町の人
「町で炊き出しをするというのは、町の人はそのまま危険な町で暮らせと言うことではないのか?」
「危険な町と言うと?」
カトリーヌは溜め息をついた。
「コロセアムが戦争を仕掛け、町は攻撃の度に被害を受ける。町に人がいる状態で市街地戦になれば、大勢の市民が巻き込まれてしまうだろう。」
「―。」
「人道支援として、国会議事堂等の官庁街の地下避難施設を開放し、希望する者はそこで避難生活をする。当然、食事や風呂等も用意する。」
「希望しない者は?」
「私は、強制はしない。解かるな?」
「避難しない人は巻き込まれても仕方がないと言う事ですか?」
「ああ。」
斜影は、それは面倒がなくて良いとは思った。
斜影も、元の世界にいた時に警告を無視した挙句に危険な目に遭った上、無視した自分を棚に上げて文句を言う輩がウジャウジャいたのを見て(警告を無視したからこうなったのだ。自業自得だ。死ななかっただけ良かったと思え)と思った事が何度もあった。
だが、
「それに、民衆は同意するでしょうか?」
と聞いた。
やはり、斜影の世界での事が引っ掛かるのだ。
「同意しない者は、自分の考えがあってそうするのだろう。」
この時、斜影はカトリーヌに対して若干の不信感を抱いた。
(それってつまり、民衆の声は聞かない。自分の考えに従えない者は死ねということではないのか?)
斜影は考えながら執務室を出る。
「お父様はなんて?」
いきなりミーリャに言われる。
「解らん。「人道支援として、国会議事堂等の官庁街の地下避難施設を開放し、希望する者はそこで避難生活をする。当然、食事や風呂等も用意する。」とは言うが―。」
「そう。お父様は町から官庁街への避難を―。」
「と思う。俺もそう思った。だが「避難しない人は巻き込まれても仕方がない。自分の考えがあってそうするのだろう。」と言った。これはどういうことだろうか?こういう発言は、俺のいた世界では「自分の考えに従えない者は死ね」とも取られる。いや、そう思われても仕方が無い発言で、政治家失格とも取られてしまうよ。」
そこに、マリも来た。
「斜影。助けられない命は助けられない。全員を助けたい。それは自衛隊でも同じ。でもね、助けられない事もある。救難ヘリの燃料が無い。留まれば自分も危険。救助を拒む人を説得するのに時間を取られて逃げることもできなくなる。そりゃね、みんなを助けられればいいけれど、そうもいかない時もある。特にこういう場合は、市民にも生活がある。仕事がある。みんな避難してしまえば、仕事が出来ないという人もいる。カトリーヌ様が「自分の考えがあってそうするのだろう。」と言ったのはそういうことよ。」
それに、ミーリャも肯いた。
「斜影。貴方も人のことを信じなさい。疑いは要らぬ誤解を招く上、望まぬ争いにだって発展しかねないのよ。」
と、斜影に言う。
「人間不信なのは昔からでね。」
斜影は頭を掻いた。




