3.旅立ち
転生したあの日からざっと3年が経過した。
えっ?それまでの間は如何したかって?まあ、掻い摘んで話すと、魔物との戦闘、じいさんと戦闘、飯、寝るを繰り返す日々だったわ。ときたま、じいさんが街まで魔物の素材を売りに行って、森じゃあ手に入らないものとかを買ってくる。剣とかも何回か買いなおしている。ただ、未だに刀は見ないそうで、相棒に相応しい物は手に入っていない。
まあ、今日でようやく俺も13歳になった。この世界において、13歳とは成人みたいなものだ。というのも、冒険者ギルドを筆頭に大抵のギルドというのは13歳から本契約を結べるというのが大きい。それ以外にも、学校なども13歳以降が一般学年となるらしい。くわしくは知らないが。
俺も、今日からじいさんの家から出て本格的に独り立ちをする予定なのだ。相変わらずじいさんとの決闘は引き分けぐらいまでしか持っていけず、勝利は飾れていない。なにせ、じいさんもあれから修行を一緒に始めてあの時以上に強さになった。正直あの年でまだ強くなるとか俺以上の化け物だと思う。
「どうじゃ、準備は出来たかの?」
「ん?あぁ、じいさんか。まあ、だいたい準備は出来たぞ。いっても改めて用意するものも特に無いけどな」
そういって俺は、部屋の片隅においてあった荷物に視線を向ける。荷物といっても、この世界では収納袋が存在しているため袋1つで大抵のものが収まってしまうので、用意されているのは収納袋1つしかない。収納袋に入っているのは当面の生活資金と予備の剣くらいだから、元から荷物はないのだが。
ちなみに、この収納袋はこの3年間で俺が倒した魔物の代金でじいさんが街から購入してきたものだ。
「それにしても、おぬし、本当にこの3年間森から出んかったの。わしも、年に数回しか出とらんとはいえ、おぬしは出なさ過ぎだろうに…」
「まあ、修行が楽しかったってのが強いな。じいさんとの模擬戦もそうだが、魔物との実戦が滅茶苦茶楽しかったな。向こうの世界じゃ真剣で殺し合うなんてのは出来なかったし」
「なんというか、おぬしもソウェイル神に負けず劣らずの戦闘狂じゃの」
そう、じいさんが言う通り俺はこの3年間を完全にこの森で過ごしていた。この森は、冒険者ギルドでBランク指定されているらしく出現する魔物のランクもそれに見合ったものだ。
ちなみに、魔物のランクとはFランクからSSランクまで存在しており、Fランクはスライムやティアラビットなどといった子供でも狩れる魔物が中心でSSランクなどはドラゴンなどの最強種などが一般的に知られている。
ちなみに、この寄らずの森では主にBランクの魔物などが一般的なのだが、中にはAランクのものもいる。そのため、冒険者でもあまり立ち寄らないし、来てもこの家がある奥へはこない。この森は奥に進むほど強い魔物が生息するようになるからだ。
じいさんもそれを承知で奥地で生活していることから、じいさん自身かなりの戦闘狂だと思う。
そんな森で生活していた俺は、じいさんとの模擬戦以外はだいたい魔物狩りをやっていた感じである。おかげで、収納袋の中には結構な金額が入っている。
「それでシド、これからどうするんじゃ?」
「まずは、近くの街で冒険者ギルドで登録だろうな。そこで簡単な依頼をやってみて、それから王都でも目指してみるかね」
「ふむ。近い街というと、グルドの街かの。森を出て西にだいたい2日くらいの距離じゃの」
「じいさんがいつも行ってる街だったっけ?なんか注意することってあるか?」
「注意というか、街に入るにはだいたい身分証がいるの。おぬしの場合、身分証を持っておらんから検問を受けるのと通行料を取られるの」
「検問ってどんなものなんだ?」
「ステータスの称号を確認されるんじゃよ。まあ、確認といっても魔導具を使って賞罰関係の称号が付いているか調べるだけじゃし、ステータスを直接見せるわけでは無いがの」
「まあ、ステータスを直接見せる必要が無いなら大丈夫だな。通行料っていくらだ?」
「銅貨3枚じゃったかの?まあ、後ほど身分証を見せれば返金されるし沿う心配線でもいいじゃろ」
ここで補足しておくと、この世界では通貨は、銅貨、銀貨、金貨、王金貨、白金貨の5種類に分かれている。銅貨10枚で銀貨1枚、銀貨10枚で金貨1枚、という感じになっている。つまりは、金貨1枚で銅貨100枚ぶんになるということだ。
「金の心配はしなくて済みそうだな。それで、身分証はどうやったら手に入るんだ?」
「シドは冒険者になるのじゃろ?だったら冒険者ギルドに登録した際に貰うギルドカードが身分証になるのう」
「あぁ、ギルドカードが身分証の代わりになるのか。じゃあ、心配なさそうだな。……よし、じゃあそろそろ行くわ」
「うむ。まあ、達者での。シドには無駄な気遣いじゃろうがの」
じいさんと挨拶を交わした俺は、部屋の隅においてある収納袋と現相棒である10代目くらいになるであろう鉄剣を持って家を出る。じいさんは、玄関口でこちらをみている。どうやら見送ってくれるらしい。
「じゃあな、じいさん。次ぎあうときこそ決着をつけてやるからな」
「……ふむ。そういうお前こそ、どこかそこらへんでのたれ死ぬことのないようにな。まあ、そう心配はしとらんがの」
そう最後に互いに言い合って、俺は森に入っていった。