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『それにしても、マリアンヌさんは道に迷いませんね』
剣士さんが言うが意味が分からない。リース商会で地図を見せて貰ったし、街歩きも何日もしている。迷う要素がどこにあるんだ。
「地図覚えたら迷いようがないじゃん」
リース商会の地図はヤバいくらいに正確だ。そういえば、地図が欲しくて子供のころに叔母にせびったな。その時、測量の話もしたかも。国家機密レベルになってるかもしんない。
『地図と実物を合わせるのが難しいのよ』
『あなたに任せると確実迷う』
『方向音痴な自覚はあるよ』
うーん。平面図から立体に変換して考えるのって難しいんだっけ。誰かにそう聞いたな。平面から立体的に捉えるのと明晰夢に関しては普通にできるもんだと思ってたから目からウロコだったな。時刻表が読めるのにも驚かれたっけ。あれ読めないと出張も大変じゃん。地図と時刻表はお出かけの友。
『マリアンヌさんとダンジョンに行ってみたい』
『ボスたちの許可出ないわよ』
『猫可愛がりしてるもんね』
「ダンジョンに行っても弱いから役に立たないよ」
『無自覚?』
『無自覚ですね』
「魔法使えないし、護身術レベルじゃムリ」
自分の実力は自覚してるよ。転生チートもない普通の町娘だからね。そもそも転生したらチートが貰えるって変だと思うぞ。まあ、召喚チートの勇者は居たみたいだ。頭と性格が残念だが。今日もまた食べ物のことを考えながら魔物を倒してるんだろな。
戻ってきたら、開発中の食品を食べ散らかしそうだ。まぁ、味見には使えるか。食べ方を工夫してくれそうだし。
だけど、二度と戻って来なくてもいいぞ。




