■第29話 2月がやってくる
年が明け、気が付けばもう1月が終わろうとしていた。
冬の窓は、四角い枠の隅が結露で薄く白く凍っている。
紅茶のカップから立ち込める湯気と窓外の真っ白い景色に、室内外の温度差が
表れている。
どことなくソワソワした感じで、mossoに問い掛けるミノリ。
【グローブ】:ねぇ・・・ 1月が終わるね。
【mosso】:そうだね。
電波向こうで二の句を継ぐのを待つハヤト。
【mosso】:どした?
【グローブ】:2月っていうとさ・・・ ほら。
ハヤトが少しだけ嬉しそうな顔を画面に向ける。
口許に手をやり、笑っていることが見えないように隠してみる。
勿論、相手には見えてなどいないのに。
【mosso】:ん??
分かっているのに、気付かないフリをした。
【グローブ】:わたし、去年もちゃんと手作りしたのに、
渡せなかったんだ・・・
チョコ。 2月といったら、バレンタインでしょー!
肩をすくめてハヤトが頬を緩める。
ぼんやり、去年の2月14日を思い返してみた。
(てゆうか、去年もくれようとしてたのか・・・。)
照れくさいのと嬉しいので、頬の緩みがとめどない。
【mosso】:今年はどうすんの?w
暫く、ミノリからの返事はなかった。
悩んでいるという事らしい。
【グローブ】:だって、ほら。 最強カノジョがいるしさ・・・
【mosso】:大丈夫だって!
ハルカとは今すぐにでも別れようと思っているハヤト。
きちんと整理をして、この ”グローブ ”との会話もフェードアウトして、
ミノリと向き合おうと、そう決めていた。
【mosso】:手作りするの?w
なんとか、バレンタインのチョコを渡す方向へ導きたい。
ミノリが頬を染めながら手作りチョコを差し出してくれるシーンが
脳裏に浮かぶ。
【グローブ】:でもさ・・・
”手作り ”って抵抗あるって話、
どっかで聞いたことあるんだよねー
【mosso】:そんなことない!! 絶対、嬉しいはず!!
なんだか今日のmossoは積極的だ。
小首を傾げながら、ミノリは会話を続けた。
【グローブ】:作るは、作るけどさ・・・
いつ、どうやって、どこで渡そう・・・
自信なさげなのが顔を見なくなって手に取るように分かる。
ハヤトが笑いながら返した。
【mosso】:最強のバレンタイン大作戦を考えよう!w