ヘッドショット
斜影は自分の世界にいた時の事を思い出していた。
サバゲー中の事である。
このとき、斜影は昔の友達だった人に再会していた。
彼もサバゲーマーになっていた。
彼は昔、斜影にとんでもないことをしたのだ。
斜影が小学校6年の時だった。
体育の授業で斜影が腹を下し、保健室に行った事が発端であった。その時、付き添ってくれたのが彼だったのだが、彼はその翌日、斜影を介抱したせいで骨折したと言い、斜影と斜影の両親に慰謝料を請求してきたのだ。
しかし、それは彼の戯言で本当は自分がその後、廊下で転んだのに、恥ずかしいから斜影に罪を擦り付けたのだ。
だが、それが発端となって何かケガをすれば斜影のせいにするのがクラスで流行り出した。
それが原因で斜影は、友達というものを信用しなくなり、人間不信に陥ってしまった。
その原因を作った彼が今、目の前に居る。
実弾が有れば実弾で撃ち殺してやりたいくらいだ。
だが、彼は身方チーム。敵側に付いていたのならゲームの度に撃ち殺せる(死人扱いに出来る)のだが、身方ではただのフレンドリーファイアである。もちろん、故意的にやってもいいかもしれないが、それでは身方から信用されない上、ゲームの雰囲気を壊しかねない。
それでも、どうにかしてこの男を死人扱いにして恨みを晴らしたい。
この日の斜影は珍しく、殺意に近い物を抱いていた。これはとても危険な状態で、場合によってはサバゲーを中止するべき心理状態である。
だが、斜影にとって都合のいいゲームが行われることになった。
スパイ戦である。
スパイ戦は基本、フラッグ戦又は殲滅戦だが、ゲーム開始前にあらかじめスパイ役を決めておき、一定時間が経つとスパイ役は自分のタイミングで敵に寝返って身方を殺し、敵が有利になるように行動を開始する。当然、誰がスパイかは身方には解らないが、斜影がスパイに選ばれれば恨みを晴らせる。
斜影は選ばれようと躍起になったが、こういうときに限って選ばれない。
仕方が無いので、斜影はそのままゲームに参加していた。
当時の斜影のメインウエポンは、VSR‐10でいわゆるスナイパーライフルだった。
だが斜影はこのとき、スパイに撃たれた。
そしてスパイ役は、例の彼で斜影をからかおうと「ヒット!」と叫んだ斜影をフルオートでオーバーキルしたのだ。
思わず斜影は、
「ヒットっつってんだろうが!」
と、怒鳴りつけてしまった。これはサバゲーでは御法度な行為だ。
これが、斜影に火を付けた。
当時の斜影はアサルトライフルを持っていなかったが、スナイパーライフルを使用していた斜影は、遠距離射撃に特化していた。
次のゲームで斜影は前に出ず、後方から敵を狙撃する。スナイパーである者の多くがそうするであろう。
だが斜影のターゲットは敵ではない。もう分かりきっている。
倍率4倍のスコープが捉えたのは、同じチームにいる例の彼の横顔だった。
思いっきりコッキングする。引き金を引く。0.2gのバイオBB弾が勢い良く例の彼目掛けて飛んでいく。
その時彼が一瞬、斜影の方をみた。
放たれたBB弾は、彼の顔面に命中した。
見事なヘッドショットだった。これほど気分のいいヘッドショットは後にも先にも無い。
だが、これでまた友達と呼べる人を失った。最も、斜影からすればもう友達とは思っていなかったため、何とも思わなかった。




