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■第14話 保健室



 

 

保健室の重い引き戸を開けると、年配の女性養護教諭がミノリの鼻に

綿を詰めていた。

 

 

 

 『どうしたの? 突き指??』

 

 

 

入口に顔を向け訊いたその教諭の声に、ミノリも続いて顔を向ける。

 

 

 

  すると。 その目に、ハヤトの姿。

 

 

 

目玉が落っこちそうなくらい見開き、慌ててまだ血の赤さが残る鼻の辺りを

両手で隠すと、みるみる顔を真っ赤にさせて俯いた。


『そんなに下向いちゃダメよ』 注意されるも、ミノリは中々顔を上げられ

ずにいる。

 

 

ハヤトは養護教諭に促され、咄嗟に、突き指をしたと言い張り右手を伸ばした。

『どこ? どこが痛いの??』 その言葉に、慌てて右手人差し指を出す。

別に腫れてもいないけど。と言われつつ、湿布と包帯で処置してもらう。

 

 

包帯を巻かれるハヤトの隣に、ミノリが丸椅子に座りいまだ俯いている。


ハヤトが横目でチラっと見ると、首まで赤くなって・・・

なんだか気の毒にすらなってくる。

 

 

 

 『ダイジョーブなの・・・?』

 

 

 

ハヤトが思わず、小さくポツリ。

ミノリの方は見ず、教諭に巻かれている右手人差し指の包帯に目を遣ったまま。


すると、ミノリが一瞬固まり、コクリと首を縦に振って小さく頷いた。

その頬は更に真っ赤になってゆく。目には微かに涙が滲んでいた。

 

 

 

 

  (ダイジョーブかよ、ほんとに・・・)

 

 

 

 

 

 

ミノリは泣きそうになるのを必死に堪えていた。

 

 

 

  ツイてない


  ツイてない


  ツイてない・・・

 

 

 

こんな無様な姿を、一番見られたくないハヤトに、しかもこんな至近距離で

見られてしまうなんて。もう死んでしまいたい。消え去りたい。

止まりかかった鼻血も、また大サービスで出血するのではないかと思うほど。

 

 

 

 『ああ! だから下向いちゃダメだってば。』

 

 

 

養護教諭の声にミノリが目線だけ上げると、綿を染み出し再び鼻血が

溢れていた。

ぴったり揃えて座るジャージの膝に、真っ赤な雫が3滴。


ミノリが悲しそうに慌てて両手で強く鼻を押さえる。

遂に目から堪え切れなくなった涙がおちた。

 

 

 

 『泣かなくていいから・・・ 大丈夫よ、止まるから!』

 

 

 

教諭が綿を換えようと手を伸ばすも、ミノリは血が付いた両手で顔を覆って

小さく泣きだしてしまった。

 

 

 

  ツイてない


  ツイてない


  ツイて・・・ない・・・・・?

 

 

 

 

 

 

 

  (あー・・・ なんか、悪いコトした、かも・・・。)

 

 

ハヤトは身の置き場がない感じがして、慌てて引き戸を開けて保健室を

出て行った。

その顔は、なんだか悲しげにしかめて。

 

 

 

 『・・・心配だっただけ、なんだけどな・・・。』

 

 

 

静かな廊下を進み、背中を丸めひとりごちた。

 

 


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