
「多くのゲームは攻略法がパターン化されている。サバゲーだって、参加人数によるけど、攻略法は数通りのパターン化されている場合が多い。でも戦争はその場その場に置いて違う攻略法、兵力差、そしてこの世界の魔法攻撃。まず攻略法がパターン化されている事は無い。斜影だって、この世界の町や海岸線で戦った時、サバゲーのような攻略法が通用した?」
「―。」
斜影は立ち上がった。
顔に切り傷を負った。
傷の場所は額で、出血している。血が顔を伝い、目に入る。
「衛生兵を呼ばないのね。」
「呼んでも来やしないから。俺の夢を覗いたのなら、解かるだろう?」
斜影はポケットの中の絆創膏を張る。もう、元の世界から持ってきていた絆創膏は無く、複製した物しかない。
訓練終了後、ミーリャと出会した。
ミーリャは斜影が顔に怪我をしているのを見て、直ぐに風呂に入れと言った。
言われた通り斜影は風呂に入る。
(どうせ―。)
と思っていたら案の定、ミーリャも入ってきた。
(こいつら、よく躊躇いも無く人が風呂入ってるところに入ってくるよな。)
斜影は溜め息をついた。
「斜影こっち向いて。」
ミーリャに言われた通り、顔をミーリャの方へ向けると絆創膏を剥がした。
「痛えな!テメエ何するんだよ!」
「暴れない!」
ミーリャは斜影の顔の傷に、自分の石鹸を塗る。
(そういうことか。)
ミーリャの石鹸は、身体の傷を治して肌をキレイにする成分が含まれている。斜影が元居た世界で負った傷も、この石鹸を使用した際に消えてしまっていた。
今、ミーリャが石鹸を塗った部分の傷も、すぐに消えてしまった。
「ミーリャ。プロってなんだと思う?」
浴槽に浸かった時、思わず、斜影はミーリャに聞いてしまった。
「私も分らない。でもね、他人に対して「そんなのでよくプロになれるね」って言う人は、プロじゃない。なぜなら、何も分かっていないクセに、自分の中でプロの基準を勝手に決めているから。でもね、所詮は無知だから、自分が逆の立場になると何も出来ない。斜影。斜影だってそうよきっと。」
ミーリャが隣で言う。
ミーリャは、斜影と比べると若干背が高く、大人びている。端からみれば、姉弟にも見える程だ。




