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大人しくなった勇者にハーブティーを勧めて話を聞くこと一時間。だいたいの経緯がわかった。
曰わく、社会人一年目の五月病の最中に召喚された。最初は肉三昧に狂喜乱舞していたが、単調な味に飽きた。魔王を倒せば帰れるかもと言われて、毎日食べたいものをリストアップしながら耐えていた。倒してみたが帰れなかった。日本食の夢を見るようになった。目が覚めると余計に食べたくなる。
勇者お前食べ物だけか?
『熱々のカレーライスとかむしょうに食べたくなることあるでしょ?』
すがるような顔の勇者がビミョー。
「辛いのダメ」
キッパリ!
『カツ丼』
「胃がもたれそう」
『梅干し』
「酸っぱいの苦手」
『たくあん』
「漬け物は嫌い」
ここで勇者の腹がギュルギュルと鳴った。
「なんか食べる?」
『ヤッター!日本食だぁ!』
二十歳過ぎの大人が素で万歳なんかするな。この時点で既に私の中の勇者像は残念な人になってた。