第一話/誘い
二年前、俺は彼女にフラれた。今日みたいに外が賑わっている。
今日は夏祭り。彼女にフラれた時と同じだ。今でもあの時の事は、覚えている。
フラれた後、俺は普通に家に帰ってきていた。涙は出ない。
不思議だった。辛いはずなのに、涙は出てこない。確かに、落ち込んではいるが・・・。
涙が出る程落ち込んではいなかった。他に好きな人が出来てしまったらしょうがない。
そういう風に思う事にした。あれからもう二年が経ってしまった。
「時が経つのは早いな」
そう呟き、寝返りを打った。あの時と同じように・・・。
俺は今地元の大学に通う、大学二年生。バイトをしながら一人暮らしをしている。
意外と今の人生を満喫している。
「夏祭りか・・・」
俺がそう呟いた時、見計らったように携帯が、鳴り響いた。 電話に出るのが面倒くさかった俺は、無視した。たが、全く鳴り止まない。
仕方がない。瞬は諦めて、携帯に出た。するといきなり、威勢の良い声が聞こえてきた。
電話をしてきた人物が誰か、直ぐに検討がついた。
「何のようだ?了摩」
俺はぶっきらぼうにそう言った。
「何のようだは無いだろ?折角電話してやったのによ」
コイツが電話を掛けてくるのは大概、合コンの誘いだ。大方、人数が揃わないんだろう。
俺の予想は見事的中した。
全く・・・。だが、断ったとしてもコイツは諦めが悪い。相当しつこく誘うだろう。
「分かったよ。で、俺は何処に行けばいいんだよ?」
俺は諦めて素直に行く事にした。了摩は当然驚いたようだ。短い沈黙が流れた。
直ぐに了摩の声が聞こえてきた。さっきよりテンションは、高くなっている。
電話で集合場所を聞き、俺は出掛ける準備を始めた。特に、準備する必要は無いのだが・・・
取り敢えず、服を着替え皆が居る集合場所に向かった。






