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今日も馬車の旅。従姉が思い出したように言った。

『そういえば、吟遊詩人が会いたがってたわよ』

この吟遊詩人と言うのは父方の伯父の隠語だ。大人になっても定職につかずふらふらと旅をしていた。

「えーっ、面倒」

昔、弟妹が小さかった頃(今も妹は小さいけど)、寝物語を聞かせてたら食いついて来て、会う度に新しい話を聞きたがる。そもそも、夜中に子供とはいえ異性の寝室に入ってくるとは危険人物だよな。

今は吟遊詩人と舞台作家がメインの仕事らしい。ちなみに芝居のスポンサーはリース商会だ。リース商会は母方なんだけどね。親戚中、仲がいいんだ。


従姉から詳細を聞いた勇者がどんな物語か聞きたがった。

「えーと。没落貴族の娘が魔法で舞踏会に紛れ込み、王子に見つかって逃亡したけど、後日物的証拠を突きつけられて捕まる話とか」

『……魔法……舞踏会……それは……もしかして……まさか……シンデレ…』


「たかだか面の皮一枚の問題に過ぎない美醜に囚われた王妃が実の娘を毒殺せんと企み、娘が味方につけた七人の従者と隣国の王子の返り討ちに合い、焼けた鉄板の上で死の舞踏(デスダンス)をやらされる話とか」

『……毒……七人……まさか……し、しらゆ…』

「そもそもコレって内政干渉に当たると思うんだよね」

うん、国際問題になるよ。


「他には…逆恨みした魔術師に城ごと冷凍睡眠にされた姫がいて、100年後に訪れた旅の王子に棘の結界を破られ不法侵入されて、寝てるなら大丈夫だろって無理やりキスされる話とか」

『うわっ、どれも合ってるんだか、間違ってるんだかの域を超えてて……………怖い』

「この話は妹に異性に寝顔を見せると危険って教えるのに使ったよ」

『……』

勇者の顔色が悪くなってるけど、馬車に酔ったんじゃん。この辺りで放り出しとけばいいよ。…違った、降ろしてあげたらいいかもな。


『マリアンヌが言うと身も蓋もない話なんだけど、さすがに吟遊詩人で、愛と感動の物語になるのよ』

『たぶん、元々はそうなんじゃないかと…たぶん…なんか自信無くなってきた…』

勇者元気無さそう。やっぱり、馬車から降ろしてやれば…もっと静かになって助かるなぁ。


『それなりに興行収益も出てるし、何より宣伝活動として使ってるのよ』

『…宣伝?』

『劇場内の飲食物はウチの取扱い品だし、衣装に使う布、小物類…ヒロインと同じものはコレ!って』

『…えげつなー』

『何言ってるのよ。慈善事業じゃないんだから。経営が安定しての興行なのよ』

従姉力説中。商売人は違うぜって、そう言えば私も芝居の効用についての検討会に入って色々意見を言ったような……気のせいだろってことで。


『さすがはマリちゃんの従姉。しっかり者って言うか…』

『あ、マリアンヌ。この旅の費用とりあえず興行収益のあなたの取り分で立替えて貰ってるから』

「要らないって言ったじゃん」

私が考えた話じゃないから受け取る方が問題だわ。

『あの吟遊詩人に払ってマリアンヌに払わないわけにはいかないわよ』


『ちなみに、ブランちゃんが聞いてたお話ってのは、愛と感動の物語の方?それとも…』

『当然、マリアンヌのお話よ』

なぜだか勇者が頭を抱えだしたけど、静かになったからいいや。このまま消えてくれたらもっといいんだけど。ってか、ウザいんだから、二度としゃべるな!

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