プロローグ
七月十五日、今日は夏祭りで外は賑わっていた。そんな日、俺はベットに横になっていた。
「やる事がない」
瞬はそれだけ呟くと寝返りを打って、目を瞑る。不意に携帯の着信が鳴り響いた。瞬はその音に驚いたのか、跳び跳ねる。
「いけね、寝ちまったみたいだ」
瞬は目を擦りながら、携帯のディスプレイを見た。
『遙』とディスプレイにはでている。どうやら電話の主は、遙のようだ。 取り敢えず俺は、電話に出る事にした。
「もしもし?」
『もしもし、遙だけど今大丈夫?』
電話の向こうから遥の声が聞こえた。どことなく元気は感じられない。何かあったのだろうか?
「あぁ、大丈夫だけど・・・」
「それじゃ、駅前の公園に来て。話したい事があるの」
彼女はそれだけ言うと、電話を切ってしまった。一体どうしたというのだろう?
考えていても始まらない。俺は直ぐに、彼女が指定した公園に向かった。
俺は蒸し暑い夜の道を、走っていた。汗だくになりながら。 駅前の公園に着くと彼女を探した。キョロキョロと周りを見回しながら、公園の中に入っていった。
すると、公園の奥にある桜の木の前に彼女が居た。俺は小走りで彼女に近づいた。
俺が呼吸を整えていると、彼女が口を開いた。
「急にごめんね」
彼女は申し訳なさそうに言った。
「別にいいよ。俺も暇だったし」
俺はそれだけ言った。そして、長い沈黙が訪れた。俺が公園に来てから一体何分が経っただろうか?
そんな事を思っていた時、彼女が沈黙を破って喋りだした。
「ごめんなさい」
いきなり謝られた俺はどうしたらいいか分からず、キョトンとしてしまった。
「どうしたんだよ?急に」
彼女は言おうかどうか迷っている様子だった。
「電話で話したい事があるって言ってたけど・・・?何かな?」
できる限り優しい顔で聞いてみた。また沈黙が訪れたが、今度は直ぐに喋りだした。
「実は・・・私」そこで彼女は一度言葉を切った。
深呼吸した後にまた、喋りだした。
「好きな人が出来たの」
俺にとってその言葉は想定外のものだった。
「今、何て言った?」
何となくもう一度聞いてみた。
「だから・・・好きな人が出来たの。もう貴方とは付き合えない」
彼女はそれだけ言うと、公園を抜け出し夜の道を、走って行った。
俺はただ、そんな彼女の背中を眺めているだけだった。