婚礼儀式
更に悪いことが続く。
カトリーヌは攻撃を受けた際、肩に魔法の傷を負ったらしい。
かなり深い傷だった。
そのため、せっかくジパング帝国総統に返り咲いたにも関わらず、政権を他に委ねざるを得なくなってしまった。
手っ取り早く、臨時政権中に総統を務めることになったミーリャが、そのまま政権を引き継ぐという形になったが、政権を引き継ぐ場合、独身だと権力を自分の物にしようとする輩が上手い事を言って総統と結婚して政権を奪うということも発生しかねないという理由で、政権を引き継ぐ者は既婚者でなければならないという規則があった。
臨時政権に限ってはこの限りではないと言うが、このままではミーリャが正式に政権を引き継ぐ事になるだろう。
斜影が、マリを相手に格闘戦や銃撃戦の訓練をしていた時、マリはこの話をし、そして話が終わった時にタイミングよく、ミーリャや、官僚達がやって来た。
案の定、急遽総統として政権を引き継ぐことになったミーリャとの婚約者という立場でもあった斜影とミーリャの婚礼儀式をすぐに行うと言う物だった。
「そうですか。」
と、斜影は言った。何れにしろ、婚約者ということになってしまっている以上、いつかは婚礼儀式を行うということに変わりはない。
(皇族と婚約をした会社員になった気分だ。)
斜影は思った。
ミーリャは不安げな顔をしている。
斜影はその理由として、いきなり結婚することになり納得していないと思っているためだと思い、思わず、
「ミーリャは、このことに納得しているのですか?」
と、婚礼儀式を担当することになった閣僚に聞いた。
閣僚が答えるよりも前に、ミーリャが慌てた様子で、
「私は納得しているよ。」
と答えた。
「斜影こそ、どうなの。」
ミーリャが聞いた。
「俺は―。」
むしろ、斜影の方が納得していないようにも思えた。
いきなり婚礼ということになれば誰でもこうなるだろう。
だが、納得していない理由は別にもあった。これは斜影個人の理由である。
「少し納得できない点があるのは事実です。」
と言う。
「そうでしょうね。いきなり婚礼となれば―」
「いえ。何れは婚礼儀式を行うのが、この世界に落ちてきた私の定であることは分かっております。私が納得できない理由は別にあります。」
斜影はさっきまで訓練で使用していたスパス12をテーブルに置いた。
「コロセアムの件はどうなっておりますか?」
「まさか―。」
「ええ。私がミーリャと婚礼儀式を行い結婚するのは結構です。しかし、コロセアムの件が片付いていない状態で婚礼儀式を行うというのは如何なものかと思います。」
「コロセアムの件が片付かないと婚礼儀式は―。」
「私としては、やりたくないですね。」
と、斜影は言った。
「ここはひとつ、国民を信じてみましょうよ。」
斜影は安易に、国民が国を奪わないと考えていた。




