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異世界サバゲーマー  作者: Kanra
開戦の兆し
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漏斗雲

 雨雲が突然出現する事は多々ある。

 だが、滅多に現れない物の出現には皆困惑する。

 漏斗雲の出現も、その一つだ。

 漏斗雲は、斜影の世界では竜巻に伴って発生する細長い雲で、竜巻の渦の中心線に沿って積乱雲や積雲の雲底から地上に向かって伸びる物であるとされているが、この世界では地上の有らゆる物を天上世界へと吹き上げてしまう物で、引き換えに他の世界から人や物が堕ちてくると言われている。

 特に、女神フェニコスが他世界から人や物を召喚する際に発生すると言われている。

 ミーリャの記憶ではこれまでに2回、漏斗雲が現れ、そのうち1度は出現した翌日に斜影が異世界から堕ちてきた

 国会議事堂から、斜影も漏斗雲を見ていた。

「海上竜巻に伴う漏斗雲か。」

 と、斜影は言った。

 漏斗雲は太さを増している。斜影の目測で、徐々に漏斗雲は陸上へ向かってきているのが分かった。

「斜影殿。如何いたしましょうか?ジェーニ様は気球で漏斗雲に接近しようと言っております。」

 と、議員が言う。

「危険極まりない。止めろと伝えろ。それから、港湾周辺地域の住民を頑丈な建物に避難させろ。国会議事堂周囲も万一に備えて避難だ。」

「はい。」

「さて、この世界においては地上の有らゆる物を天上世界へと吹き上げてしまう物で、引き換えに他の世界から人や物が堕ちてくると言われる竜巻が現れたとなれば、また何かが堕ちてきくるかもしれん。ハーレムもしばらくお預けだな。」

 斜影は笑った。

(ヤバイ奴等が来ないことを祈るとしよう。)

 と、斜影は思い、自分も国会議事堂の地下壕へ避難しようとした。

 地下壕の入口では、ミーリャとマリが避難してきた住人を誘導していた。

 カトリーヌもすでに地下に避難しているらしい。

「ジェーニは?」

「まだ観測している!」

 と、マリが言った。

「どこだ?」

「第2物見櫓から!」

「分かった。連れてくる!」

 斜影はジェーニを連れてくるため、第2物見櫓に登る。ここは灯台のような建物で、国会議事堂周囲の警戒のための物だ。

 斜影は第2物見櫓の最上階への階段を一気に駆け登り、最上階で観測を続けるジェーニに、避難しろと言う。

「しかし、これは天上世界とこの世界を知るチャンス。観測の機会を逃すわけには行かない。」

「お前の命をかけてもか。」

「私はこの世界を知るためなら、命をも投げ出す。」

 斜影は思わずジェーニを殴り飛ばした。

「自惚れのつもりか!この世界を知っても、テメエが死んだら何にもならねえんだよ!」

 かなりの力で殴ったらしい。ジェーニは鼻血を出していた。

「それは、愛情表現のつもり?」

「とにかく、避難しろ!死んじまったら何にもならねえんだよ!」

 と、斜影が言った時には、漏斗雲は上陸していた。

 そして、速度を上げながら国会議事堂に迫ってきた。

 空からは、海水が降り、魚が落ちてきた。

「異世界の魚?」

「違う。あれに巻き上げられた魚と海水だ。」

 次の瞬間、雷が轟いた。

 明るい空が一気に暗くなっていく。

 第2物見櫓が揺れ始めた。

「逃げろ!」

 斜影がジェーニの腕を掴み、階段を駆け下りる。

 二人が第2物見櫓を出た瞬間、物見櫓は粉砕された。

 そして、漏斗雲はもう目の前にまで接近していた。

「クッソ!地下壕まで走れ!」

 その時には、周囲の暗さは更に増し、夜のようになっていた。

 地下壕に飛び込んだ時、漏斗雲が国会議事堂の脇を通過した。

 雨雲も同時に通過していったが、周囲は真暗のままだ。

 斜影が空を見上げた時、太陽が黒くなっていた。


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