■第19話 実行委員
『では、このクラスの実行委員はこの4名に決まりました。
協力しあって、頑張るように。』
朝のホームルーム。
担任の言葉に、顔をしかめたのは4人中、2人。
『げ。サ イ アク・・・』 アイザワ タケル。ハヤトの小学校からの友達。
そして、
『めんどくさー・・・』 ヨシムラ ナナ。ミノリの友達だ。
あとの、2人はというと・・・
嬉しそうな困ったような顔をして、一人は窓の外に赤い顔を向け。
もう一人は、その右隣で背中を丸めて俯き表情が見えない。
ミノリとハヤトは、今年の学校祭の2-A実行委員になっていた。
2-Aの実行委員には、学校祭の広報関連の仕事が割り振りされていた。
それは、学校祭新聞やパンフレット、チラシ配り等の取り締まりや制作で。
毎日この4人で放課後教室に残り、生徒会や担当教師と相談し合いながら
黙々と作業を進めていた。
『あー・・・ もう疲れた。 なんか飲みてぇ~』
タケルがイスの背もたれに背中をのけ反って首も反らせ、天井に向かい嘆いた。
机を4つ向かい合わせにくっ付けたその上には、大きな模造紙が広げられ
何本ものカラフルな太字マジックペンが転がっている。
タケルの指先には誤って付けてしまったピンク色や青色のマジック跡。
『じゃーんけんっ・・・』 ナナがその言葉に、じゃんけんの掛け声を呟く。
ナナ以外の3人が、ちょっと慌てて『ぽん』の声と同時に手を出した。
『はい、おふたりさん。 いってらっしゃ~い!』
タケルとナナが、ニヤリほくそ笑んだ。
仲良く勝負に負けたミノリとハヤトが、パーの手を出したまま
互いの顔を見合わす。
そしてしずしずと、一番近い自動販売機まで4人分のジュースを
買いに教室を後にした。
『ねぇ、わざとじゃないの・・・?』
チラっと横目でタケルを見た、ナナ。
じゃんけん勝者が残った教室は、夕陽がまっすぐ差して少し眩しい。
『あれー。バレてた~?』 ニヒヒ。と笑い、タケルがダルそうに伸びをする。
『ゴトウ君は、サエキさんてゆう最強のカノジョがいるじゃない・・・
下手にけしかけたりして、傷付くのはミノリだよ?』
そうタケルに言う割りには、ナナだって ”じゃんけん ”させたのだが。
タケルが伸びの体勢から、ガバっと机に突っ伏す。
『だってさー・・・
あんな、誰が見たって分かるような、真っ赤な顔してさー・・・
ハヤトんこと目で追ってさー・・・
なんか、なんてゆーか。 協力したくなっちゃわ~ん?
・・・それに。』
タケルが続ける。
『 ”あんなん ”、愛想尽かし待ちに決まってんじゃん。』
”あんなん ”の所で、目元に手の平を寄せ、バサバサとまつ毛の真似をした。
『それもそれで・・・ サエキさん可哀相じゃない?』
ナナがその真似に吹き出す。
『ハヤトが、あんなん好きな訳ないんだってば。』
それは、静かな声色だった。
『アイツの鉄壁のセキュリティシステム、こじ開けられんの
あんなんな訳ないんだって・・・』
そう呟くタケルの目は、どこか物悲しく遠くを見ていた。