目覚め
鞍馬斜影は目覚めた。
体の痛みを感じることなく。
見ると、自転車も牽引していたリアカーもそのままだった。
(死んではないのか。崖の下か。)
と思い、周囲を見回すが、状況は一変していた。
落ちた場所は湿地だったはずだが、そこは草原だった。それも、小高い丘の上で、近くに中世ヨーロッパのような街並みが見えている。時刻も、朝だったはずが、夕陽が射す夕暮れになっている。
(じゃあ、ここはあの世か。やっぱり死んだんだ。)
と、斜影は思った途端、地面の下から甲冑を着た二人組の男が飛び出してきた。
「うわっ!畜生、地獄かよ!」
斜影は叫び、リュックから落ちていた拳銃を二人組に向けながら、自転車にまたがる。
必死になって、丘を降りていくと、前方に4人で1人の少女に襲い掛かる甲冑姿の男に遭遇した。
(ここはどっちに着くよ!)
斜影に迷いはなかった。
「やむを得ん。発砲開始!」
偶然にも、ガスと弾が入ったままになっていた、デザートイーグルを発砲する。
一発食らっただけで、甲冑を貫き、男は被弾したところを抑えている。
(そんな。BB弾に殺傷力はないのに!)
構わず発砲し、男達を蹴散らす。
「大丈夫か。」
少女は何が起こったか分からず、唖然としている。
「ちっ!弾がねえ。中途半端にマガジン一本だけ忘れてんじゃねえよ。」
相手はどうやら6人のようだった。
全員を蹴散らした後、少女からこの世界についての情報を聞こうと考えた斜影は、それに見合った奮闘を見せようとする。しかし、
(バカ。敵からの情報も得たほうが情報量増える。)
と思い、目の前でうずくまっている敵に銃口を突きつける。
「さて、このバカ。どこのどいつに頼まれてこの娘を襲った?えっ?」
敵は何も言わなかった。
「あの、貴方は―」
少女が言う。
「鞍馬斜影―。」
と名乗った。少女は、さっきの幻覚の女だった。それに驚いた斜影だが、後頭部を殴られ気絶してしまった。