■第15話 本音
【グローブ】:今日、鼻血が出たの!!
その夜の、ミノリ。
いくら温度が伝わらない文字だと言っても、コレはさすがに首を傾げるハヤト。
(・・・? コレ、しょげてんの? ハシャいでんの??)
【mosso】:???
【グローブ】:体育の時間に、ボールが顔面に当たって鼻血が出て。
勿論、それは超ダサいし最悪だし、最低なんだけど・・・
【mosso】:けど?
【グローブ】:ゴトウ君が、『大丈夫?』って声かけてくれた!!
(・・・・・・・・・・。)
言葉を失う、ハヤト。
せわしなく瞬きを繰り返す。
【グローブ】:はじめてだよ、はじめて!『大丈夫?』って・・・
同じクラスになってはじめて話し掛けてもらった!
なんか、わたし、思わず泣いちゃってw
恥ずかしいの3割、嬉しいの8割って感じ!!
【mosso】:11割になっちゃってるけどね?w
PC前で、声を出して笑ったハヤト。
安心していた。
その顔は、心からの安堵の表情だった。
やわらかく目を細めて、電波の向こうで嬉しそうに文字を紡ぐミノリを
想像する。
実は、後悔しかけていた。
心配で保健室に駆け付けたものの、それはミノリの気持ちも考えない、
ただの自己満足な行動だったかもと、今夜このPCに向き合うのも少し
躊躇ったほどだった。
【mosso】:別にイジワルじゃないんじゃない?w
以前、ミノリから言われた一言を実は少し気にしていたハヤト。
表立って感情は出さないようにしていたはずなのに、いつ誰に意地悪な
態度をとったのだろうかと、考えあぐねていたのだった。
すると、画面に文字が現れた。
【グローブ】:えーと、イジワルってのは。
底意地が悪いって意味じゃなくてね。
出さなきゃいけないトコで感情を出さない、っていうか。
表してほしいトコで本音を隠す、っていうか・・・
ほんとはクールなんかじゃないと思うんだよね~
ハヤトが、画面を見つめたまま、キーボードに乗せた指の動きの一切を止めた。
【グローブ】:だから、今日言ってくれた『大丈夫?』は、
本来のゴトウ君だと、わたしは思ってんのw
なんだか、ノドが痞えるような苦しさを憶えた。
ミノリの、その言葉。
なんだか、
急に、
心臓が、苦しい・・・
【mosso】:ウチさ。
親がちょっとモメてて、多分、離婚するんだよね・・・
ハヤトが、ゆっくり考えながら、一文字ずつ言葉を紡いだ。