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異世界サバゲーマー  作者: Kanra
北方艦隊と世界の穴
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世界の果ての双子

 国会議事堂から、斜影とマリはミーリャの自動車でカトリーヌ邸に戻る。

 マリの馬車は、革命軍のロベルトが借用している。

 斜影は排気ガスの匂いから、この自動車のエンジンはガソリンエンジンではなくディーゼルエンジンであると思っていたが、案の定、燃料は軽油だそうだ。

「カミリア政権時代、カトリーヌ邸の領地にある山に、カミリアは如何わしいユートピアを造ろうとした。しかし、山地を掘り返し、トンネルを掘ったところ、黒い油が噴出し計画は頓挫。そして、特有の匂いのするこの黒い油は放置され、地方都市を経て最終的には最大の都市であり国会議事堂のある首都エリスに通づるコガネ川に流れ込んだ。結果、農地は汚染され、飲水も確保出来ず、食糧危機に見舞われた上、油の臭いなどで体を壊す人も現れた。」

(足尾銅山鉱毒事件のようだ。だが、この黒い油ってつまり―。)

 斜影の考えた通りだった。

「この黒い油をなんとかしようとした所、ある科学者がアイリス合衆国でこの油を精油する技術を習得し、川に流れ込む黒い油の流れの途中に油のダムと精油施設を建設。これにより、油が川に流れ込むのを無くし、更には油を燃料とした新たな機関。ディーゼル機関が生まれ、この国の産業革命が始まった。」

 ミーリャの話はここから暗くなった。

「この科学者は、私の双子の姉。」

 と言うのだ。

「姉は魔法使いの才能を持つと共に、科学者であった。そして、この国に蒸気機関からディーゼル機関への転換という産業革命をもたらした。姉のジェーニが目指したものは、科学と魔法の協調による世界の発展。しかし、カミリアはそれを我が物とした上、姉を北方の極地に幽閉してしまった。姉の幽閉されている場所は解らない。ただ、たまに、姉の声が聞こえるの。(私を助けて。)って。姉の助けを求める声が、天使となって貴方の世界にまで届いたのなら、その声に導かれてこの世界に来たということも考えられる。」

 ミーリャの話を聞いて、斜影は、

(ということは、ミーリャの姉を助ければ、元の世界に帰れるかも―。)

 と思った。だが、マリがその考えを打ち砕く。

「帰ったところで、居場所はあるの?」

 と、マリが言った。

「そうだった。あの世界に帰っても、俺は周囲から「人殺し」って呼ばれ、居場所もない。」

「なら、私と一緒に、ミーリャ様とカトリーヌ家との契約を守りなさい。」

「だが、幽閉されているミーリャの姉を助けたいという思いは本気だ。」

 ミーリャは一瞬、明るい顔をした。だが、

「幽閉されている場所は分らない。北方の極地は世界の果て。冷たい海には氷塊が浮び、猛獣が泳ぎ、そして、世界の終わりと言われる大瀑布がある。世界に空いた穴。世界の有らゆる物を飲み込み、飲み込まれた先は地獄であるとされている。」

(なるほど。この世界の地球の北極点には、ブラックホールのような物があるってことか。この世界に宇宙空間と言う概念やブラックホールの存在が明らかになっているのかは知らねえが。)

 斜影は思った。

(言うのは簡単。しかし、ブラックホールのような物があると言うのであれば、ブラックホールに接近する事を想定しなければならない。だが、現実の宇宙においても、ブラックホールに接近した宇宙船は無い。まして、点の大きさでも目視したなら終わりだ。どうやって幽閉されている場所を探す?)

「斜影。甘いよ。」

 と、マリが言った。

「起こりうるシナリオの中で最も、最悪のシナリオを言ってもいい?ミーリャ様。聞きたくなければ耳をふさいでください。」

「いいえ。分かるわよマリ。ジェーニは世界の終わりと言われる大瀑布の穴の中に落とされたかもしれないってことね。」

 ミーリャが言うが、斜影はそれを否定した。

「もし、ミーリャに助けを求める声が聞こえないのなら、その可能性が高い。だが、聞こえるということは、穴の中に落ちてはいな―。」

 斜影は言いかけて気が付いた。

(って事は、それほど強力な重力を発生させるものではない。ブラックホールは光さえ脱出不可能と言われている。もし本当にブラックホールに匹敵する物があるのなら、例えテレパスも飲み込まれる。いやそれ以前に、冷たい海には氷塊が浮び、猛獣が泳ぎと言うが、そいつらも吸い込まれてしまうだろう。)

「話の途中で考え始めるの、止めてくれない?私は斜影の考えていることは分かるけど、ミーリャ様には解らないんだからね。」

 マリが言ったのを見て、ミーリャは笑った。

 マリはミーリャに、斜影の考えていた事を伝えた。

「なるほどね。」

 と、ミーリャは納得した。

(そして、上手くやれば穴を通って元の世界に帰れるかも―。)

「斜影!」

 斜影の考えを読んだマリが怒鳴った。

「帰ることなんて、出来ない。そして帰っても―。」

「マリ。斜影はこの世界の人じゃない。帰れる方法があるのなら、試させなさい。」

「しかし、ミーリャ様と斜影の契約は―。」

「契約は私のボディーガードをしながら、帰る方法を探すことじゃなかった?そして、婚約者というのも、異世界の人間には通用するか解らないわ。」

 ミーリャが斜影を擁護した。

 だが、

(そうだ。帰っても居場所は無い。)

 と、斜影は思った。


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