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馬車はゆっくりと進み、カスレの街の入口に着いた。ここは王都と違って城塞都市じゃないので、道のあるとこならどこからでも入れるけどね。頑張れば道の無いとこからも侵入でき……いや、なんでもない。


出迎えた2つの騎士団が見守る中で私たちも馬車を降りた。

第3騎士団カスレ支部の支部長の挨拶の次にカスレ騎士団の副団長の挨拶があった。背の高い赤毛のがっしりした…。

おい。挨拶の言葉は騎士団と勇者に宛ててるけど、視線が騎士団でも勇者でもなく私に向かってるぞ。


儀礼?が終わったと思ったら従姉が手を振りながら声をかけた。

『ルネ!久しぶり!相変わらず元気そうね』

『ロッティ。お前相変わらずうるさいわ!』

赤毛のカスレ騎士団副団長が幼なじみに気安く答えた。そして呼ばれるようにこちらに歩いて来た。視線は従姉じゃないのが丸分かりでイラッとする。


『………マリアンヌ!俺のマリアンヌ!』

感極まったように私の名を呼びだんだん早足になり、抱きつくように近づいた。が、直前でぐえっと腹を押さえて立ち止まった。

「接近禁止解いたかしら?」


小首を傾げて聞いた。

副団長の鳩尾に30cmほどの棒が食い込んでいた。まっすぐ出した棒を避けずに突っ込んでくるとは相変わらずちっとも変わってない。

迎えた騎士団の方から『あれが王都のマリちゃん』『マリアンヌ様』などざわめきが聞こえた。マリちゃんの呼び名は第3騎士団で勇者の影響だろう。様付けは……コイツだな。


『言いつけ通りちゃんと王都を出たし……あれから5年経ったし』

「接近禁止解いたかしら?」

質問を繰り返した。

『…………まだかも』

「解いてないよね」

『…すみません』

頭を下げると5m後退した。


「さっきからカスレ騎士団の方で『マリアンヌ様』と呼んでるのが聞こえるんだけど、どういうこと?」

『たかだか騎士の分際で俺のマリアンヌを気安く呼ぶなんて認められない』

「だ・れ・の?」

無表情で聞き返した。コイツには氷の笑顔すら見せたらマズい。しかも町娘の方が騎士より身分的には明らかに下だろう。


『僕の!』

駆け寄ってきた勇者が断言したので、肘鉄を喰らわした。


『マリちゃん。ヒドい!僕と言うものがありながら…』

『勇者様!俺のマリアンヌがどうかしましたか?』

『あんた僕のマリちゃんとどんな関係?』

『弟からの手紙だと俺の可愛いマリアンヌが最近勇者と名乗る男につきまとわれて困ってるらしいですな』

怪しい睨み合いが始まった。

断言するが、私は私のものであって他の誰のものでもない。

ましてコイツらには関係ない。


『ルネ。やり過ぎるともっと厳しくなるわよ』

従姉の言葉に副団長が固まった。

『王都を出るか、顔を合わせる度に大嫌いって言われるかで、カスレまで来ちゃったんじゃない。次は国から追い出されるかも…』

『……それは…ダメ…マリアンヌの居ない国じゃ生きていけない』

『マリちゃん。コイツもしかしてストーカー?』

「…近い」

『変態?』

「正解!」

『マリアンヌ。………ただ一人の兄にそれはいくらなんでも』

泣きそうな顔しても騙されない。異性の友達できる度に脅しまくってくれたおかげでみんな逃げ出したよ。

「ただ一人ならもっとマシなのが良かったわ!」

ストーカーに近いシスコンなんて要らんわ!二度と会いたくなかったのに、こんなところに連れて来やがって勇者の馬鹿野郎!

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