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結局、歓迎のイベントとして勇者vsカスレ騎士団副団長の模擬戦が行われることになった。とりまとめたのは第3騎士団の副団長だ。
同じ副団長でも第3騎士団の方が使えるな。やっぱり大きいとは言えども地方都市の騎士団よりは国王直轄の騎士団の方が上か。
いや、単にアイツがシスコン過ぎるだけかもしれない。
模擬戦の会場は公平を期すため第3騎士団の鍛練場を使うことになった。
私は興味ないんだけど、その次に兄妹対決を一応入れて貰ったので見学しなきゃいけなくなった。従姉や剣士、魔術師は喜んでるし、両騎士団も盛り上がってる。ただ、何となく騎士団同士の対決姿勢が気になるんだよね。勇者vsカスレ騎士団副団長ってより、第3騎士団vsカスレ騎士団みたいな。こういうのの常としての対抗意識があるんだろうけど、バカバカしい。庶民から見たら、職務に取り組んでくれたらどっちでもいいわけで。
ってか、お前ら魔物はどうした?それが仕事だろ!
これだから、お役所仕事は嫌いだよ。勇者歓迎の式典が終わらないと次に進めないんだろ。
それに魔王が倒されたから、まったりモードになってんだろ。仕事しろ。
とりあえず、食欲勇者vsバカシスコンの模擬戦だったな。
武器は二人とも剣を選択した。
模擬戦だから武器は刃先を潰してあるから打撲程度までか……脳筋な二人とも破壊力あるから骨折させるくらいなら楽々かもしれない。
『マリアンヌさんはどっちを応援するの?』
「どっちもイヤ」
『兄と恋人だと悩ましいのね』
魔術師さんそれ誤解。兄でも恋人でもない。あ、兄だったか一応。
「脳筋シスコンと食欲勇者だよ。応援する気になれない」
力無く首を横に振った。こういうヤツらは期待させちゃいけない。
そういえば、女子会でタメ口し過ぎて言葉使いが悪くなってる。まぁ、庶民だから元々そんなに丁寧な言葉を使う頻度も多くないし仕方ないか。
それより明日っから何して過ごすかが問題だ。この辺の魔物の討伐が終わるまで滞在なんだよね。勇者けしかけて早く終わりにさせなきゃ。そしてサッサと王都に帰って妹に会いたいな。
弟が欲しいお土産が美味しいものだっけ?しばらく市場でも覗いて回るかなぁ。弟が好きなのは肉とかタンパク質系なんだよね。カスレらしさを考えると魚介類なんだけど、日持ちするものって何があるだろうか。干物かな?
歓声が上がってふと鍛練場を見下ろしたら、勇者によって飛ばされたらしい剣が地面に刺さっており、赤毛の大男が膝を付いていた。勝敗が決したらしい。
全然見てなかったけど、興味もなかったしいいよね。
さてと、シスコンに引導を渡して来るかな。二度と王都に戻って来られないように。
 




