軍港デート
「戦艦ファーストスターが4隻なのは、君達をイメージしたからだよ。」
「イメージ?」
斜影は首をかしげた。
「異世界から来た斜影とマリ。そして、私の娘のジェーニとミーリャが出会い、魔法の力と異世界の武器を駆使して突き進む。戦う為ではなく、互いを守るために。そして、救うために。」
「それとファーストスターと何の関係があるのですか?」
「君達の関係のように、4隻でこの国、この世界を守ってほしい。そういう思いで4隻作った。そして、4隻の名前だが、君達4人に決めてほしい。」
斜影はまたも迷宮に入ってしまった。
今度は国を守るシンボルとなる戦艦の着想になってしまった。
(冗談じゃないよ。)
斜影は頭を抱えて溜め息をつく。
「何を思い悩んでいるのか知らないけれど、世の中うまくいかないことだらけだよ。ただね、君がこの世界に現れてから、いろいろなことがありすぎて、正直目が回りそうだ。まあ、君は自覚しているかどうかは解らないけれどね。」
(知るかクソ野郎。)
思わず心の中で派手な暴言を吐く。
「ところで、今来たやつがファーストスター級戦艦の一番艦ってわけだが、斜影に名前を付けて貰いたい。」
また変な要求だ。
「なら話は簡単だ。あの船の名は、大和だ。」
斜影は即、決めてしまった。
「話が早いね。」
と、カトリーヌは笑った。
(ふざけやがってどいつもこいつも。)
斜影はまた溜め息をつく。
「溜め息ばっかりじゃ、幸せ逃げちゃうよ。」
と、ミーリャが斜影の唇に指を当てて言った。
(このクソ野郎。指噛みちぎんぞ。)
今に、斜影からは黒煙が勢い良く排出されそうになっていた。
(蒸気機関車じゃねえんだよ。解ったから少し落ち着け。)
と、斜影は言い聞かせる。
斜影は落ち着こうと模索し、ミーリャとデート状態で海辺(というか軍港の中)を歩く。
(こんな軍港でデートもクソもねえだろうがバカ死ね。)
斜影はポケットに手を突っ込もうとしてミーリャの手を握っていた。
「斜影って、元の世界に居たときも、好きな人とは軍の施設を巡ったの?」
当たり前の質問だ。
軍港でデートするカップルなんて居るものか。
「いや、悩みがある時に軍の施設に行くことがあったし、サバゲーもそういうときに行っていた。今日はただ、衝動的に―。」
精一杯の事を言ったが言い訳にすぎない。
いや、一度だけ、サバゲーに彼女を誘ったことがある。最も、その時に彼女の前でゾンビ行為をする浮気野郎をギタギタにして別れられたのだが。
(今、この場にエアガンってもんは、護身用のデザートイーグルを持ってるだけだし。最も、フェニコス様がくれた魔法能力でガスを複製できるかと思ったが、それは出来なかったから、どっちにしろデザートイーグルはいつか使い物にはならなくなるし。)
デートと関係無い事を考える斜影だ。
「デートの時くらい、それを置いたら?」
と、ミーリャは斜影の腰のデザートイーグルについて言う。
「油断大敵。いつ何があっても対処できるように。でないと、怖いんだよ。」
「私のナイトとしての行動?」
「みたいなものかな。」
さっきから繋いだままの手に手汗が滲み出てきそうだ。
(落ち着け。俺は今、ビビっているだけだ。落ち着け。)
斜影は深呼吸をするが、今度は鼓動も高鳴る。
「緊張しているの?」
と、ミーリャに言われるがその通りだった。
夕陽が海に沈む。
一番星が西の空に見える。
「そろそろ帰ろうか。」
と、ミーリャが言い、斜影とミーリャは国会議事堂を経由してカトリーヌ邸に戻った。




