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モブなので、関わらないで下さい  作者: 雨月 涙
序章
1/7

前世の最期

「合、格……」


日本の中心である東京。まだマフラーを手放せない時期、私は友人と掲示板に張り出された合格発表を見ていた。


「やった……。合格……合格したよ、私!」

「おめでとう!私も合格だよ!」


人の邪魔にならないところに行き、友人と抱きしめ合って喜ぶ。

運動部だった彼女との身長差をコンプレックスに感じていたが、今は全く気にならなかった。


「これで今日から男の娘攻略に集中出来る!!」


拳を握る私に彼女は苦笑する。大学合格のご褒美として宣言したから、今まで乙女ゲームに手をつけなかったのだ。


「相変わらず律儀よねー。見掛けに反して」

「人のこと言えないでしょ、元隠れオタク」

毒突けば、「別に隠してたわけじゃないですー」と唇を尖らす。


ぶーぶーと歩きながら以前の文句を言う彼女は、学校で優等生の彼女とは別人にしか見えない。


「それより、男の娘の攻略法教えようか?」

「間に合ってます!乙女ゲーは自分でクリアするから良いの」

「えー。スチルの方が大事よ」


確かにスチルも大事だけど、バッドエンドとかヤンデレルートとかのはトラウマものだし。


私の考えていることに気付いているのかいないのか、友人がニヤリと口角を上げた。

「そうそう。男の娘キャラだけど、ヤンデレルートあるわよ」

結構刺激強いからね、と心配のしの字もない口調で、私の頭を撫でる。


私は恨みを込めて、ギロリと彼女を見た。


「あと、隠しキャラがいて……」

「あーあー。聞こえない、聞こえないーっと」

これ以上ネタバレされて堪るか、と耳を塞ぐ。


すると、いつのまにか膨らんでいた頬を彼女に突かれた。

「はいはい、ごめんって。拗ねないでよ」

「むぅー。自分が全ルート制覇したからって、ネタバレしないでよね」

顔を上げれば、ドヤ顔した彼女と目が合う。……殴っていいかな。


「ま、頑張ってね。あのキャラのスチルは綺麗だし。私は研修生のが好きだけど」

「それだけは本当理解出来ない。女たらし断固拒否。生理的に受け付けない」


「……本当アンタ、ギャップが凄いよね」

なぜか呆れられた目で見られた。解せぬ。


「見掛けに反してとかギャップとか、いったい私のこと、どう見てんのさ」


彼女に視線を向ける。と、迫ってきているトラックに気づいた。赤信号だというのに、止まる気配がない。


「ちょっ、何!?」


友人を押し退け、反動で横断歩道に出る。……ここで身長差があだになるなんて。


目の前が真っ赤に染まり、激痛が走る。だんだんと遠ざかる意識の中、「この馬鹿!!」と叫ぶ彼女が見えた。



それは私がまだ前世にいた時の話。

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